成果が見えにくい仕事の伝え方|転職で使う記録の残し方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

エンジニアの仕事には、障害を防いだ判断や、作業を進めやすくするために整えた土台のように、成果として数えにくいものが数多くあります。起きなかったことは、そのままでは誰の記録にも残りません。気づいた場面で自分から書き残しておくことが、後から周囲や次の職場に伝わる、いまのところ唯一の手がかりになります。
見えにくい仕事を後から周囲や次の職場に伝えられるかどうかは、成果の大きさではなく、気づいた場面でそのつど書き残しているかどうかで決まります。
Relasic(株式会社LASSIC運営)|リモートワーク対応の転職支援
この記事のポイント
- 防いだ障害や整えた土台は、件数や成果として数えにくくても、書き残すことはできます
- 起きなかったことは自動では記録に残らないため、気づいた場面で自分から書く必要があります
- 一般労働者の平均年齢は44.4歳です*1。数字は労働市場全体の前提として押さえたうえで、記録は書き方に絞ります
1. 見えにくい仕事は、書き残すと後から伝わります
見えにくい仕事は、防いだ障害や整えた土台のように、件数や成果として数えにくいものです。それでも、気づいた場面でそのつど書き残しておけば、後から伝わる形に変えられます。数字にならない対応も、書き方を変えれば記録として残せます。
「見えにくい仕事」という言葉は、成果として数えにくい対応をまとめて指します。障害を未然に防いだ判断や、作業を進めやすくするために整えた土台は、代表的な例です。
こうした対応は、起きた出来事ではなく起きなかった出来事であるため、通常の記録の仕組みには載りません。載らない以上、後から周囲や次の職場に伝わるかどうかは、自分がその場で書き残しているかどうかにかかってきます。
書き残す作業は、特別な手間を必要とするものではありません。気づいた場面で短く書いておくだけで、後から取り出せる記録になります。
職種や担当領域が変わっても、この考え方自体は変わりません。防いだことや整えたことがある限り、書き残す対象になります。次に、なぜ記録に残らないのかを見ていきます。
2. 起きなかったことは、そのままでは記録に残りません
障害を未然に防いだ判断や、無駄な作り直しを避けた設計は、起きなかった出来事として扱われます。起きた不具合であれば障害報告書に残り、進めた開発であれば進捗として報告に載りますが、起きなかったことはどちらの記録にも残りません。
記録に残らない理由は単純です。ログやチケットは、発生した事象を追うための仕組みであり、発生しなかった事象を追うようには作られていません。防いだ側の判断は、システムのどこにも痕跡を残さないまま進んでいきます。
同じことは、周囲の記憶にも起こります。日々の対応を近くで見ていた同僚がいたとしても、時間が経てば、防いだ障害の具体的な中身までは覚えていません。書き残すかどうかは、他者の記憶に頼らずに済むかどうかの差になります。
痕跡が残らない以上、書き残す役目は自分に回ってきます。後になってから思い出そうとしても、その場で何を懸念し、どう判断したかという細部は薄れていきます。気づいた瞬間に近い時点で書いておくことが、後から使える記録につながります。
書く内容は長い説明である必要はありません。何に気づき、どう対応し、どうなったかを短く残しておけば、後から見返したときに当時の判断を復元できます。次に、見えにくい仕事の種類ごとに残す形を分けて見ていきます。
3. 見えにくい仕事ごとに、残す形を分けておきます
見えにくい仕事はひとつの型に収まらないため、種類ごとに残す形を分けておくと、後で取り出しやすくなります。
分け方を決めておかないと、気づいた対応をどこにどう書けばよいか、そのつど迷うことになります。
4つの型に分け、それぞれどんな形で残し、どんな場面で使うかを並べます。
見えにくい仕事・残す形・後で使う場面
| 見えにくい仕事 | 残す形 | 後で使う場面 |
|---|---|---|
| 先に直した不具合 | 気づいた日付と直した内容を短く書きます | 職務経歴書で具体例として書く場面 |
| 作り直さずに済ませた判断 | 判断した理由と結果を一文で書きます | 面接で背景を説明する場面 |
| 引き継ぎ前に整えた手順書 | 書き足した箇所と理由を書きます | 仕組み作りの実績として書く場面 |
| 相談を受けて教えた内容 | 聞かれた内容と伝えた内容を書きます | 経験を振り返る面談で使う場面 |
4つの型に共通しているのは、いずれも数値化しにくく、放っておくと記憶だけに残って消えていく点です。
「先に直した不具合」は、表面化する前に気づいて手を入れた対応です。気づいた日付と直した内容を短く書いておくと、後から具体例として取り出せます。
「作り直さずに済ませた判断」は、設計や実装をやり直さずに済むよう先に選んだ判断です。判断した理由と結果を一文で書いておくと、面接などで背景を説明しやすくなります。
「引き継ぎ前に整えた手順書」は、次に担当する人のために書き足した部分です。書き足した箇所と理由を書いておくと、仕組み作りの実績として使えます。
「相談を受けて教えた内容」は、周囲から聞かれて答えた内容です。聞かれた内容と伝えた内容を書いておくと、経験を振り返る面談で使う材料になります。
4つの型をすべて使う必要はありません。自分の仕事にあてはまる型から書き始め、慣れてきたら残りの型も試すという進め方でも十分です。
4つの型はどれも、後から見返す前提で短く残すことが要になります。書く量を増やすよりも、書く頻度を保つほうが後で効いてきます。次に、労働市場全体の前提となる数字を確認します。
あわせて読みたい | 進捗報告は粒度で決まる|相手が判断できる形に
4. 転職市場の前提として、平均年齢と賃金の実態を確認します
転職を考える場面では、賃金や年齢という数字がまず目に入ります。
一般労働者の平均年齢は44.4歳です*1。女性の賃金は45〜49歳と55〜59歳で305.7千円とピークを迎えます*1。どちらも厚生労働省の同じ調査による集計であり、労働市場全体の前提として示されている数字です。
この数字は、年齢や性別が個人の能力や成果の大小を決めることを示すものではありません。あくまで、労働市場全体を集計した結果として、平均年齢と賃金のピークがこの水準にあるという事実です。
見えにくい仕事は、こうした市場全体の集計とは別の場所にあります。集計に表れるのは平均や割合であり、一人ひとりが防いだ障害や整えた土台の中身までは映し出しません。
防いだ障害や整えた土台といった見えにくい仕事は、平均年齢や賃金のような集計とは異なり、証明の代わりに記録そのものを積み重ねていく性質のものです。
数字が示す前提を踏まえたうえで、個々の判断や対応をどう残すかは、また別に考える必要があります。次に、残す作業を具体的な流れとして見ていきます。
5. 残す流れは、気づいた場面から書き始めます
4段階のうち、最初の「気づいたら書く」を欠かすと、後の3段階の材料がそろわなくなります。書く分量は一文で構いません。
「理由を添える」段階では、なぜその対応を選んだかを一文足します。理由まで書いておくと、後から読み返したときに当時の判断を追いやすくなります。
「月ごとにまとめる」段階では、書きためた短い記録を月単位で見直し、重複した内容や似た対応をまとめ直します。
「転職の書類に写す」段階では、まとめた内容のうち、応募先に合わせて使う部分を選んで書類に写します。すべてを書類に載せる必要はありません。
途中の段階を飛ばして書類だけを整えようとすると、具体的な裏付けが薄くなりがちです。4段階を順に踏んでおくと、書類に書いた内容を面接で聞かれたときにも、経緯を添えて答えやすくなります。
4段階を気づいた瞬間から書類までひと続きにしておくと、書く手間を都度小さく抑えながら、後で使える形を保てます。次に、書く際に揃える型を見ていきます。
あわせて読みたい | 障害報告書に何を残すか|後から辿れる形に
6. 書き方の型は、3つの見出し語で揃えます
何を書けばよいか迷うときは、状況・対応・結果の3つに絞ると書きやすくなります。項目を増やすよりも、この3つを埋めることを先に優先します。
書く際に揃える3つの見出し語
- 状況:何が起きていたかを一文で書きます
- 対応:自分が何をしたかを一文で書きます
- 結果:対応した後どうなったかを一文で書きます
3つの見出し語を使うと、書く内容の粒度がそろい、後から読み返したときにも状況を追いやすくなります。
状況は、起きていたことをそのまま書けば足ります。原因の分析や評価をあわせて書く必要はありません。
対応は、自分が実際に行ったことに絞ります。周囲の判断や指示は、対応とは別に書き分けておくと後で整理しやすくなります。
結果は、対応した直後に分かる範囲で構いません。後から状況が変わった場合は、その時点で追記すればよいといえます。
3つの見出し語は、見えにくい仕事に限らず、日々の対応を振り返るときにも使える型です。繰り返し使ううちに、書くのにかかる時間も短くなっていきます。
3つの見出し語で書きためた記録は、月ごとにまとめる段階でそのまま使えるため、書き方を変える手間が省けます。次によくある質問を見ていきます。
あわせて読みたい | 技術ブログの実績を転職で使う|置き場所を変える
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 見えにくい仕事を書き残すことは、評価にそのままつながりますか。
A. 書き残した内容がどう評価に反映されるかは、上長や人事の判断によります。書き残す目的は、まず自分自身が振り返れる記録を持っておくことにあり、評価の見通しを立てることではありません。
Q2. 何を書けばよいか迷うときはどうすればよいですか。
A. 状況・対応・結果の3つに絞って書くと、迷いを減らせます。細かく書こうとするよりも、まず3つを埋めることを優先します。
Q3. 忙しくて毎回書けない場合はどうすればよいですか。
A. 気づいた場面で一文だけでも残しておくと、後でまとめ直す際の手がかりになります。月ごとにまとめる段階で言葉を整えれば足ります。
Q4. 書きためた内容は、そのまま転職の書類に使えますか。
A. まとめた内容から使う部分を選び、書類の形式に合わせて書き直すことになります。書きためたものは、そのまま貼り付けるものではなく、選ぶ元になる材料として使います。
8. まとめ:見えにくい仕事は残し方が後から効いてきます
この記事の要点
- 見えにくい仕事は、件数や成果として数えにくくても、書き残すことはできます
- 起きなかったことは自動では記録に残らないため、気づいた場面で自分から書きます
- 残す形は、見えにくい仕事の種類によって使い分けます
- 一般労働者の平均年齢は44.4歳です*1。数字は労働市場全体の前提であり、個人の実績を示すものではありません
- 書きためた内容は、月ごとにまとめてから転職の書類に写します
見えにくい仕事は、防いだ障害や整えた土台のように、数えて示しにくいものです。気づいた場面でそのつど書き残しておけば、月ごとにまとめ、転職の書類に写すという形で後から使えます。残し方に迷ったときは、状況・対応・結果の3つに絞って書くことから始められます。書き残す作業そのものは小さくても、積み重ねていけば、後から振り返れる記録として手元に残ります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
転職ノウハウ その他の記事
もっと読む 〉-
納期の回答は誰に聞いてから出す?求人で見る段取り
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) エンジニアの仕事では、「納期はいつになりますか」と聞かれて日付で答える場面があります。答える前にどこまで情報を集めたかによって、その日付がどう扱われるかが変 […] -
見込みと確定を同じ画面に出す求人で必要になる印
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) エンジニアの求人を見ていると、年収や採用予定人数のように動きそうな数字と、内定通知書に書かれてもう変わらない数字が、同じ画面に並んで出てきます。見込みの数字 […] -
廃番の品がある求人で3つの終了日をどう決めるか
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) 求人票に「廃番」「生産終了」という言葉が並ぶ仕事があります。担当するのは、資産管理や保守管理のシステムに関わるエンジニアです。作られなくなった品は、ある日に […] -
点検の周期がずれた求人|次をいつにするかを決める
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) 点検の周期は最初に決めた数字がそのまま残ります。3か月ごと、6か月ごとという間隔は求人票にも書かれますが、その間隔が実際にずれたあと、次の予定をどう数え直す […]