たらい回しを減らす求人|最後に持つ人を先に決める
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

エンジニアの仕事に届く問い合わせが、部署をいくつも経由してから戻ってくることがあります。誰も間違ったことをしていないのに、質問は答えの出ないまま行き来を繰り返します。原因は担当者の能力ではなく、その問い合わせを最後にどこが受け取るかが、事前に決まっていないことにあります。転職先を選ぶときも、この決めごとがあるかどうかは、働きやすさを見分ける手がかりになります。
テレワークを導入している企業は47.3%です*1。出社していれば近くの席に聞けば済んだ質問も、拠点が分かれるほど、受け先を先に決めていない仕組みの弱さがそのまま表に出ます。
Relasic(株式会社LASSIC運営)|リモートワーク対応の転職支援
この記事のポイント
- 問い合わせが行き来を繰り返す原因は、担当者の姿勢ではなく、最後にどこが持つかを事前に決めていない仕組みにあります。
- テレワークを導入している企業は47.3%です*1。出社を前提にした『近くの人に聞く』という解決策は、拠点が分かれるほど機能しにくくなります。
- 一般労働者の賃金は55〜59歳で月396.2千円と全年齢のピークにあります*2。受け先を決める設計は、この年代までに積んだ実務経験と結び付きやすい仕事です。
1. たらい回しは、受け先の空白から生まれます。
たらい回しは、担当者の能力や姿勢の問題ではなく、問い合わせの受け先を事前に決めていないことから起こります。総務省の通信利用動向調査では、テレワークを導入している企業は47.3%でした*1。拠点が分かれる働き方が広がるほど、近くの人に聞けば解決したはずの問い合わせが、行き先の分からないまま部署を渡っていきます。
エンジニアの仕事には、仕様の不明点や、納品した機器の不具合報告など、どこに聞けばよいか一見して分からない問い合わせが混ざります。最初に受けた人が、自分の持ち場ではないと判断して次の部署に回すこと自体は、判断として間違っていません。問題は、その先で受け取る役割が決まっていないことです。
たらい回しが起きているとき、原因を1つの部署に求めても答えは出ません。仕様に詳しい部署は「実際に不具合を確認した部署に聞いてほしい」と考え、不具合を確認した部署は「仕様を決めた部署に確認してほしい」と考えます。それぞれの判断は筋が通っていて、悪意も手抜きもありません。抜けているのは、この種の問い合わせを最後に持つ人を、あらかじめ決めておく仕組みです。
たらい回しを止めるために必要なのは、原因になった部署を探すことではありません。次に同じ問い合わせが来たときに最後に持つ人を、先に決めておくことです。
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2. テレワークの広がりが、受け先の設計を重くします。
テレワークの広がりと、たらい回しが起きやすい仕組みの関係を確認します。
総務省の通信利用動向調査では、テレワークを導入している企業の割合は47.3%でした*1。令和4年から減少傾向にあるとはいえ、半数近くの企業が、出社を前提にしない働き方を組み込んでいます。
出社していれば、近くの席に聞くという方法で、行き先の分からない問い合わせも短時間で解決できることがあります。拠点が分かれると、この即席の解決策は使えなくなり、たらい回しの弱さがそのまま表面化します。
リモートワーク対応の求人を選ぶ側にとっても、この点は無関係ではありません。受け先を決める工程がないまま拠点だけを分けると、行き来を繰り返す問題のほうがむしろ目立つようになります。
3. 回り続ける理由は、誰の落ち度でもありません。
たらい回しという言葉は、対応が悪いという印象を持たれやすい言葉です。実際に起きているのは、担当者が問い合わせを避けているという話ではなく、受け先を決める工程がそもそも用意されていないという話です。
仕様に詳しい部署も、不具合を実際に確認した部署も、それぞれの持ち場では正しい判断をしています。自分の持ち場で答えられない問い合わせを、答えられそうな部署に回すことは、責任を放棄する行為ではありません。
問題が起こるのは、たらい回しが同じ経路を何度も通るときです。受け取った部署もまた、自分の持ち場ではないと判断すれば、次の部署に回します。この判断がどこまで正しくても、最後に持つ人が決まっていない限り、問い合わせは行き先を探し続けます。
この往復を止めるのは、個々の部署の対応を早くすることではありません。受け先が決まっていないという前提そのものを変えることです。あらかじめ、どの種類の問い合わせを最後にどこが持つかを決めておけば、途中の部署は自分の持ち場を超えた判断を求められなくなります。
転職を考えるエンジニアにとって、この視点は求人選びの手がかりになります。「この職場は、問い合わせの最後を持つ人が決まっているか」を確認することは、担当者個人の評判を調べることより、職場の設計そのものを見分けることに近づきます。
この視点は、面談で直接尋ねられる質問でもあります。「行き先の分からない問い合わせが来たとき、最後にどこが持ちますか」という聞き方をすれば、決めごとがあるかどうかが、答え方の具体性に表れます。
4. 決まっている場合といない場合を比べます。
受け先を先に決めている運用と、決めていない運用を、観点ごとに比べます。
【表1】受け先の決めごとと、問い合わせ対応の違い
| 観点 | 決めている場合 | 決めていない場合 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせが来たとき | 最初に受けた部署が、決められた受け先にすぐ渡します | 受けた部署が、答えられそうな部署を都度探します | ― |
| 答えが出るまでの経路 | 経路は1本に決まっています | 経路がそのつど変わり、同じ部署を再び通ることもあります | ― |
| 同じ問い合わせが来たとき | 前回と同じ経路で、同じ速さで進みます | 前回の経路が引き継がれず、また探すところから始まります | ― |
表のとおり、受け先を先に決めている運用では、最初に受けた部署がその場で判断に迷う必要がありません。決められた経路に渡すだけで、対応が動き出します。
受け先を決めていない運用では、最初に受けた部署が、答えられそうな部署を自分で探すところから始まります。この工程そのものが、対応が遅れる要因になります。
決めていない運用のまま拠点が増えたり、担当者が入れ替わったりすると、同じ問い合わせが以前とは違う経路を通ることになり、たらい回しがより起こりやすくなります。
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5. 想定外の問い合わせほど、差が表れます。
問い合わせの型と、受け先の決めごとの有無を、2つの軸で整理します。
型が決まっている問い合わせは、受け先を決めていなくても、過去の経緯から自然と行き先が定まっていくことがあります。
一方で、想定外の問い合わせは、過去の経緯を参照する先がありません。受け先を先に決めていない職場では、この種の問い合わせがたらい回しになりやすくなります。
受け先を先に決めておくという対策は、想定外の問い合わせにこそ効きます。型が決まっている問い合わせは、対策がなくても大きな影響を受けにくいためです。
6. 求人票で確認したい点を、4つ整理します。
問い合わせのたらい回しを防げる職場かどうかを、求人票や面談で確認するための観点を整理します。
受け先の決めごとを見分ける4つの確認点
- 最後に持つ人:行き先の分からない問い合わせを、最終的にどの役割が引き受けるかが決まっているかを確認します。
- 経路の記録:一度決まった受け先が、次回以降も同じ経路で使われる仕組みがあるかを確認します。
- 想定外への備え:型に当てはまらない問い合わせが来たときの対応が、決めごととして用意されているかを確認します。
- 担当が変わったとき:担当者の異動や退職があっても、受け先の決めごとが引き継がれるかを確認します。
4つの確認点のうち、最も見分けにくいのは想定外への備えです。定型の問い合わせへの対応は求人票にも書かれやすい一方、想定外の扱いは書かれない場合があります。
一般労働者の賃金は55〜59歳で月396.2千円と、全年齢のなかで最も高い水準にあります*2。受け先を決める設計や、想定外の問い合わせに道筋をつける役割は、この年代までに積んだ実務経験と結び付きやすい仕事のひとつです。
職務経歴書には、たらい回しになっていた問い合わせをどう整理し、受け先をどう決めたかを書くと、経験の中身が伝わりやすくなります。数字ではなく、何を根拠に受け先を決めたかを書くことが要点です。
4つの確認点は、面談でそのまま質問にできます。「行き先の分からない問い合わせが来たとき、最後にどこが持ちますか」という聞き方をすれば、決めごとの有無が、答えの具体性に表れます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. たらい回しが起きるのは、対応する部署の能力が低いからですか。
A. 能力の問題ではありません。それぞれの部署は自分の持ち場で正しい判断をしていても、問い合わせを最後に持つ人が決まっていなければ、行き来は止まりません。
Q2. リモートワークになると、この問題は増えますか。
A. 増えるとは言えませんが、目立ちやすくなります。出社していれば近くの人に聞くという即席の解決策が使えなくなり、受け先が決まっていない仕組みの弱さがそのまま表れます。
Q3. 受け先を決める役割は、入社してすぐに任されますか。
A. すぐに1人で任されることは少なく、既存の経路を引き継ぐところから始まります。想定外の問い合わせに道筋をつけた経験を積んだうえで、設計そのものを任される場合があります。
Q4. 求人票から、受け先が決まっている職場かどうかは分かりますか。
A. 分かる場合があります。「エスカレーション」「受け先」「対応フロー」という語が具体的に書かれているかどうかが、目安になります。書かれていない場合は、面談で直接確認する必要があります。
Q5. 面接では、この経験をどう伝えればよいですか。
A. 「行き先の分からない問い合わせが来たとき、最後にどこが持ちますか」と聞かれた前提で、自分がどの問い合わせの受け先を決め、どう引き継いだかを具体的に話すと伝わりやすくなります。
8. まとめ:たらい回しは、先に受け先を決めれば止まります。
この記事の要点
- たらい回しは、担当者の能力ではなく、問い合わせの受け先を事前に決めていないことから起こります。
- テレワークを導入している企業は47.3%です*1。拠点が分かれるほど、受け先を決めておく設計の有無がそのまま表面化します。
- 一般労働者の賃金は55〜59歳で月396.2千円と全年齢のピークにあります*2。受け先を決める設計は、この年代までに積んだ実務経験と結び付きやすい仕事です。
- 2025年の転職者数は330万人です*3。転職先を選ぶときは、「この職場は最後に持つ人が決まっているか」という視点を持っておくと、入社後の見通しに差が出ます。
たらい回しを止めるのは、対応の速さを上げることではなく、受け先を先に決めておくことです。求人を選ぶときも、この決めごとがあるかどうかを、面談で確認できる具体的な観点として持っておきましょう。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 総務省「令和6年通信利用動向調査(企業編)」(2025年公表)
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
*3 総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年(令和7年)平均結果」(2026年公表)
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