複写の枚数を決めるのは誰か?求人で見る控えの持ち手
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

同じ内容を書いた瞬間に複数枚が仕上がる複写の伝票は、業務の現場でいまも使われています。枚数がなぜ2枚ではなく3枚、4枚になるのかは、伝票の形式そのものではなく、その控えを誰が持つ必要があるかで決まります。持ち手が増えるほど枚数は増え、持ち手を減らせば枚数も減らせます。
DX推進人材が「大幅に不足」と回答した企業は50.1%です*1。枚数を見直す仕組みづくりも、結局は人の手に委ねられています。
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この記事のポイント
- DX推進人材が「大幅に不足」と回答した企業は50.1%です*1。複写の枚数を見直す作業も、この人手不足のなかで進めることになります。
- 一般労働者の賃金は55〜59歳で月396.2千円です*2。控えを持つかどうかを判断する決裁の立場は、賃金がピークとなるこの年代が担う場面が目立ちます。
- 転職入職者のうち賃金が「変わらない」割合は28.4%です*3。枚数を減らす経験を積んでも、転職直後の賃金がすぐ上がるとは限りません。
1. 複写で同じ内容を何枚も出す理由は、持ち手の数で決まります。
複写で同じ内容を何枚も出す伝票は、控えを持つ人の数で枚数が決まります。DX推進人材が「大幅に不足」と回答した企業は50.1%です*1。人手が十分ではない現場ほど、紙を使った運用が続きやすくなります。枚数を減らすには、まず何人が控えを必要としているかを数えるところから始まります。
複写の伝票は、書いた瞬間に同じ内容の紙が2枚、3枚とできあがる仕組みです。枚数を決めているのは伝票の形式ではなく、その控えをそれぞれ手元に残す必要がある人の数です。発注した側、受け取った側、記録として保管する側と、控えを持つ立場が増えるほど、枚数も増えていきます。
枚数が多いほど手間がかかるからといって、勝手に1枚へ減らすことはできません。控えを持つ立場のうち誰か1人でも、自分の手元に残る紙がないと後で確認できなくなるからです。減らす対象は紙そのものではなく、控えを必要とする人の数のほうになります。
控えを持つ人を減らすというのは、その人が担っていた確認の役割を、別の方法に置き換えるという意味です。同じ内容を画面上で確認できる仕組みがあれば、紙の控えを手元に残す必要そのものが減ります。
枚数は、伝票を起票する時点でほぼ固まります。あとから枚数を増やそうとすると、すでに配られた分との整合を取り直す手間が発生するため、最初にどの立場までを控えの対象にするかを決めておくことが重要になります。
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2. 人材不足と賃金の実態を、数字で確認します。
枚数を見直す判断に関わる、人材と賃金の実態を数字で確認します。
DX推進人材が「大幅に不足」と回答した企業は50.1%です*1。枚数を見直す仕組みづくりを担う人手そのものが、この数字が示すとおり十分ではありません。
一方、転職入職者のうち賃金が「変わらない」割合は28.4%です*3。枚数を減らす経験を積んでも、転職した直後の賃金がすぐに上がるとは限らないことが、この数字から読み取れます。
2つの数字は別々の調査によるものであり、片方が原因でもう片方が結果になっているわけではありません。それぞれ独立した実態として受け取る必要があります。
3. 枚数が増える背景には、3つの理由があります。
複写の枚数が増える理由は、大きく3つに分けられます。1つ目は、法令や社内規程によって、その控えを一定期間保管する義務がある立場が存在することです。
2つ目は、複数の部署がそれぞれ独自に確認の手順を持っていることです。受け取った現場と、経理で処理する部署とでは、確認するタイミングも見る項目も違います。それぞれが自分の手元に控えを残したいと考えれば、枚数はその数だけ増えます。
3つ目は、取引先など社外に提出する控えが必要な場面があることです。自社の中だけで枚数を決められない場合、相手側の要望も枚数に反映されます。
この3つの理由はいずれも、伝票そのものの形式とは関係がありません。枚数を左右しているのは、控えを必要とする立場の数であり、その立場をどう整理するかが、枚数を減らす際の出発点になります。
1つの部署が控えを不要と判断しても、別の部署がまだ必要としていれば、その枚数を減らすことはできません。全体の立場を洗い出さないまま枚数だけを減らそうとすると、必要な控えが欠けたまま運用が進むことになります。
職場によっては、支店ごとに必要な枚数が異なるにもかかわらず、全社で同じ枚数の伝票を使っている場合があります。実際には控えを使っていない支店があるなら、その分の枚数は最初から見直しの対象になります。
4. 何枚出すかを、役割ごとに表で整理します。
枚数を左右する、控えを持つ立場の例を表で確認します。
【表1】枚数を左右する、控えを持つ立場の例
| 立場 | 控えを持つ目的 | 枚数への影響 |
|---|---|---|
| 受け取る側 | 内容を確認し、手元に記録を残すため | 1枚が必要になります |
| 処理する部署 | 会計や在庫など、別の業務で参照するため | 部署の数だけ枚数が増えます |
| 保管・提出が必要な相手 | 法令や取引先の要望に応じて保存するため | 相手の数だけ枚数が増えます |
| 監査で確認する側 | 取引の経緯を後から検証するため | 検証の範囲に応じて枚数が変わります |
表のとおり、枚数を左右しているのは、控えを持つ立場の数です。受け取る側が確認のために1枚を必要とし、処理する部署が業務ごとに参照するために枚数が増え、保管や提出が必要な相手がいればさらに枚数が積み重なります。
この立場を整理し、どの控えが本当に必要かを判断するのは、決裁の権限を持つ立場です。一般労働者の賃金は55〜59歳で月396.2千円と、全年齢のなかでピークになります*2。枚数を見直す判断が、この年代の決裁者に委ねられる場面は少なくありません。
監査で確認する側が控えを必要とする場合、検証したい範囲によって必要な枚数が変わります。全期間をさかのぼって検証する運用と、直近の一定期間だけを確認する運用とでは、保管が必要な立場の重みも変わります。
立場ごとの目的を洗い出さずに枚数だけを減らそうとすると、確認や保管の目的を果たせない控えが生まれることになります。表に整理した目的を先に確認しておくことが、枚数を減らす作業の前提になります。
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5. 枚数を減らす流れを、4段階で示します。
枚数を減らす作業を、4段階に分けて示します。
枚数を減らす作業は、最初に控えを持つ立場をすべて洗い出すところから始まります。誰が、何のために控えを必要としているかが分からないまま枚数を減らすと、必要な確認が抜け落ちることになります。
次に、それぞれの立場が控えを何のために使っているかを確認します。確認のためであれば画面での参照に置き換えられる場合があり、保管のためであれば別の記録方法に置き換えられる場合があります。
置き換えが済んだ立場から、控えの枚数を外していきます。すべての立場を一度に置き換える必要はなく、置き換えが済んだ分だけ、段階的に枚数を減らしていく進め方もあります。
4段階を一度に進めようとすると、置き換えの準備が整っていない立場まで枚数を外してしまう場合があります。段階を分けて進めることが、確認の抜け漏れを防ぐことにつながります。
6. 複写を見直す視点は、4点に集約できます。
複写の枚数を見直すときに、確認しておきたい視点を整理します。
枚数を見直すときの4つの視点
- 立場の数:控えを持つ必要がある立場が、実際に何人いるかを数えます。
- 目的の違い:確認のためか、保管のためかで、置き換えられる方法が変わります。
- 提出先の要望:社外に提出する控えがある場合、相手側の要望も枚数に関わります。
- 置き換えの順番:すべてを一度に変えず、置き換えが済んだ立場から枚数を外します。
枚数を見直す作業は、システムを入れ替えるだけでは終わりません。控えを持つ立場をどう整理するかという、業務側の判断が欠かせません。
求人票に「業務効率化」「ペーパーレス化」と書かれている場合、実際に取り組む内容が、複写の枚数を減らす作業であることがあります。立場の数を数え、目的の違いを見極める工程に、エンジニアとして関わる求人もあります。
求人票や面談では、「立場を洗い出す作業を担当したか」「置き換えの提案をした経験があるか」を聞かれることがあります。枚数を減らした経験そのものよりも、どの立場のために、どう置き換えたかを説明できるかが評価につながります。
4つの視点はどれも単独では判断材料として不十分です。立場の数、目的の違い、提出先の要望、置き換えの順番をあわせて確認することで、その職場が枚数をどう扱っているかが見えてきます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 複写の枚数は、誰が減らす判断をするのか。
A. 控えを持つ立場と目的を把握している決裁の立場が判断します。部署をまたいだ確認や保管の目的を洗い出さずに枚数だけを減らすと、必要な確認が抜け落ちることがあります。
Q2. 複写をなくせば、確認の手間もなくなるのか。
A. なくなりません。確認そのものは残り、紙の代わりに画面で確認する形に変わるだけです。控えを持つ立場が減るわけではなく、確認する方法が変わります。
Q3. 電子化すれば、控えを持つ立場をゼロにできるのか。
A. ゼロにはなりません。法令や取引先の要望で保管が必要な立場は、電子化した後も残ります。電子化で変わるのは、控えを紙で持つか、データで持つかという点です。
Q4. 求人票の「ペーパーレス化」は、この枚数を減らす仕事を指すのか。
A. 求人ごとに異なります。紙の枚数を減らす作業を含む場合もあれば、別の書類を対象にしている場合もあるため、面談で対象となる業務を確認する必要があります。
Q5. 立場を洗い出す作業は、エンジニアの仕事に含まれるのか。
A. 含まれる場合があります。控えを持つ立場と目的を業務側と一緒に整理し、システム側で置き換えられる部分を見極める工程に、エンジニアとして関わる求人があります。
8. まとめ:枚数は、持ち手の数で変わります。
この記事の要点
- 複写の枚数を決めているのは伝票の形式ではなく、控えを持つ立場の数です。立場が増えるほど枚数も増えます。
- DX推進人材が「大幅に不足」と回答した企業は50.1%です*1。枚数を見直す仕組みづくりを担う人手も限られています。
- 一般労働者の賃金は55〜59歳で月396.2千円です*2。控えを持つかどうかを判断する立場は、この年代に集まりやすくなります。
- 転職入職者のうち賃金が「変わらない」割合は28.4%です*3。枚数を見直す経験を積んでも、転職直後の賃金がすぐ上がるとは限りません。
複写の枚数を見直すときは、まず控えを持つ立場をすべて数えることから始まります。立場ごとの目的を整理し、置き換えられる部分から手をつけることが、無理なく枚数を減らす道筋になります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」(2026年公表)
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
*3 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(2025年公表)
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