業務委託と正社員|判断の材料になる違い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

エンジニアの働き方には業務委託と正社員があり、どちらが得かは一概に決まりません。仕事の決め方、契約の続き方、記録の残り方という3つの観点で比べると、判断の材料になる違いが見えてきます。優劣を決めるためではなく、契約書や条件通知を読むときの確かめ方として、ここで整理します。
業務委託と正社員の違いは、担当する範囲が契約でどこまで決まっているかという一点に集約されるものではありませんが、判断の材料としては大きな手がかりになります。
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この記事のポイント
- 業務委託では担当する範囲が契約で決まり、正社員では役割に応じて範囲が変わることがあります
- 契約の続き方は、更新と雇用継続という異なる形で表れます
- 一般労働者の賃金は55〜59歳が396.2千円、60〜64歳は329.3千円です*1。年齢による賃金水準の前提として示します
1. 業務委託と正社員の差は、決め方・続き方・記録に表れます
働き方の違いは、どちらが得かを比べるためのものではありません。仕事の決め方、契約の続き方、記録の残り方という3つの観点に、業務委託と正社員の違いが表れ、それが契約書や条件通知を読むときの判断の材料になります。
どちらを選ぶかを考えるとき、どちらが得かという結論を先に決めようとすると、判断が難しくなります。エンジニアの働き方において、この2つでは仕事の決め方や契約の続き方が異なり、この違いこそが判断の材料になります。
業務委託では、担当する範囲が契約であらかじめ決まる形になっており、正社員では役割や部署に応じて範囲が変わることがあります。この差は日々の仕事の進め方だけでなく、契約が続くかどうかにも関わってきます。
契約の続き方も、この2つでは表れ方が違います。業務委託は契約の更新という形で続き方が決まり、正社員は雇用が続くことを前提に仕組みが作られています。どちらが安定しているかを断定できる話ではなく、続き方の形が異なるという事実です。
記録の残り方についても差があります。契約に基づく働き方では契約書に記載された内容が主な記録になり、正社員では就業規則や社内規程による記録が積み重なります。この3つの観点を押さえておくと、契約書や条件通知を読むときに、何を確かめればよいかが見えてきます。
求人票や募集要項を読むときも、この3つの観点を先に意識しておくと、書かれている内容がどの観点に当たる記載かを整理しやすくなります。観点を先に決めておくことは、読み方を安定させるための工夫であり、どちらかを選ぶ結論を急ぐためのものではありません。
2. 担当する範囲の決まり方で、見え方が分かれます
担当する範囲がどこまで契約で決まっているかによって、業務委託という働き方の見え方は変わります。範囲が契約書に明記されていれば、その範囲の中で仕事を進める形が見えやすくなります。
範囲が別紙や覚書に委ねられている場合は、契約書本体だけでなく、別紙の記載も合わせて確認する進め方になります。範囲の記載が曖昧な場合は、都度の相談によって範囲が広がることもあります。
正社員では、範囲は求人票や募集要項に書かれた内容から出発しつつ、部署や役割の状況に応じて広がる場合があります。業務委託の範囲の決まり方とは、変わり方の性質が異なります。
どちらの分かれ方に当たるかは、契約書や募集要項の記載を読むことで確かめられます。分からない点が残る場合は、勤務先の人事・採用担当に確かめる進め方があります。
面接や書面でのやり取りを重ねるうちに、最初に説明された範囲と、実際に依頼される内容がずれていないかを確かめる場面も出てきます。ずれに気づいたときは、契約書や募集要項の記載をあらためて見直す進め方があります。
3. 契約の続き方は、更新と雇用という形に出ます
業務委託の契約は、期間が決まっており、その期間が終わるときに更新されるかどうかが続き方を決めます。更新の条件や時期は契約書に記載されているため、そこを確かめることが手がかりになります。
正社員は、雇用が続くことを前提に仕組みが作られており、契約の更新という手続きを踏むことは基本的にありません。この違いは、どちらが安定しているかという優劣の話ではなく、続き方の形が異なるという事実です。
契約に基づく働き方を続けている間に、正社員としての雇用に関心を持つ場面もあります。そのときに変わるのは範囲の決まり方であり、続き方だけを見ていても全体は見えてきません。
業務委託から正社員に移るときに変わる範囲については、別の記事で扱っています。ここでは、続き方という観点に絞って整理します。
続き方を確かめる際は、契約が終了する条件も合わせて見ておくと、想定外の終わり方に備えやすくなります。終了の条件も、範囲や更新の条件と同じく、契約書に記載されている事柄です。
あわせて読みたい | 業務委託から正社員になるとき|変わるのは範囲
4. 業務委託と正社員を4つの観点で並べます
この4つの観点を並べます。優劣を決めるための表ではありません。
見る観点別の違い
| 見る観点 | 業務委託での見え方 | 正社員での見え方 |
|---|---|---|
| 担当する範囲の決まり方 | 契約書に範囲があらかじめ明記されます | 部署や役割によって範囲が変わることがあります |
| 契約の続き方 | 契約の更新という形で続き方が決まります | 雇用が続くことを前提に仕組みが作られます |
| 仕事の進め方の決め方 | 契約で定めた内容に沿って進めます | 部署の指示に沿って進める場面があります |
| 記録の残り方 | 契約書の記載が主な記録になります | 就業規則や社内規程の記載が積み重なります |
4つの観点を並べると、この2つの違いは、良い・悪いではなく形の違いとして見えてきます。同じ「エンジニアとして働く」という点は変わりません。
担当する範囲の決まり方と契約の続き方は、関わりがあります。範囲が契約書で明確な契約ほど、契約の更新のタイミングで範囲を見直す機会も明確になりやすくなります。
正社員の中でも、契約社員と正社員の続き方の違いを比べる視点があります。契約社員と正社員の違いについては、別の記事で扱っています。
表の4つの観点は、契約書や求人票を読むときにそのまま当てはめられます。読むときに迷ったら、この4つのどこに当たる記載かを探す進め方があります。
4つの観点を上から順に確かめる必要はありません。求人票や契約書に書かれている順番に沿って確かめていく進め方でも、見落としは少なくなります。
あわせて読みたい | 契約社員と正社員の違い|転職で確かめる5つの条件
5. 判断の材料をそろえる順番を決めます
担当する範囲、続き方、記録の残り方を、次の順番で確かめると、判断の材料がそろいます。
確かめる3つの順番
- 範囲を書き出す:契約書や募集要項に書かれている担当する範囲を、自分の言葉でも書き出します
- 続き方を確かめる:契約の更新や雇用の継続が、どのような条件で決まるかを確かめます
- 記録を確かめる:範囲と続き方が、契約書や就業規則のどこに記載されているかを確かめます
3つの順番は、業務委託と正社員のどちらを検討する場合にも当てはめられます。範囲を書き出すことから始めると、続き方や記録の確認がしやすくなります。
契約に基づく仕事から事業会社の正社員へ動くときは、変わる軸が時間の使い方に及ぶこともあります。時間軸の違いについては、別の記事で扱っています。
3つの順番を1社だけに使うのではなく、検討している複数の求人に同じ順番で当てはめると、条件を比べる材料が増えます。
順番のどこかで記載が見つからない場合は、契約書や条件通知の記載を読み直すか、勤務先の人事・採用担当に確かめる進め方があります。
3つの順番で確かめた内容は、面接の場でその都度メモに残しておくと、あとで複数の求人を比べるときの手がかりになります。聞き方をそろえておくことが、比べるための前提になります。
あわせて読みたい | 受託から事業会社へ動くとき|変わるのは時間軸
6. 3段で判断の材料を積み上げます
3段の積み上げは、土台となる範囲を書き出すことから始まります。範囲が見えていないと、続き方を確かめても、何が続くのかが分かりにくくなります。
中段の続き方は、契約の更新や雇用の継続という形で表れます。範囲と続き方の両方が見えてくると、記録の残り方まで確かめる余裕が生まれます。
頂点の記録は、契約書や就業規則、社内規程の記載として残ります。範囲・続き方・記録の3段は、どれか1つだけでは判断の材料として十分ではありません。
この順番は、契約に基づく働き方と正社員のどちらを検討する場合でも変わりません。契約書や条件通知の記載を読むときの、確認の手順として使えます。
3段のどこかで記載が見つからない場合でも、次の段の確認に進むことができます。すべてが埋まらなくても、いったん整理しておくことに意味があります。
7. よくある質問|契約書と人事が手がかりです
Q1. 業務委託と正社員は、どちらを選べばよいですか。
A. どちらが得かを一概に決めることはできません。担当する範囲の決まり方、契約の続き方、記録の残り方という違いを比べ、契約書や条件通知の記載を確かめることが、判断の材料になります。
Q2. 契約の更新は、どのように行われますか。
A. 更新の条件や時期は契約書に記載されています。更新の有無や条件は契約ごとに異なるため、記載を確かめることが手がかりになります。更新の時期が近づいたタイミングで、条件が変わっていないかを見直しておくのも一つの進め方です。分からない点は、勤務先の人事・採用担当に確かめる進め方もあります。
Q3. 正社員に切り替わると、担当する範囲は変わりますか。
A. 範囲の決まり方が変わる場合があります。契約書で明記される範囲から、部署や役割に応じて変わる範囲になることがあり、募集要項や条件通知の記載を確かめることが手がかりになります。
Q4. 契約の内容について迷ったときは、どこに確かめればよいですか。
A. 契約書や条件通知の記載を読み、分からない点は勤務先の人事・採用担当に確かめる進め方があります。契約の形にかかわらず、記載と説明の両方を見比べておくと安心です。担当する範囲・続き方・記録という3つの観点に当てはめて読むと、確かめる項目を絞りやすくなります。
8. まとめ:判断の材料になる違いを整理します
この記事の要点
- 業務委託と正社員では、担当する範囲の決まり方が異なります
- 契約の続き方は、契約の更新と雇用の継続という異なる形で表れます
- 記録の残り方も違うため、契約書や就業規則の記載を確かめることが手がかりになります
- 判断の材料をそろえる順番は、範囲→続き方→記録です
- 一般労働者の賃金は55〜59歳が396.2千円、60〜64歳は329.3千円です*1。契約の形とは別の、年齢による賃金水準の前提として示します
この2つは、どちらが得かを決めるための比較ではありません。担当する範囲の決まり方、契約の続き方、記録の残り方という3つの観点で違いを比べることが、判断の材料になります。範囲を書き出し、続き方を確かめ、記録の残り方を確かめるという順番で見ていくと、契約書や条件通知を読むときに、何を確かめればよいかが見えてきます。分からない点が残るときは、契約書や条件通知の記載を読み直すか、勤務先の人事・採用担当に確かめる進め方があります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
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