ブロックチェーンエンジニアの求人|業務システムの側から
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

ブロックチェーンエンジニアの求人と聞くと、投機的な文脈と結び付けて考える人もいますが、実際の求人の多くは、記録の改ざんを防ぐ仕組みを既存の業務システムに組み込む仕事です。ここでは、業務システムに組み込む側の求人に絞り、読み方と経験の示し方を整理します。
分かれ目になるのは、扱う対象が投機か業務システムかという1点です。価格や投資は、業務システムへの組み込みとは問いの立て方が異なるため、ここでは扱いません。
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この記事のポイント
- ブロックチェーンの求人は、投機的な文脈を扱う仕事と、記録の改ざんを防ぐ仕組みを業務システムに組み込む仕事とに分かれます
- 情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍です*1
- 職務経歴書には、接続設計・整合性の確認方法・運用引き継ぎという3つの要素を足せます
1. ブロックチェーンの求人は、扱う対象で中身が分かれます
ブロックチェーンエンジニアの求人は、暗号資産の売買基盤に関わる求人と、記録の改ざんを防ぐ仕組みを業務システムに組み込む求人とに分かれます。情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍です*1。ここで扱うのは後者、業務システム側から見た求人の読み方です。
求人票の見出しに「ブロックチェーン」とだけ書かれていても、担当する仕事の中身は求人ごとに大きく異なります。売買の基盤を支える求人もあれば、既存の業務システムに記録の仕組みを組み込む求人もあります。
業務システム側の求人が扱う記録の対象は、契約書や物流の履歴、決済の証跡など、既存の業務システムがすでに持っている記録です。新しく記録を生み出す仕事ではなく、今ある記録の信頼性を高める仕事です。
業務システムに組み込む文脈で使われるとき、ブロックチェーンは主に記録の改ざんを防ぐための仕組みとして扱われます。契約の履歴や取引の記録を、あとから書き換えられない形で残す用途です。
技術の仕組みそのものを深く理解していなくても、既存システムとの接続経験や、記録の整合性を確認してきた経験があれば、求人票の記載と自分の経験を照らし合わせることができます。
求人票を読むときは、担当する範囲が基盤の実装なのか、既存システムとの接続なのかをまず見分けることが出発点になります。次の段では、その担当範囲がどのような順番で仕事として進むかを見ていきます。
投機的な文脈と業務システムへの組み込みとでは、応募先に求められる経験の中心も変わります。売買の基盤側では取引処理の速さや耐障害性が問われ、業務システム側では既存システムとの整合を保つ経験が問われます。求人票の記載から、どちらの経験が問われているかを読み取ることが出発点になります。
2. 業務システムに組み込む仕事は4つの段を踏みます
記録要件の整理を省いて実装から入ると、何を守るための仕組みかが曖昧なまま進んでしまいます。業務側が何を改ざんされたくないのかを確認する段は、開発の前提を決める段でもあります。
接続設計は、既存の業務システムがどのようなデータ形式や更新の頻度を持っているかを踏まえて進みます。台帳側の仕組みだけを設計しても、既存システムとかみ合わなければ意味がありません。
実装と検証の段では、記録が改ざんされていないことをどう確かめるかが問われます。検証の方法は既存システムの監査の仕組みと重なる部分があり、監査に関わってきた経験も参照できます。
運用への引き継ぎまで進んで、初めて業務システムの一部として機能します。実装して終わりではなく、誰が監視し、誰が保守を担うかまで決めて初めて、仕事は完結します。
4つの段は、必ずしも同じ担当者が通しで担うとは限りません。求人によっては接続設計までを担当し、運用は別の体制に引き継ぐ形もあります。求人票に書かれた担当範囲を確認することが必要です。
4つの段のうち、どこまでを担当するかによって、求められる経験の重心も変わります。記録要件の整理や接続設計を担う立場では、既存の業務システムを理解している経験が重視されます。実装と検証を担う立場では、台帳側の仕組みに対する具体的な知識が重視されます。
3. 求人の言葉から、担当する範囲を読み分ける
求人票に書かれた言葉は、担当する範囲によって使い分けられています。表で言葉を照らし合わせます。
求人票の言葉と担当範囲の読み分け
| 求人でよく使われる言葉 | 担当することがある範囲 | 応募前に確かめること |
|---|---|---|
| 基盤の設計・実装 | 台帳の仕組みそのものを設計する範囲 | どの合意形成の方式を扱うかの記載 |
| システム連携・接続 | 既存の業務システムと接続する範囲 | 接続先となる既存システムの種類 |
| 保守・運用 | 稼働後の監視や障害対応を担う範囲 | 運用体制が社内か委託かの記載 |
| PoC・実証実験 | 小規模な検証段階を担当する範囲 | 検証で終わるか本番化を含むかの記載 |
表の左列にある言葉は、求人票の見出しやリード文でよく見かける表現です。同じ「ブロックチェーン」という分野でも、これらの言葉によって担当する範囲は大きく変わります。
中央の列は、あくまで担当する可能性がある範囲であって、確定した内容ではありません。同じ言葉でも、企業や求人によって実際の担当範囲は異なります。
右の列に挙げた確認事項は、面談や求人票の詳細で確かめられる内容です。担当範囲を確認しないまま応募すると、入社後に想定していた仕事と異なる場合があります。
既存の業務システムとの接続を担当する求人では、基盤そのものを設計する求人に比べて、既存システムの知識や接続経験がそのまま活きます。次の項では、この接続設計がなぜ要になるのかを見ていきます。
表の4行は、いずれも求人票の一部だけを見ても判断しきれない項目です。担当することがある範囲まで書かれていても、確かめることまで求人票に書かれているとは限らないため、面談で確認する前提で読むことが必要です。
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4. 既存システムとつなぐ設計が要になります
業務システムに記録の仕組みを組み込む仕事で中心になるのは、台帳の仕組みそのものよりも、既存の業務システムとどうつなぐかという設計です。台帳側だけを高度に作り込んでも、既存システムとの接続点で整合が崩れれば、記録の信頼性は保てません。
既存システムとの接続では、データの形式や更新のタイミングをそろえる作業が発生します。既存システムが日次でデータを更新しているのに、台帳側が即時の更新を前提にしていれば、どこかで記録のずれが生じます。このずれをどう吸収するかが設計の要になります。
この設計に必要なのは、台帳の仕組みに関する深い知識だけではありません。既存の業務システムがどのようなデータを持ち、どのタイミングで更新され、どこに障害が起きやすいかを把握している経験こそが、接続設計では生きてきます。
面談で担当範囲を確認する際は、台帳側の実装経験だけでなく、既存システムとの接続をどう設計したか、整合をどう確認したかという点まで含めて話すと、担当できる範囲が伝わりやすくなります。
既存システムとの接続設計は、一度作って終わりではありません。既存システム側の仕様が変わるたびに、接続部分も見直しが必要になります。この見直しを継続して担う体制まで含めて、業務システムに組み込む仕事は成り立ちます。
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5. 経験の置き場所は、2つの軸で見えてきます
自分の経験がこの分野の求人のどこに当てはまるかは、2つの軸で位置を確かめると見えてきます。
縦の軸は設計を担うか運用を担うか、横の軸は業務システム寄りか基盤の実装寄りかを示します。自分の経験がどの象限に近いかを確かめると、求人票のどの表現に当てはまるかが見えてきます。
強調した象限は、既存システムの運用経験を、記録連携部分の監視に充てる位置です。台帳そのものの実装経験がなくても、既存システムの運用を担ってきた経験があれば、この位置から関わり始められます。
基盤の実装寄りの2象限は、台帳や合意形成の仕組みそのものに関わる位置です。既存システムとの接続経験だけでは埋まらない範囲であり、実装や検証を担ってきた経験がより強く求められます。
自分がどの象限に近いかを見極めたうえで、求人票に書かれた担当範囲と照らし合わせることが、応募前の確認として役立ちます。象限をまたいで担当範囲が広がっている求人もあるため、記載を確認する姿勢は欠かせません。
6. 職務経歴書に足せる3つの要素
既存システムでの経験を、この分野の求人に向けた職務経歴書に足すとき、書き加えられる要素を3つに整理します。
職務経歴書に足せる3つの要素
- 接続設計の経験:既存システムとの連携をどう設計したかを書きます
- 整合性の確認方法:記録の食い違いをどう確かめてきたかを書きます
- 運用引き継ぎの経験:監視や保守の体制にどう引き継いだかを書きます
3つはいずれも、担当した機能の一覧に一行を足すだけでは書けません。既存システムとの関わり方を、接続・整合性・引き継ぎという観点から思い出す作業が必要です。
3つを全ての経験について書く必要はありません。既存システムとの接続や整合性の確認に特に深く関わった場面を選び、そこに絞って書くほうが読み手には伝わりやすくなります。
書き終えたら、3つの要素が別々の場面を指しているかを確認します。同じ経験から3つとも書いてしまうと、経験の幅が狭く見えることがあるため、担当してきた業務のなかから異なる場面を選ぶようにします。
面談では、この3つの要素がそのまま質問の切り口として使われることがあります。職務経歴書に書いた内容と、面談で話す内容をそろえておくと、説明に一貫性が生まれます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 未経験からブロックチェーンに関わる求人に応募できますか。
A. 既存システムとの接続経験や運用経験があれば、台帳側の実装経験が浅くても選考の対象になることがあります。求人ごとに求められる範囲を確認することが必要です。
Q2. 求人に書かれた「ブロックチェーン」は、常に基盤そのものの実装を意味しますか。
A. 求人によって意味は異なります。基盤そのものを実装する求人もあれば、既存の業務システムに接続する求人もあるため、募集要項の記載を確認することが必要です。
Q3. 未経験の場合、どの範囲から関わり始めやすいですか。
A. 既存システムの運用や接続部分から関わり始める例があります。担当する範囲は求人によって異なるため、面談で確かめることが必要です。
Q4. リモートワーク対応の求人にも、この分野の求人は含まれますか。
A. 含まれます。出社の頻度や担当する範囲は求人ごとに異なるため、募集要項の記載を確認することが必要です。
8. まとめ:求人は、扱う対象から読み解けます
この記事の要点
- ブロックチェーンの求人は、投機的な文脈を扱う仕事と、記録の改ざんを防ぐ仕組みを業務システムに組み込む仕事とに分かれます
- 情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍です*1
- 業務システムに組み込む仕事は、記録要件の整理から運用への引き継ぎまで4つの段を踏みます
- 経験の置き場所は、業務システム寄りか基盤寄りか、設計を担うか運用を担うかという2つの軸で見えてきます
- 職務経歴書には、接続設計・整合性の確認方法・運用引き継ぎという3つの要素を足せます
技術の仕組みを深追いするより、業務システムに組み込む側として何を担ってきたかを言葉にすることが、この分野の求人に近づく一歩になります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
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