独立と転職で迷うとき|手放すものから考える
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

独立と転職のどちらを選ぶか迷うとき、決め手になりやすいのは報酬の見込みではありません。いま手にしている安定・裁量・学びの機会のうち、何を手放せるかを先に整理しておくと、判断の基準がはっきりします。エンジニアとしてどちらの道を選ぶ場合でも、この整理は共通して使えます。
決めておくのは、いま手にしている安定・裁量・学びの機会のうち何を手放せるかという一点です。報酬の見込みや、独立と転職のどちらが正解かではありません。
Relasic(株式会社LASSIC運営)|リモートワーク対応の転職支援
この記事のポイント
- 独立と転職のどちらを選ぶかは、報酬の見込みではなく、いま手にしているものの何を手放せるかで決まります
- 雇用型就業者のテレワーク実施率は15.6%です*1。雇用のままでも柔軟な働き方を持つ人はいます
- 決める前に、収入の途切れへの備え・裁量への実感・学びたい対象の明確さの3点を確かめられます
1. 独立と転職の分かれ目は、手放せるものの大きさです
独立と転職のどちらを選ぶかは、報酬の見込みではなく、いま手にしているものの何を手放せるかで決まります。雇用型就業者のテレワーク実施率は15.6%です*1。安定・裁量・学びの機会のうち、譲れないものを先に決めておくと選びやすくなります。
エンジニアが独立と転職の間で迷うとき、比べる対象を収入の見込みに絞ってしまうと、判断がまとまりにくくなります。収入は独立でも転職でも変動する要素であり、どちらか一方だけが有利とは言い切れません。先に整理すべきは、いま手にしている安定・裁量・学びの機会のうち、どれを手放せるかという点です。
2. 対応の分かれ目は、何に不満があるかで決まります
独立と転職のどちらが合っているかは、報酬ではなく、今抱えている不満の中身から考える方法もあります。
独立と転職のどちらが近道になりやすいかは、いまの不満がどこにあるかによって変わります。裁量の少なさなのか、安定への不安なのか、学べる幅の狭さなのかを、まず言葉にしておきます。
裁量の少なさに不満がある場合、独立すれば仕事の受け方や進め方を自分で決めやすくなります。ただし、その裁量と引き換えに、仕事を自分で確保し続ける負担を引き受けることになります。
安定を優先したい場合は、転職の方が近道になりやすくなります。雇用としての立場を保ったまま、裁量や学べる幅を広げられる求人を選ぶ余地が残るためです。
学べる技術の幅に狙いが定まっている場合は、独立と転職のどちらでも近づけます。この場合に決め手になるのは、次に何を学びたいかがすでに定まっているかどうかです。
裁量への不満と安定への希望が同時にある場合は、選択肢は独立と転職の二択にとどまりません。転職先の求人のなかにも、仕事の受け方に一定の裁量を残している求人はあります。まず不満の中身を分けたうえで、独立以外の選び方も候補に残しておくと、判断の幅が狭くなりすぎずに済みます。
3つの分岐のどれにも当てはまらないと感じる場合は、不満の言語化がまだ途中である可能性があります。感じていることを先に書き出してから、あらためて3つの分岐に当てはめ直すと、近い項目が見つかりやすくなります。
3. 独立と転職は、手放すものと得るものが逆になります
独立を選ぶと、雇用に伴う安定は手放すことになります。仕事を発注してくれる相手を自分で確保し続ける必要があり、仕事が途切れる期間の収入も自分で受け止める立場になります。その代わりに得られるのは、仕事の受け方や進め方を自分で決められる裁量です。
転職を選ぶと、その裁量の一部は手放すことになります。働き方や引き受ける仕事の範囲は、勤め先の方針に合わせる部分が残ります。その代わりに、雇用としての収入の見込みと、社内の仕組みを使って学べる機会を得られます。
学びの機会も、どちらを選ぶかで手放し方が変わります。独立すれば学ぶ対象を自分で選べますが、教えてくれる相手がいない前提で進めることになります。転職すれば社内の知見や先に経験した人から学べますが、学ぶ対象を自分だけで決められるわけではありません。
手放すものは、1つずつ独立して決まるわけではありません。裁量を優先して独立を選べば、安定と学びの機会の手放し方も同時に変わります。逆に安定を優先して転職を選べば、裁量は勤め先の方針に合わせる形に落ち着きます。3つは別々の項目ではなく、1つを動かせば残り2つも動く関係にあります。
何を手放せるかは、今の職場に何を求めているかによって変わります。裁量の広さを最優先にするなら独立が向く場合もありますし、安定と学びの機会を優先するなら転職の方が近い場合もあります。どちらが正しいという話ではなく、譲れないものを先に決めておくことが選択の基準になります。
あわせて読みたい | プリセールスエンジニアへの転職|説明の相手が変わる
4. 手にしているものは、選択によって変わり方が異なります
いま手にしているものが、独立と転職でどう変わりやすいかを整理します。
独立と転職で、変わりやすい点の比較
| いま手にしているもの | 独立した場合 | 転職した場合 |
|---|---|---|
| 収入の見込み | 自分で確保し続ける必要が生じやすい | 雇用のまま保たれやすい |
| 仕事の裁量 | 受け方まで自分で決めやすい | 勤め先の方針に合わせる範囲が残りやすい |
| 学びの機会 | 学ぶ対象は自分で選びやすい | 社内の知見を通じて学びやすい |
| 働く環境の変えやすさ | 契約ごとに変えやすい | 転職のタイミングでまとめて変えやすい |
表の左列は、独立と転職のどちらを選ぶ場合でも共通して持っているものです。右に進むほど、選んだあとにどう変わりやすいかを示しています。
収入の見込みは、独立すると自分で確保し続ける対象に変わりやすく、転職すると雇用のまま保たれやすくなります。どちらが良いかではなく、どちらの形で持ちたいかの違いです。
裁量と学びの機会は、独立で自分の手に集まりやすく、転職では勤め先や社内の仕組みを通じて得やすくなります。手放す量ではなく、得る経路が変わると捉えられます。
働く環境の変えやすさは、独立では契約の単位で、転職では転職そのもののタイミングで動かせます。変えられる粒度が異なるだけで、どちらも変えられないわけではありません。
表の「〜になりやすい」という言い方は、必ずそうなるという意味ではありません。同じ独立でも、仕事の受け方によっては収入の見込みが保たれる場合がありますし、同じ転職でも、求人によっては裁量の範囲が広く残る場合があります。表は傾向を示すものであり、個別の契約や求人の条件がそのまま当てはまるとは限りません。
あわせて読みたい | カスタマーサクセスエンジニアへの転職|使われ続ける側
5. 決める前に、3点を確かめられます
独立と転職のどちらを選ぶか決める前に、確かめられる点を3つに整理します。
決める前に確かめられる3点
- 収入の途切れへの備え:仕事が途切れる期間が生じても、生活を維持できる見通しがあるかを確かめます
- 裁量への実感:今感じている裁量の少なさが、環境を変えれば解決するのか、独立でなければ解決しないのかを確かめます
- 学びたい対象の明確さ:次に学びたい技術や領域が定まっているか、まだ探している段階かを確かめます
3点はいずれも、独立と転職のどちらを選ぶ前にも確かめられる内容です。答えが出ていない項目があっても、それ自体が判断の材料になります。
収入の途切れへの備えは、独立を選ぶ場合に重くなる項目です。転職を選ぶ場合でも、退職から入社までの期間が生じることはあるため、無関係ではありません。
裁量への実感は、独立でなければ解決しないのか、環境を変えるだけで解決するのかを切り分ける項目です。切り分けられれば、選ぶ先が絞りやすくなります。
学びたい対象の明確さは、独立と転職のどちらを選んでも、その後の進み方に関わります。定まっていない段階なら、先に定めてから選ぶ方が近道になりやすくなります。
3点の答えが人によって割れる場合は、優先順位をつけておくと選びやすくなります。収入の途切れへの備えを最優先にするか、裁量への実感を最優先にするかで、次に確かめるべき項目の順番も変わります。
あわせて読みたい | 正社員の転職タイミング完全ガイド|月・年齢・状況で見極める動き時
6. 優先順位は、生活の土台から積み上げて考えます
独立と転職のどちらを選ぶ場合でも、優先順位の立て方には共通の型があります。
優先順位は、土台にある生活の固定費から積み上げて考えると整理しやすくなります。固定費が変わらない前提のうえに、仕事の取り方が乗ります。
仕事の取り方は、独立であれば依頼を自分で確保し続ける方法を、転職であれば勤め先の求人が示す条件を指します。ここが崩れると、土台の固定費にも影響が及びます。
頂点にある続けたい働き方は、裁量や学びをどこまで重視するかという優先順位です。土台と中段が保たれたうえで、初めて選べる項目になります。
3段の順番を逆にして、頂点の働き方から先に決めてしまうと、土台の固定費が後回しになりやすくなります。積み上げる順番を保つことが、判断のずれを防ぎます。
独立を選ぶ場合、土台にある生活の固定費自体を、仕事の依頼が安定するまでの間だけ見直す必要が生じることもあります。土台も動かせる前提で考えておくと、頂点の働き方だけを決めて後から土台がずれるという事態を避けやすくなります。
3段の優先順位は、一度決めたら固定するものではありません。仕事の取り方や生活の固定費が変わるたびに、頂点の働き方まで含めて見直す機会になります。
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 独立と転職のどちらを選ぶか、最初に何を確認すればよいですか。
A. いま手にしている安定・裁量・学びの機会のうち、どれを手放せるかを確認します。判断はそこから始まります。
Q2. 独立すれば裁量は広がりますか。
A. 仕事の受け方を自分で決めやすくなる一方、依頼を自分で確保し続ける負担が増えます。裁量が広がるかどうかは、その負担を引き受けられるかによって変わります。負担への備えがないまま裁量だけを求めると、途中で優先順位が入れ替わることもあります。
Q3. 転職すれば独立で得られる裁量は失われますか。
A. 勤め先の方針に合わせる範囲は残りますが、仕事の受け方の一部に裁量を持てる求人もあります。裁量の範囲は求人ごとに異なるため、応募の段階で確認しておく余地があります。
Q4. 独立と転職は、どちらかを選んだらもう一方に戻れませんか。
A. 独立から転職、転職から独立のどちらの進み方もあります。今回手放すものが、今後も固定されるわけではありません。そのときどきで、何を手放せるかをあらためて整理し直すことになります。
8. まとめ:独立と転職は、手放せるものから選べます
この記事の要点
- 独立と転職のどちらを選ぶかは、報酬の見込みではなく、いま手にしているものの何を手放せるかで決まります
- 雇用型就業者のテレワーク実施率は15.6%です*1。雇用のままでも柔軟な働き方を持つ人はいます
- 独立では裁量が広がりやすい一方、仕事を確保し続ける負担や収入の安定を手放すことになります
- 転職では雇用の安定を保ちやすい一方、働き方や仕事の範囲を勤め先の方針に合わせる部分が残ります
- 決める前に、収入の途切れへの備え・裁量への実感・学びたい対象の明確さの3点を確かめられます
何を手放せるかを先に決めておくことが、独立と転職のどちらを選ぶときにも、迷いを減らす土台になります。優先順位は一度決めたら終わりではなく、状況が変わるたびに見直せるものです。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
転職ノウハウ その他の記事
もっと読む 〉-
見込みと確定を同じ画面に出す求人で必要になる印
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) エンジニアの求人を見ていると、年収や採用予定人数のように動きそうな数字と、内定通知書に書かれてもう変わらない数字が、同じ画面に並んで出てきます。見込みの数字 […] -
廃番の品がある求人で3つの終了日をどう決めるか
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) 求人票に「廃番」「生産終了」という言葉が並ぶ仕事があります。担当するのは、資産管理や保守管理のシステムに関わるエンジニアです。作られなくなった品は、ある日に […] -
点検の周期がずれた求人|次をいつにするかを決める
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) 点検の周期は最初に決めた数字がそのまま残ります。3か月ごと、6か月ごとという間隔は求人票にも書かれますが、その間隔が実際にずれたあと、次の予定をどう数え直す […] -
色の使い分けだけに頼る求人|伝わらない場面が残る
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) 求人票や社内の資料では、重要な部分を目立たせるために色を使う場面がよくあります。ですが目立たせ方が一種類しかないと、同じ画面を見ても同じ意味が伝わっていると […]