カウンターオファーとは?引き止めを受けた転職の判断基準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

退職を伝えたあとに、今の会社から条件提示を受けることがあります。ここで迷うのは、提示された内容そのものより、何と何を比べればよいのかが定まっていない場合です。提示の内容と、退職を決めた理由、そして答える期限を分けて確かめておくと、期限までに判断を進めやすくなります。
決めておくのは、提示された条件と、退職を決めた理由のどちらを軸に考えるかです。条件だけを見て急ぐと、理由の一部が残ったままだと後で気づくことがあります。
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この記事のポイント
- 条件提示を受けたときに比べるのは、提示の内容だけでなく、退職を決めた理由です
- 情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.65倍、全職業計は1.26倍です*1。市場の状況を示す数字であり、提示を受けるかどうかの結論を出すものではありません
- 比べ方は、受け止める→書き出す→期限を決める→答える、の4段階で整理できます
1. 条件提示は、金額だけでなく理由も比べる材料になります
退職を伝えたあとに今の会社から条件提示を受けたとき、比べるべきは提示された条件だけではありません。退職を決めた理由がどこまで満たされるかと、答える期限の3つを、合わせて確かめる材料にしておくと、判断がぶれにくくなります*1。
条件提示は、退職の意思を伝えた直後に出されることが多く、金額や役職といった条件面の変更として示されます。ここで条件の中身だけに気を取られると、そもそもなぜ退職を決めたのかという理由が置き去りになります。
情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.65倍、全職業計は1.26倍です*1。この数字は、転職市場全体が求職者にとって選びやすい状況にあることを示すものであり、条件提示を受け入れるべきか、断るべきかという答えを出すものではありません。
比べる考え方そのものは、役職や社歴によって変わるものではありません。提示された条件と退職を決めた理由を並べて確かめる作業は、担当する業務や立場が違っても共通しています。
比べる対象を先に決めておくと、提示を受けた場でその場しのぎの返事をせずに済みます。次の項目からは、比べる範囲をどう分けるかを順に見ていきます。
2. 答えるまでは、4つの手順で進められます
最初の「受け止める」は、その場で返事をしない選択です。条件提示は、退職の意思を伝えた直後に出されることが多く、その場で即答すると、あとから比べる材料が揃わないまま決めてしまうことになりかねません。
「書き出す」の段階では、提示された内容と、そもそも退職を決めた理由を、同じメモに並べて書きます。口頭でのやり取りだけでは、時間が経つと内容の記憶があいまいになることがあります。
「期限を決める」は、会社側にいつまでに答えればよいかを確認する段階です。期限があいまいなまま検討を続けると、転職先への返事にも影響が及びます。
最後の「答える」は、書き出した内容を照らし合わせたうえで、期限までに結論を伝える段階です。ここでの結論は、提示を受けるか断るかのどちらかに決まっている必要はなく、条件の一部だけを持ち帰って再検討を頼む場合もあります。
4つの手順そのものは複雑ではありません。ただし順番を入れ替えて期限だけを先に気にすると、書き出す作業が後回しになり、比べる材料が不十分なまま答えを出すことになりかねません。
書き出したメモは、会社や転職先に見せる資料ではありません。あくまで自分の判断を整理するためのものなので、社内で共有する必要はなく、手元に残しておく程度で十分です。
3. 変わったのは条件か、状況かを分けて考えます
条件提示を受けたとき、まず区別しておきたいのは、変わったのが条件なのか、状況なのかという点です。給与や役職など提示された内容そのものが変わった場合と、退職を伝えたことで会社側の対応や周囲の見え方が変わった場合とでは、比べる対象が違ってきます。
条件が変わった場合は、退職を決めた理由のうち、条件に関わる部分がどこまで満たされるかを確かめる作業になります。給与が理由の中心だったのであれば、増額の水準や、それが続くかどうかが焦点になります。
状況が変わった場合は、条件そのものは変わらなくても、退職の意思を伝えたことで、担当業務の相談に応じてもらえるようになったり、これまで通らなかった要望が通ったりすることがあります。この場合に比べる対象は、条件の数字ではなく、実際に変わった状況が退職を決めた理由にどこまで届いているかです。
どちらの場合も、提示された内容を退職を決めた理由に照らして初めて、比べる対象がはっきりします。理由に照らさないまま条件だけを見ると、同じ判断をあとで繰り返すだけになりかねません。
条件と状況の両方が同時に変わることもあります。給与が上がると同時に、担当業務の相談にも応じてもらえるようになった場合は、双方を分けたうえで、それぞれが退職を決めた理由にどこまで届いているかを別々に確かめておくと、見落としを防げます。
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4. 比べる観点は、3つの表に整理できます
提示の中身は、確かめられる範囲と、そのままでは判断できない範囲に分けて見ると、比べやすくなります。
提示の中身と比べ方
| 提示の中身 | 確かめること | そのままでは判断できない点 |
|---|---|---|
| 給与や賞与の増額 | 増額が一時的か、来年度以降も続くか | 次の評価のタイミングで水準が保たれるか |
| 役職・評価の変更 | 役割や責任の範囲がどう変わるか | 変更が書面や辞令として残るか |
| 担当業務や異動の提案 | 希望していた業務に近づく内容か | 提案どおりに実際の配置が決まるか |
| 勤務条件(出社日数など)の見直し | 退職を伝える前から検討されていた話か | 今回だけの一時的な対応か |
表の1行目、給与や賞与の増額は、金額だけでなく続き方も確かめる必要があります。一度きりの上乗せなのか、翌年度以降の基準そのものが変わるのかで、意味合いは変わってきます。
2行目の役職・評価の変更は、口頭での提示だけでは、あとから内容の食い違いが起きることがあります。辞令や書面など、残る形で確認しておくと、比べる材料がはっきりします。
3行目の担当業務や異動の提案は、提案の時点ではまだ決定ではない場合があります。実際の配置が提案どおりに決まるかどうかは、提示を受けた時点では判断できないことがあります。
4行目の勤務条件の見直しは、退職を伝える前から検討されていた話なのか、退職を引き止めるための今回限りの対応なのかによって、続くかどうかの見通しが変わってきます。
4つの行に共通するのは、提示された内容そのものと、それが今後も続くかどうかは別に確かめる必要があるという点です。提示を受けた時点では続くかどうかまで判断できないことも多く、確認してよい範囲だと考えておくとよいでしょう。
確認する相手も1人に絞らないほうが安全です。直属の上司からの提示であっても、人事担当に同じ内容を確かめておくと、伝わり方の違いに気づけることがあります。
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5. 退職を決めた理由によって、比べ方は分かれます
退職を決めた理由が条件面だけだった場合は、今回の提示の中身を、その条件に照らして確かめる作業になります。増額や役職の変更が、理由としていた条件をどこまで満たすかが焦点です。
条件以外の理由もあった場合は、条件面の提示だけでは、理由の全体をカバーしきれないことがあります。人間関係や働き方に関わる理由は、給与や役職の変更だけでは変わらないことが多いためです。
転職先で実現したいことがすでに明確な場合は、比べる対象が今の会社の条件ではなく、転職先で見込まれる状況に移ります。この場合、今回の提示は、退職を決めた理由そのものへの答えにはならないことがあります。
3つのどれに近いかは、退職を決めたときの理由を書き出してみると見えてきます。理由は1つとは限らず、複数が重なっていることも珍しくありません。
理由が複数に分かれるほど、書き出す項目も増えます。答える期限までの日数が限られている場合は、分岐が多いほど時間がかかることも見込んで、早めに着手しておくと比べ漏れを防げます。
6. 確かめる範囲は、3点に絞れます
比べる際に確かめる範囲を、3点に絞ります。
比べる範囲を絞る3点
- 提示の内容:何がどう変わるのか、書面や言葉で確認できる範囲です
- 退職を決めた理由:条件だけだったか、それ以外もあったかを思い出す範囲です
- 答える期限:いつまでに返事をするかを、あらかじめ確認しておく範囲です
3点はいずれも、書き出すときは短い言葉で足ります。長くなるのは、これら以外の事情を混ぜて書いたときです。
提示の内容は、今の時点で確認できる範囲にとどめます。まだ決まっていない部分は、確認できない範囲として区別しておきます。
退職を決めた理由は、条件提示を受けた今のタイミングで思い出しておくと、条件だけを見て判断することを防げます。
答える期限は、会社側に確認しておかないと、あいまいなまま検討を続けることになります。転職先への返事にも関わるため、早めに確認しておく範囲です。
3点を書き出したメモは、期限までの間、繰り返し見返す基準としても使えます。迷ったときはこの3点に立ち返ると、比べる軸がぶれません。
家族や信頼できる相手に相談する場合も、この3点を先に書き出しておくと、相手に状況を正確に伝えられます。相談してから書き出すよりも、書き出してから相談するほうが、話が整理された状態で伝わります。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 引き止めの条件提示を受けたら、必ず比べる必要がありますか。
A. 比べるかどうかは状況によりますが、提示の内容と退職を決めた理由を並べておくと、期限までに答えを決めやすくなります。比べずに感情だけで即答すると、あとから振り返ったときに判断の根拠が残りません。
Q2. 条件提示を受けている間、転職先への返事を待ってもらえますか。
A. 対応は転職先や状況によって異なるため、返事を待てるかどうかは早めに転職先へ確認しておく必要があります。確認せずに検討だけを続けると、双方への返事が同時に遅れることがあります。
Q3. 条件提示の内容は、書面で残しておくべきですか。
A. 口頭だけの提示は、後から内容の食い違いが起きることがあります。何がどう変わるのかを、書面やメールなど残る形で確認しておくと、比べる材料がはっきりします。特に金額や継続の有無に関わる部分は、記憶だけに頼らないほうが安全です。
Q4. 条件提示を受け入れた場合、退職を決めた理由は解消されますか。
A. 理由が条件面だけであれば近づく場合がありますが、条件以外の理由があった場合は、提示を受け入れても理由の一部が残ったままになることがあります。受け入れる前に、どちらに当てはまるかを確かめておくとよいでしょう。
8. まとめ:比べる対象を先に決めておきます
この記事の要点
- 条件提示を受けたときに比べるのは、提示の内容だけでなく、退職を決めた理由です
- 比べ方は、受け止める→書き出す→期限を決める→答える、の4段階で整理できます
- 提示の中身は、増額や役職の変更など、確かめられる範囲と、そのままでは判断できない範囲に分かれます
- 退職を決めた理由が条件以外にもあった場合、条件提示だけでは理由が解消されないことがあります
- 情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.65倍、全職業計は1.26倍です*1。市場の状況を示す数字であり、答えを決める基準ではありません
何と何を比べるかを先に決めておくことが、期限までに答えを出す土台になります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
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