介護と仕事の両立|働き方の条件とリモートワークの選び方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

離れて暮らす家族への介護に関わるようになると、まず気になるのは働き方をどこまで動かせるかです。介護の進め方そのものではなく、勤務地の指定があるか、在宅で働ける日があるか、離れている間の連絡をどう取るかという、働く条件の確かめ方に絞って整理します。移動にかかる時間を先に測っておくと、動かせる条件とそうでない条件の線引きがしやすくなります。制度の扱いや申し出の段取りは、就業規則と社内の窓口で確かめる範囲になります。
介護と仕事の距離を考えるときに整理したいのは、動かせる勤務の条件と、それがどこに書かれているかという2つの点です。
Relasic(株式会社LASSIC運営)|リモートワーク対応の転職支援
この記事のポイント
- 移動にかかる時間を先に測ってから、動かせる勤務の条件を書き出します
- 勤務地の指定・在宅の可否・勤務時間の幅・連絡の取り方は、書かれている場所が分かれます
- 確かめた内容は口頭で終えず、記録に残しておきます
1. 介護に使う時間は、まず移動から数えます
介護と仕事の距離を測るときにまず数えておきたいのは、実家や家族が住む場所へ向かうときにかかる移動の時間です。移動にかかる時間が分かると、動かせる勤務の条件とそうでない条件の線引きがしやすくなります。
最初に整理しておきたいのは介護の進め方ではなく、移動にかかる時間です。実家や家族が住む場所まで、どの交通手段でどれくらいの時間がかかるかを先に測っておくと、働き方のどこを動かせるかが見えやすくなります。
移動にかかる時間は、日帰りで往復できる範囲か、宿泊が必要な範囲かで、働き方への影響が変わります。日帰りで戻れる距離であれば、勤務時間の調整だけで対応できる場合もありますが、宿泊が必要な距離になると、勤務地や在宅の可否まで確かめる必要が出てきます。
誰が主に移動するか、どのくらいの頻度で向かうかは、家庭ごとに異なります。ここで担い手を一人に決めつける必要はなく、状況に応じて動く人が変わってもかまいません。まず測っておきたいのは、移動にかかる時間という事実そのものです。
移動の頻度も、時間と合わせて確かめておきたい要素です。月に1回程度向かう場合と、週末ごとに向かう場合とでは、勤務条件にどこまでの調整を求めるかが変わってきます。頻度が高いほど、単発の休みではなく、継続して動かせる条件が必要になります。
移動にかかる時間が分かったら、次に確かめるのは、その時間を踏まえて勤務のどこを動かせるかです。動かせる条件を書き出す作業は、介護休業を申し出る段取りとは別に進められます。休業を申し出るときの段取りや、確かめる書面については、別の記事で整理しています。
あわせて読みたい | 介護休業を使うときの段取り|見る書面
2. 動かせる勤務条件を、確かめる順に並べます
移動にかかる時間を確かめる作業は、4つの段に分けて進めると抜けが少なくなります。最初の段は、前の章で数えた移動にかかる時間です。
2段目は、動かせる勤務条件を書き出す作業です。勤務時間の始業・終業をずらせるか、休みをまとめて取れるかなど、就業規則を見ながら動かせる範囲を書き出しておきます。
3段目は、勤務地の指定や在宅で働ける日があるかどうかです。会社によって扱いが異なります。テレワークを導入している企業の割合は47.3%です*1(2024年8月末時点・総務省 通信利用動向調査)。働く場所を動かせる会社は一定数ありますが、条件は会社ごとに違います。この数字は制度の広がりを示すもので、介護と仕事の折り合いを決めるものではありません。在宅で働ける環境があるからといって、それだけで介護と仕事の距離の問題が解決するとは言えません。
在宅で働けるかどうかを含め、住む場所そのものに条件がつく在宅勤務の制度を持つ会社もあります。その条件については、別の記事で整理しています。
4段目は、確かめた内容を記録に残す段です。ここまでの3段を確かめただけで終わらせず、合意した範囲を残しておく理由は、後の章で扱います。
あわせて読みたい | 住む場所に条件がつく在宅|4つの書面
3. 連絡の取り方は、条件を確かめたあとに決まります
移動にかかる時間や勤務地・在宅の条件を確かめたら、次に整理しておきたいのは、離れている間の連絡の取り方です。家族に関わる連絡は、急に入ることもあれば、日程が決まっている通院や面会に合わせて入ることもあります。
勤務時間の中でどこまで電話や連絡に対応できるかは、職種や業務の内容によって異なります。会議が多い時間帯を避けて連絡を受けられるようにしておくなど、動かせる範囲を確かめておくと、急な連絡にも対応しやすくなります。
誰が主に連絡を受けるかは、家庭ごとに異なります。ここで役割を一人に決める必要はなく、連絡を受けられる人がそのときどきで変わってもかまいません。
連絡の取り方を自分の中だけで決めても、実際に急な連絡が入ったときに対応できるとは限りません。上長やチームに、どのタイミングで連絡が入る可能性があるかを伝えておくと、業務の調整もしやすくなります。
連絡の手段によっても、対応できる範囲は変わります。チャットで済む連絡と、電話でなければ伝わらない連絡を分けて考えておくと、動かせる範囲がより具体的になります。急ぎかどうかを最初に伝える約束にしておくだけでも、受け取る側の対応は変わります。
移動・勤務条件・連絡の取り方という3つを確かめたら、それぞれがどこに書かれているかを次の章で対応させます。
4. 確かめる条件と、書かれている場所を対応させます
働き方について確かめておきたい条件を、4つに分けて整理します。
どこに書かれているかも合わせて示すので、確認する順番の参考にできます。
確かめる条件/どこに書かれているか
| 確かめる条件 | どこに書かれているか |
|---|---|
| 勤務地の指定 | 雇用契約書や就業規則に、勤務地を変更できる範囲が定められています |
| 在宅の可否 | 社内の規程や上長への確認によって、在宅で働ける日数や条件が分かります |
| 勤務時間の幅 | 就業規則に、始業・終業や休憩の調整範囲が示されています |
| 連絡の取り方 | チームの運用ルールや上長との取り決めによって、対応できる範囲が変わります |
勤務地の指定、在宅の可否、勤務時間の幅、連絡の取り方という4つの条件を、どこで確かめられるかに対応させると、確認する順番が見えてきます。
勤務地の指定は、雇用契約書や就業規則に書かれています。転勤の有無や、転勤がある場合の範囲は、契約書を確認すればおおむね分かります。
在宅の可否は、就業規則だけでは分からない場合があります。実際にどの日数まで在宅で働けるかは、上長への確認や社内の規程を合わせて見る必要があります。
勤務時間の幅は、就業規則に始業・終業や休憩の調整範囲が示されています。始業時間を早める、休憩を分けて取るなど、動かせる範囲は会社によって異なります。
連絡の取り方は、就業規則には書かれていません。チームの運用ルールや、上長との取り決めによって決まる部分が大きく、口頭で確認しておく必要があります。
4つとも一度に確かめられなくてもかまいません。契約書と就業規則から始めて、上長への確認、チームとの取り決めという順に範囲を広げていく進め方でも、必要な情報は揃います。
確認した内容は、契約更新や規程の見直しの時期に変わることがあります。半年や1年に一度など、確認し直す機会をあらかじめ決めておくと、条件が変わったことに気づきやすくなります。
5. 確かめが進んだ位置を、目盛りで見ます
移動・勤務条件・連絡の取り方を確かめたら、それが全体のどこまで進んだかを目盛りで見ておきます。
目盛りの左端は、確かめ始めた直後の状態です。右端は、4つの条件を確かめ、会社と合意した状態です。今の位置がどのあたりかを見ておくと、次に何を確かめればよいかが分かりやすくなります。
在宅で働けるかどうかは、上長が確認したあとに、実際に承認される段があります。承認の位置がどこにあるかは、確かめる作業とは別に整理できます。
目盛りの位置は、会社の規程や状況によって前後します。今回の位置を数値で示すものではなく、次に確かめる範囲を把握するための目安として使います。
位置が右に近づくほど、確認する項目は減っていきます。ただし状況が変わればまた左に戻ることもあるため、今の位置を固定的に捉える必要はありません。
あわせて読みたい | 在宅の可否が決まる場所|承認の位置
6. 合意した内容を、3つの記録に残します
移動・勤務条件・在宅・連絡の取り方を確かめて、会社と合意したら、口頭で終えずに3つの記録に残しておきます。
記録に残す3点
- 合意した条件:勤務地・在宅・勤務時間・連絡の取り方のうち、合意した内容を書き出します
- 合意した日付:いつ、誰と合意したかを記録に残します
- 確認した相手:上長か人事か、確認した相手を明記します
3つを記録に残しておくと、状況が変わって条件を見直すときに、前回何を合意したかをすぐに確認できます。関わる状況は時期によって変わることがあるため、記録を残しておく意味は大きくなります。
記録の形式は、メールの文面でも、社内システムの申請履歴でもかまいません。口頭だけで済ませると、あとになって合意した内容を思い出せなくなる場合があります。
残す記録は、自分だけで抱える必要はありません。共有できる形にしておくと、状況を伝える相手が変わっても、同じ内容をもう一度説明する手間を減らせます。
記録を残す作業は、介護休業を申し出る書面とは別のものです。日々の働き方について合意した内容を、自分の手元にも残しておく作業になります。
状況が変わったときは、記録を見直したうえで、もう一度上長に確認する形で更新していきます。一度確かめた内容がそのまま固定されるわけではありません。
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 介護と仕事の距離を考えるとき、最初に何を確かめればよいですか。
A. 実家や家族が住む場所まで移動にかかる時間です。移動時間が分かると、動かせる勤務の条件とそうでない条件の線引きがしやすくなります。
Q2. 在宅で働ける日があれば、介護との折り合いはつきますか。
A. 在宅で働ける日があることと、介護と仕事の折り合いがつくことは別の話です。在宅の可否は確かめる条件の1つであり、それだけで解決するとは言えません。
Q3. 連絡の取り方は、誰が決めるものですか。
A. 上長やチームとの取り決めによって決まる部分が大きく、就業規則には書かれていないことが多くあります。動かせる範囲を確認しておくと、急な連絡にも対応しやすくなります。
Q4. 確かめた内容は、どこに記録として残しておけばよいですか。
A. 自分の手元に残しておくことが基本です。合意した条件・日付・確認した相手をメモやメールの文面で残しておくと、状況が変わったときに見直しやすくなります。
8. まとめ:介護と仕事の距離は、条件を確かめて縮めます
この記事の要点
- 移動にかかる時間を先に測ってから、動かせる勤務の条件を書き出します
- 勤務地の指定・在宅の可否・勤務時間の幅・連絡の取り方は、書かれている場所が分かれます
- 在宅で働ける日があることと、介護と仕事の折り合いがつくことは別の話です
- 確かめた内容は口頭で終えず、合意した条件・日付・相手を記録に残します
- 働き方の制度が広がっていても、確かめる作業そのものは変わりません
大切なのは、介護の進め方を決めることではなく、働き方のどこを動かせるかを確かめることです。移動にかかる時間を測り、勤務地・在宅・勤務時間・連絡の取り方を確かめたうえで、合意した内容を記録に残します。制度の扱いは案内と窓口で確かめ、働き方の条件は書面で確かめます。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
転職ノウハウ その他の記事
もっと読む 〉-
見込みと確定を同じ画面に出す求人で必要になる印
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) エンジニアの求人を見ていると、年収や採用予定人数のように動きそうな数字と、内定通知書に書かれてもう変わらない数字が、同じ画面に並んで出てきます。見込みの数字 […] -
廃番の品がある求人で3つの終了日をどう決めるか
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) 求人票に「廃番」「生産終了」という言葉が並ぶ仕事があります。担当するのは、資産管理や保守管理のシステムに関わるエンジニアです。作られなくなった品は、ある日に […] -
点検の周期がずれた求人|次をいつにするかを決める
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) 点検の周期は最初に決めた数字がそのまま残ります。3か月ごと、6か月ごとという間隔は求人票にも書かれますが、その間隔が実際にずれたあと、次の予定をどう数え直す […] -
色の使い分けだけに頼る求人|伝わらない場面が残る
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員) 求人票や社内の資料では、重要な部分を目立たせるために色を使う場面がよくあります。ですが目立たせ方が一種類しかないと、同じ画面を見ても同じ意味が伝わっていると […]