勤怠システムの求人|設定より先に決めごとが来る理由
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

勤怠システム導入の求人を見ると、設定や移行作業を思い浮かべます。実際に時間がかかるのは、社内で言葉になっていない運用を1つずつ文字にする作業です。直行直帰のときの打刻をどう扱うか、中抜けを認めるか、休憩を分けて取る人をどう記録するかは、就業のきまりに書かれていないことがあり、決める人を集めて決めてもらう必要があります。
情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍で、専門人材を新たに増やすことは簡単ではありません*1。勤怠システムの導入を任された担当者に求められるのは、設定の知識よりも、決める人をどう集めるかという進め方です。
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この記事のポイント
- 情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍です*1。人手を新たに増やすことが難しい分野だからこそ、今いる社員の時間を、規則を決める作業にどれだけ割けるかが導入の速さを決めます。
- 転職入職率は9.7%です*2。他社での経験を持つ人が加わるほど、最初に共通の規則を言葉にする作業も増えます。
- 一般労働者の賃金は45〜49歳で月377.9千円です*3。社内の複数部署と調整しながら物事を進める役割には、この年齢層の社員が就くこともあります。
1. 勤怠システムの導入で任されるのは、規則を決めてもらう調整です。
勤怠システム導入の求人で時間がかかるのは、設定ではなく、社内で言葉になっていない運用を決めてもらう調整です。厚生労働省の一般職業紹介状況では、情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍でした*1。専門人材を新たに増やすことが難しい分野だからこそ、今いる社員が決める人を集めて進めることになります。
勤怠システムを入れる求人に応募すると、打刻の設定やAPI連携といった技術の作業を思い浮かべます。実際に時間を取られるのは、直行直帰のときの打刻をどう扱うか、中抜けを認めるか、休憩を分けて取る人をどう記録するかといった、これまで言葉になっていなかった運用を1つずつ文字にする作業です。
これらは就業のきまりに書かれていないことが多く、人事・現場の管理職・情報システムの担当者を集めて、決めてもらう必要があります。設定画面には、決まった規則を入れることしかできません。規則そのものを作る工程は、システムの外側にあります。
つまり、この求人の難しさは設定の複雑さではなく、決める人が揃うかどうかにあります。求人票を読むときは、①推進する立場が人事側か情報システム側か、②いつまでに動かすと書かれているか、③既にある仕組みからの入れ替えか初めての導入かの3点を確認すると、任される作業の量が見えてきます。
決める作業は、直行直帰や中抜け以外の項目にも広がります。承認ルートを誰にするか、深夜勤務や休日出勤の申請をどう扱うか、拠点ごとに運用が違う場合にどちらのルールへ揃えるかなど、洗い出すほど項目が増えていきます。
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2. 導入までの時間は、3つの作業に分かれます。
勤怠システムを動かすまでの時間を、作業の種類で分けると、3つに分かれます。
最も時間がかかるのは「決めてもらう」部分です。直行直帰の打刻や中抜けの扱い、休憩の分割取得の記録方法など、これまで文字になっていなかった運用を、決める人を集めて1つずつ確定していきます。
決まった規則が揃ってから、「形にする」作業に移ります。ここで初めて、設定画面に規則を入力する工程が始まります。決める作業を終えていない段階で設定を始めると、あとから規則が変わるたびに設定をやり直すことになります。
「動かし始める」段階は、決めた規則で実際に打刻や申請を回してみる期間です。運用してみて初めて気づく例外が出ることもあり、ここでも決める作業に戻ることがあります。
3. 求人票で確かめたいのは、推進する立場と期限です。
勤怠システムの導入を求人票で見るときに確かめたい1つ目は、推進する立場です。人事部門が中心になっている求人では、休暇や勤務時間の規則そのものを決める権限を持つ人が主導するため、規則の確定は比較的進みやすくなります。情報システム部門が中心になっている求人では、規則を決める権限を持つ人事や現場の管理職を集める調整から始めることになります。
2つ目は、いつまでに動かすと書かれているかです。運用開始の時期が明記されている求人は、決める作業にかけられる期間も定まっています。時期が書かれていない求人は、決める人を集める調整そのものに時間がかかっている場合があります。
転職入職率は9.7%です*2。導入を任される担当者に、他社での経験を持つ人が加わる場合があります。前の会社での運用がそのまま通用するとは限らないため、加わった人数が増えるほど、最初に共通の規則を言葉にする作業も増えます。
決める人の数は、部署の数だけ増えるわけではありません。拠点や職種によって働き方が違う会社ほど、代表を集める人数が増え、意見をすり合わせる回数も増えます。求人票に部署や拠点の数までは書かれていないため、面談で聞いておくと見通しが立てやすくなります。
4. 入れ替えか初めての導入かで、決める量が変わります。
勤怠システムの導入が、既にある仕組みからの入れ替えか、初めての導入かによって、決める作業の量は変わります。求人票に書かれた背景を、表で比較します。
【表1】入れ替えと初めての導入で変わる、決める作業の量
| 確認する項目 | 入れ替えの求人 | 初めての導入の求人 |
|---|---|---|
| 推進する立場 | 情報システム部門が主導しやすい | 人事部門が主導しやすい |
| 決める人の集め方 | 既存の運用ルールを引き継げる部分がある | 各部署の代表を新たに集める必要がある |
| 期限の書き方 | 運用開始日が明記されやすい | 検討中と書かれる場合がある |
表のとおり、入れ替えの求人は既存の運用ルールを引き継げる部分があり、決める作業を絞り込みやすくなります。初めての導入の求人は、各部署の代表を新たに集めて、休憩や中抜けの扱いを1つずつ決める作業から始まります。入れ替えであっても、旧システムの設定が就業のきまりと食い違っている場合は、その部分だけ決め直す作業が発生します。
一般労働者の賃金は45〜49歳で月377.9千円です*3。導入を任される求人では、実務経験の年数を応募条件に挙げているものもあります。年数の条件は、社内の複数部署と調整しながら規則を決めてきた経験を求めていると読み取れます。
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5. 求人倍率の高さが、増員に頼れない事情を表します。
勤怠システムの導入で決める人を増やしたいと思っても、専門人材の採用そのものが簡単ではありません。求人倍率を確認します。
厚生労働省の一般職業紹介状況では、情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍でした*1。求人数が応募者数を大きく上回っており、新たに人を採用して決める作業を分担するという選択は、他の職種に比べて難しくなります。
導入を進める担当者を、外部から急に増やすことが難しい以上、今いる社員のなかで、決める人を集める進め方を考える必要があります。
求人票に、増員の予定が書かれているかどうかも確認しておきたい点です。増員の予定がない求人では、既存の体制のまま決める作業を進めることになります。
面談では、決める人を集める会議を何回ほど開いたかを聞いておくと、次に自分が入る場合にかかる時間の見積もりに役立ちます。回数が多いほど、部署間の意見がまとまりにくかったことを示しています。
6. 確認する3点を、求人票の記載から探します。
勤怠システムの導入を任される求人票を読むときに、確認しておきたい3点を整理します。
求人票で確認する3点
- 推進する立場:人事部門と情報システム部門のどちらが主導しているかを、求人票の記載から確認します。
- 期限の書き方:運用開始の時期が明記されているか、検討中と書かれているかを確認します。
- 入れ替えか初めての導入か:既存の仕組みからの入れ替えか、初めての導入かを確認します。初めての導入ほど、決めることが増え、期間も伸びます。
- 運用資料の有無:就業規則や運用マニュアルが整理されているかを確認します。整理されていない場合、決める前に現状を洗い出す作業が増えます。
3点はどれも、設定作業そのものではありません。決める人が揃うまでの時間を、求人票から読み取るための材料です。
初めての導入の求人ほど、決める人を集める工程に時間がかかります。応募前にこの3点を確認しておくと、入社後に想定より時間を取られる場面を減らせます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 勤怠システムの導入を任された場合、最初に何をすればよいか。
A. 最初に、直行直帰の打刻や中抜けの扱いなど、就業のきまりに書かれていない運用を洗い出します。決める人を集める場を先に用意してから、設定作業に進むと手戻りが減ります。
Q2. 人事部門と情報システム部門のどちらが主導する求人を選べばよいか。
A. どちらが向いているかは、これまでの経験によって変わります。規則を決める調整に関わってきた人であれば人事部門主導の求人、システムの仕組みづくりに関わってきた人であれば情報システム部門主導の求人が、経験を活かしやすくなります。
Q3. 求人票に運用開始の時期が書かれていない場合、どう受け止めればよいか。
A. 時期が書かれていない求人は、決める人を集める調整がまだ進んでいない場合があります。面談で、決める作業の進み具合を確認しておくと、入社後の見通しが立てやすくなります。
Q4. 初めての導入と入れ替えでは、どちらが任される作業が多いか。
A. 初めての導入のほうが、決める作業は多くなります。就業のきまりに書かれていない運用を、部署ごとに集めて確定する工程が、入れ替えの求人より多く発生します。
Q5. 従業員数が少ない会社でも、決める作業の量は変わらないか。
A. 従業員数が少ない会社では、決める人の数自体は少なくなります。一方で、就業規則や運用マニュアルが整理されていない場合があり、決める前に現状を洗い出す作業が増えることがあります。
8. まとめ:任されるのは設定ではなく、合意形成です。
この記事の要点
- 勤怠システムの導入で時間がかかるのは設定ではなく、社内で言葉になっていない運用を決めてもらう調整です。
- 求人票では、①推進する立場、②期限の書き方、③入れ替えか初めての導入かの3点を確認します。
- 情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍で、増員に頼れない分だけ、今いる社員で決める人を集める必要があります*1。
- 転職入職率は9.7%で、他社での経験を持つ人が加わるほど、最初に共通の規則を言葉にする作業も増えます*2。
導入を任された求人に応募する前に、決める人が揃っているかどうかを求人票から読み取っておくと、入社後に想定より時間を取られる場面を減らせます。次の一歩は、推進する立場と期限の書き方を、気になる求人で確かめることです。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年12月分)について」(2026年公表)
*2 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(2025年公表)
*3 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
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