新規開発の比率が高い求人で数字の数え方を解説します
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

求人票に「新規開発が中心」と書かれていても、その言葉が何を数えているかまでは書かれていません。期間で数えているのか、扱う仕組みの数で数えているのか、それとも部署や会社全体の実績で数えているのかによって、同じ言葉でも指しているものは変わります。
IPA「DX動向2026」によれば、DX推進人材が『大幅に不足』と回答した企業は50.1%です*1。人材確保を急ぐ場面では、比率という言葉が求人票の目立つ位置に置かれることがあります。だからこそ、その言葉が何を数えたものかを、自分で確かめておく必要があります。
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この記事のポイント
- 「新規開発の比率」は、期間・扱う仕組みの数・部署や会社全体の実績のどれで数えたかによって、同じ言葉でも指すものが変わります。
- 一般労働者の賃金は50〜54歳で月388.8千円です*2。年収の水準だけでなく、配属予定のチームが直近半年に何を作ったかを確認することが、比率という数字の裏付けになります。
- 厚生労働省の調査では、転職して賃金が『増加』した割合は40.5%です*3。比率の意味を確かめてから応募先を選ぶことが、この数字に近づく土台になります。
1. 求人票の「新規開発」は、数え方で意味が変わります。
求人票に書かれた「新規開発の比率」は、比率そのものではなく、直近半年に何を作ったかを聞くことで初めて意味が分かります。数え方には、少なくとも3つあります。1年のうちの期間で数える方法、扱う仕組みの数で数える方法、そして部署や会社全体の実績で数える方法です。同じ比率でも、どの数え方を使ったかによって、指しているものは変わります。
会社としては新しい仕組みを多く手がけていても、実際に入るチームは既にある仕組みの手当てが中心という場合があります。会社全体の実績を、配属先の実績のように示す求人票では、この差が見えにくくなります。
既存の仕組みに機能を1つ足す作業を新規開発と呼ぶかどうかも、会社によって分かれます。呼び方の違いを知らずに比率だけを比べると、同じ数字でも中身が違う求人を同じ基準で並べてしまうことになります。
「新規開発の比率を教えてください」と聞くと、会社側が答えやすい数え方でそのまま返ってくることがあります。「直近半年で、具体的にどんな仕組みを作りましたか」と仕事の名前を尋ねる形に変えると、数え方の違いに関わらず同じ土台で比べられる答えが返ってきます。
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2. 同じ比率でも、内訳を書き出すと違いが見えます。
上の図は、新規開発が中心という求人票を仮定した内訳の一例です。実際の会社を指すものではなく、直近半年の仕事を書き出すとどう分かれるかを示しています。
新しく作った仕組みが30%、既存の仕組みに機能を追加した仕事が50%、保守や不具合対応が20%だとすれば、比率という言葉には、追加や保守までが含まれている可能性があります。
内訳の数字そのものより、直近半年に何を作ったか、仕事の名前が挙がるかどうかが確認のポイントになります。「新規開発」という言葉だけでは、この内訳までは分かりません。
面談で「直近半年に新しく作ったものを1つ、具体的に教えてください」と聞くと、その仕事が内訳のどの部分に当たるのかが見えてきます。比率という数字のまま話を終わらせないことが、確認の起点になります。
3. 「作り足し」も、新規に数えられることがあります。
既存の仕組みに機能を1つ足す作業を、新規開発として数える会社もあります。すでに動いているサービスへの追加なのか、まったく新しい仕組みを作る仕事なのかは、名称だけでは区別できません。
求人票に書かれた比率は、会社が採用した数え方をそのまま反映しています。数え方を尋ねずに比率だけを比較すると、機能追加が中心の求人と、まったく新しい仕組みを作る求人を、同じ基準で並べてしまいます。
「新規開発が中心」と書かれた求人票でも、直近半年に手がけた仕事を尋ねると、機能追加や保守が含まれていることが分かる場合があります。仕事の名前が具体的に挙がるかどうかで、数え方の違いが見えてきます。
既存の仕組みを土台から作り直す、いわゆるリニューアルの仕事を新規開発と呼ぶ会社もあります。ゼロから新しく作るわけではなくても、仕組みそのものが大きく変わるため、社内では新規の仕事として扱われることがあります。呼び方は会社の判断であり、正しい・誤りの問題ではありません。
求人票に書かれた比率を、嘘だと決めつける必要はありません。会社ごとに数え方の基準が違うだけで、その基準を教えてもらえれば、比率という数字を自分の判断に落とし込めます。基準を尋ねる質問は、求人票を疑うことではなく、内容を正しく理解するための確認です。
4. 3つの数え方を、表で比べます。
求人票の「新規開発」という言葉を、3つの数え方に分けて比べます。同じ比率でも、何を数えているかで見え方が変わります。
【表1】比率の数え方の違い(求人票の言葉を例に)
| 数え方 | 何を数えているか | 求人票での見え方 | 確認のしかた |
|---|---|---|---|
| 期間で数える | 1年のうち新しく作る期間の割合 | 「新規の期間が中心」 | 直近半年のうち、保守に当てた期間を聞く |
| 対象の数で数える | 触る仕組みのうち、新しいものの数の割合 | 「システムの大半が新規」 | 直近半年で作った仕組みの名前を聞く |
| 部署の実績で数える | 会社全体の実績を、配属先の実績のように示す | 「会社としての比率が高い」 | 配属予定のチームが直近半年に作ったものを聞く |
表の3つの数え方は、どれも間違いではありません。書かれた比率がどの数え方を指しているかが分からないだけです。
確認のしかたに共通するのは、比率ではなく、直近半年に何を作ったかを聞くことです。仕事の名前が挙がれば、数え方の違いも見えてきます。
対象の数で数える方法を確認したいときは、「直近半年で触ったシステムはいくつあり、そのうち新しく作ったものは何個ですか」と、数そのものを聞く方法もあります。比率よりも、数のほうが答えの粒度が揃いやすくなります。
5. 3つの層に分けると、指す範囲がずれます。
求人票に書かれた新規開発の比率が、会社全体・部署・自分が入るチームのどの層を指しているかで、実感は変わります。
会社全体としては新しい仕組みを多く手がけていても、配属予定のチームは既にある仕組みの手当てが中心という場合があります。比率が会社全体の実績を示しているのか、チームの実績を示しているのかは、聞かなければ分かりません。
層を分けて考えると、聞くべき相手も見えてきます。会社全体の方針は面接官の説明で分かりますが、チームの実際は、そこに配属される人が直近半年に何を作ったかでしか分かりません。
会社説明会で語られる実績は、多くの場合、全社のプロジェクトを合算した数字です。配属予定のチームがその一部をどれだけ担っているとは限らないため、層を分けて聞くことが必要になります。
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6. 確認しておきたい点を整理します。
求人票の新規開発という比率を確認するとき、聞き方によって得られる答えの具体さが変わります。
比率の意味を確かめるための5点
- 直近半年の仕事:新規に数えられた仕事の名前を、具体的に聞きます。
- 数える範囲:会社全体の実績か、配属予定のチームの実績かを区別して聞きます。
- 作り足しの扱い:既存の仕組みに機能を足す作業が、新規に数えられているかを確認します。
- 比率の対象:期間で数えているのか、扱う仕組みの数で数えているのかを確認します。
- 呼び方の違い:リニューアルや作り直しの仕事が、新規に数えられているかも合わせて聞きます。
5点はどれも、比率という数字ではなく、仕事の名前や範囲を尋ねる質問です。厚生労働省の雇用動向調査では、転職して賃金が『増加』した割合は40.5%でした*3。比率の意味を確かめてから応募先を選ぶことは、この数字に近づくための土台になります。
仕事の名前が挙がらない場合、比率という言葉だけが独り歩きしている可能性があります。聞いても具体的な仕事が出てこないときは、それ自体が確認すべき点になります。
5点を一度に聞く必要はありません。面談の終盤に「直近半年で一番手間がかかった仕事を教えてください」と聞くだけでも、新規の仕事と保守のどちらが中心だったかが伝わってくることがあります。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 求人票の「新規開発の比率」は、何を根拠に書かれているか。
A. 会社によって異なります。1年のうちの期間で数える場合もあれば、扱う仕組みの数や、部署・会社全体の実績で数える場合もあります。数え方を求人票に書く会社は多くありません。
Q2. 「新規開発が多い」と書かれた求人票でも、実際は機能追加が中心ということはあるか。
A. あります。既存の仕組みに機能を1つ足す作業を新規に数える会社もあるため、直近半年に何を作ったかを聞かないと、実際の内容までは分かりません。
Q3. 会社全体の実績と、配属予定のチームの実績は、どう見分ければよいか。
A. 面接や説明会では会社全体の方針を聞けますが、チームの実際は、配属予定のチームが直近半年に何を作ったかを聞かなければ分かりません。会社全体の実績を、配属先の実績のように答える場面もあるため、対象を明確にして聞くことがポイントです。
Q4. 経験が長いエンジニアほど、比率について確認しておくべきことはあるか。
A. あります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、一般労働者の賃金は50〜54歳で月388.8千円でした*2。年収の水準だけでなく、配属予定のチームで直近半年に何を作ったかを併せて確認すると、比率という数字だけで判断せずに済みます。
Q5. 比率の内訳を面談で質問すると、印象が悪くなることはあるか。
A. 具体的な仕事の内容を尋ねる質問は、不自然なものではありません。求人票の言葉をそのまま受け取らず、直近半年に何を作ったかを確認する姿勢は、入社後に感じる期待値のずれを防ぐことにつながります。
8. まとめ:比率は、数え方を確かめてから読みます。
この記事の要点
- 「新規開発の比率」は、期間・扱う仕組みの数・部署や会社全体の実績のどれで数えたかによって、指すものが変わります。
- IPA調査では、DX推進人材が『大幅に不足』と回答した企業が50.1%でした*1。人材確保を背景に、比率が求人票の目立つ位置に置かれる場合があります。
- 一般労働者の賃金は50〜54歳で月388.8千円です*2。年収の水準だけでなく、配属予定のチームが直近半年に何を作ったかを確認することが判断の土台になります。
- 厚生労働省の調査では、転職して賃金が『増加』した割合は40.5%です*3。比率の意味を確かめてから応募先を選ぶことが、この数字に近づく手段になります。
比率という数字だけで応募先を決める前に、直近半年に何を作ったかを聞いてみましょう。仕事の名前が挙がれば、その求人票の比率が、何を数えたものかが見えてきます。書かれた数字を疑うのではなく、数え方を知ったうえで、自分の判断に置き直すことが次の一歩になります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 IPA「DX動向2026」(2026年公表)
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
*3 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(2025年公表)
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