退職証明書を発行してもらえない?請求の仕方と労働基準監督署

転職先や国民健康保険の窓口から退職証明書を求められたのに、前の会社に頼んでも出してもらえないことがあります。返事が来ないまま提出の期限が近づき、どうすればよいか分からなくなる人もいます。
退職した人が請求すれば、会社は退職証明書をすぐに作って渡す義務を負います*1*2。請求しても交付されないときは、労働基準監督署に相談できます*1。交付しないことは労働基準法第22条の違反で、30万円以下の罰金が定められています*2。まずは書面で、記載してほしい事項を挙げて請求し直してください。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 会社は、退職した人から退職証明書を請求されたら、遅滞なく交付しなければなりません*2。
- 請求しても交付されない場合は、労働基準監督署に相談できます*1。第22条に違反すると30万円以下の罰金が定められています*2。
- 離職票は退職証明書の代わりにならず、離職票を受け取っていても退職証明書は別に請求できます*1。
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1. 退職証明書は請求すれば会社が遅滞なく出す義務がある
退職証明書は、請求すれば会社が遅滞なく交付しなければならない書類です。出してもらえないときは、労働基準監督署に相談できます*1。
交付の義務は、労働基準法第22条第1項に書かれています*2。対象は、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由の5つです*2。労働者が退職の場合にこれらの証明書を請求したら、使用者はすぐに交付することが求められます*2。会社に「出すかどうか」を選ぶ余地はなく、請求された事項について書いて渡す義務があります。
証明書の用途は、労働者に委ねられているとされています*1。何に使うのかを会社に説明しなくても、請求はできます*1。転職先に出す、国民健康保険の手続きに使うなど、どんな使い道でも交付の義務は変わりません。
それでも出してもらえないなら、労働基準監督署に相談します*1。第22条の第1項から第3項に違反した者には、第120条で30万円以下の罰金が定められています*2。
この証明書が求められるのは、転職先の入社手続きや、国民健康保険への切り替えなど、次の手続きの入口であることが多いでしょう。出してもらえないと次の手続きも止まるので、困ったと感じた時点で早めに動くほうが、全体の遅れは小さくなります。
あわせて読みたい | 退職証明書の書き方|厚生労働省のモデル様式と退職の事由
2. 退職証明書の交付にかかわる決まり
この証明書について、会社の義務と労働者が請求できることを並べました。請求するときや、相談するときに手元に置いておくと話が早く進みます。
退職証明書の交付にかかわる決まり
| 決まり | 中身 |
|---|---|
| 交付の義務 | 請求されたら遅滞なく交付する(労働基準法第22条第1項)*2 |
| 解雇予告の期間中 | 解雇の予告から退職の日までの間も、解雇の理由の証明書を請求できる(第22条第2項)*2 |
| 書かない事項 | 労働者が請求しない事項は記入してはならない(第22条第3項)*2 |
| 請求の回数と時期 | 回数に制限はない。退職と同時でなくてもよい*1 |
| 請求できる期間 | 請求権の時効は退職のときから2年(第115条)*1*2 |
| 違反したとき | 30万円以下の罰金(第120条)*2 |
解雇を予告された場合は、退職の日を待たずに、予告された日から退職の日までの間に解雇の理由の証明書を請求できます*2。解雇の理由に納得がいかないときは、この期間のうちに請求しておくと、会社がどんな理由で解雇しようとしているのかが書面で分かります。
請求できる期間は、退職のときから2年です*1*2。2年を過ぎてから請求すると、交付を受けられないことがあります*1。転職先が決まってから必要になることもあるので、退職の前後で一度請求しておくと安心です。
証明書に書けることにも決まりがあります。会社が第三者と示し合わせて、労働者の再就職を妨げる目的で、証明書に秘密の記号を書き入れることは禁止されています*2。受け取った証明書に、頼んでいない記号や書き込みがあったら、そのままにせず会社に理由を聞いてください。
3. 会社の返事ごとに次にすること
出してもらえない理由は、会社の返事によって違います。返事の内容ごとに、次にすることを分けておくと迷いません。
担当者が忙しくて後回しになっている場合は、メールで改めて頼み直します。「〇月〇日までに郵送でお送りください」と期限と送り方を具体的に書けば、会社も段取りを組みやすいはずです。
「離職票を渡したので足りる」と言われたときは、離職票は公共職業安定所に出す書類で、退職時の証明書の代わりにはならないとされていることを伝えます*1。離職票を受け取っていても、退職証明書は別に請求できます*1。
はっきり「出さない」と言われたら、労働基準監督署に相談します*1。請求したメールや書面の写しと、会社の返事が分かるものを持っていけば、事情をそのまま説明できます。
返事がないまま日がたつこともあります。区切った期限を過ぎても連絡がなければ、もう一度だけ同じ内容を送り、それでも届かなければ監督署への相談に進む、と順番を決めておくと迷わずに済みます。
4. 請求するときの書き方と送り方
請求は、口頭だけでなく、日付が残るメールや書面で行います。宛先は退職した会社の人事担当者や総務の窓口にし、件名は「退職証明書の交付のお願い」のように用件が分かる形にします。
本文には、氏名、在籍していた部署、退職日、記載してほしい事項、受け取りの方法を書きます。記載してほしい事項は、第22条に並ぶ5つの中から選びます*2。会社は請求していない事項を書いてはならないので*2、必要な事項だけを挙げておけば、余計な事項が書かれた証明書が届く心配はありません。
本文の例を挙げます。「〇年〇月〇日付けで退職した〇〇です。退職証明書の交付をお願いします。記載事項は、使用期間と退職の事由です。〇月〇日までに、下記の住所へ郵送でお送りください。」このように、誰が、何を、いつまでに、どうやって受け取りたいのかを1通にまとめておきます。
郵送で頼むなら、返信用の封筒を同封すると早く届くことがあります。書面で送るときは、送った日と中身が後から分かるよう、写しを手元に残しておきます。
退職の前に請求しておく方法もあります。請求は退職と同時でなくてもよいとされています*1。それでも、退職の手続きで人事担当者とやり取りしている時期に一緒に頼んでおけば、退職後に連絡がつきにくくなる心配がありません。最終出社日までに、退職日付で作ってもらえるかを聞いておくとよいでしょう。
5. 労働基準監督署に相談するときの準備
労働基準監督署には、会社に労働基準法違反の事実がある場合に、労働者がその事実を申告できる仕組みがあります*2。証明書を請求したのに交付されないことは、第22条の違反に当たります*2。
相談に行く前に、退職日が分かる書類、送った依頼文の控え、会社の返事、記載を頼んだ事項をそろえます。いつ、誰に、何を頼んだのかが分かれば、監督署の担当者も状況をつかみやすくなります。
監督署は、会社の所在地を受け持つところに相談します。リモートワークで本社から離れた場所で働いていた人も、会社の所在地が基準になるので、どの監督署かは事前に調べておきます。電話で先に相談の内容を伝えておけば、窓口での説明は短くて済むはずです。
会社は、労働者が申告をしたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないとされています*2。すでに退職したあとでも、申告したことで会社と気まずくなるのを心配する人はいますが、申告そのものは法律で認められた手段です。
相談したあとは、監督署から会社に確認や指導が入ることがあります。その結果、証明書が届いたら、請求した事項がそろっているかを読み、抜けている事項があれば同じ手順でもう一度頼みます。
6. 提出の期限に間に合わないときの動き方
転職先や国民健康保険の窓口に出す期限が迫っているのに証明書が届かないときは、まず提出先に事情を伝えます。前の会社に請求中で、届きしだい出すと伝えれば、期限を延ばしてもらえることもあります。
提出先が退職日を知りたいだけなら、ほかの書類で代わりにできないかを聞きます。この証明書でなければならない理由がなければ、別の書類を受け付けてもらえる場合があります。何が使えるかは提出先によって違うので、窓口で直接聞いてください。
転職先の入社手続きで求められた場合は、入社の日までに出せばよいのか、入社後でもよいのかを聞いておくと、気持ちに余裕が生まれます。入社日が決まっているなら、そこから逆に数えて、前の会社に頼むメールを送る日を決めてください。
代わりの書類で手続きを進めた場合でも、前の会社への請求は取り下げずに続けて構いません。請求できる期間は退職から2年あり*1、あとで必要になったときにも使えるからです。
あわせて読みたい | 退職証明書と離職票の違い|出す人・使う場面・もらい方
7. よくある質問
Q1. 会社は退職証明書を出さなくてもいいのですか?
A. 出さなければなりません。請求を受けた会社には交付の義務があり、後回しにすることも認められていません*2。
Q2. 離職票をもらっていれば退職証明書は要りませんか?
A. 2つは別の書類です。離職票はその代わりにならず、別に請求できます*1。
Q3. 何に使うのかを会社に言わないといけませんか?
A. 言わなくても請求できます。用途は労働者に委ねられています*1。
Q4. 退職して1年たっていても請求できますか?
A. できます。請求権の時効は退職のときから2年です*1*2。1年たっていれば、残りはおよそ1年なので、必要になったら早めに頼んでください。
Q5. 労働基準監督署に相談したら会社に知られて不利益を受けませんか?
A. 労働基準法第104条は、申告を理由にした不利益な扱いを禁じています*2。
Q6. 退職証明書は郵送で送ってもらえますか?
A. 郵送か手渡しかは会社と相談して決めます。請求のメールに郵送先の住所を書いておけば、手渡しのために会社へ出向かなくて済みます。
Q7. 解雇を予告されています退職の前でも理由を書面でもらえますか?
A. もらえます。解雇の予告から退職の日までの間に、解雇の理由の証明書を請求できます*2。
8. まとめ:退職証明書が出ないときは書面で請求し直して監督署へ
この記事のまとめ
- 退職証明書は、請求されたら会社が遅滞なく交付しなければならない*2
- 交付しないことは第22条の違反で、30万円以下の罰金が定められている*2
- 離職票は代わりにならず、別に請求できる*1
- 請求の回数に制限はなく、時効は退職から2年*1
- 出してもらえないときは、請求の記録を持って労働基準監督署に相談する*1
今日のうちに、必要な事項と受け取りたい日付を書いたメールを会社に送ってください。期限までに返事がなければ、そのメールの写しを持って監督署の窓口に行きましょう。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 自己都合の退職の際、退職勤務証明書を請求できますか?方法は?(確かめよう労働条件・厚生労働省)
*2 労働基準法 第22条・第104条・第115条・第120条(e-Gov法令検索)
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