在籍確認の電話は転職でされる?本人の同意と個人情報の決まり

内定の連絡と一緒に、前の会社に在籍確認の電話をすることがあると言われた。辞めた会社に連絡されるのは気が進まないし、いま勤めている会社に電話されたら転職活動が知られてしまう。そう心配している人もいます。
在籍確認の電話は転職でされるかというと、内定先が求職者の情報を集めるのは、本人から直接か本人の同意の下で行うのが原則です*3。前の会社の側も、在籍の記録が個人データであれば、本人の同意などが無い限り、第三者の問い合わせには答えられないとされています*1。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 退職した従業者の在籍状況などが個人データになっている場合、問い合わせに答えることは第三者提供に当たり、例外を除いて本人の同意が要ります*1。
- 労働者の募集を行う者は、業務の目的に必要な範囲で、目的を明らかにして求職者の個人情報を集めなければならないと職業安定法第5条の5は定めています*2。
- 退職した人は、使用期間や業務の種類、地位、賃金、退職の事由を書いた退職証明書を前の会社に請求できます*4。
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1. 在籍確認の電話は本人の同意を得て行うのが原則
在籍確認は、本人の同意を得て行うのが原則です。前の会社も、本人の同意などが無ければ、在籍していたかの問い合わせに答えられないとされています*1*3。
在籍確認とは、応募した人が本当にその会社に勤めていたか、または勤めているかを、内定先などが調べることです。電話で前の会社に問い合わせる形がよく知られていますが、実はこれには個人情報の決まりが関わります。
前の会社の側について、個人情報保護委員会は、退職した人の在籍状況や勤務状況が個人データになっている場合を取り上げています*1。その場合、問い合わせに答えることは個人データの第三者提供に当たり、本人の同意などの例外を除いて伝えられません*1。
内定先の側について、職業安定法第5条の5は、労働者を募集する会社が求職者の個人情報を集めるときの決まりを置いています*2。業務の目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして集めることが求められ、本人の同意があるときなどは別とされています*2。
さらに、職業安定法に基づく指針は、個人情報の収集は本人から直接か、本人の同意の下で行うことが原則としています*3。この電話は、本人が知らないうちに行われるものではなく、同意を得たうえで行うのが筋だということです。
確認の話は、内定のあとに出ることもあれば、選考の途中で出ることもあります。どの時点で言われても、同意を得て行うという原則は変わらないので、言われた時点で中身を聞いてから答えて構いません。
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2. 在籍確認に関わる会社と本人の決まり
在籍確認には、内定先、前の会社、本人の3者が関わります。それぞれに当てはまる決まりを並べました。
在籍確認に関わる決まり
| 立場 | 当てはまる決まり |
|---|---|
| 内定先(募集を行う会社) | 必要な範囲で目的を明らかにして求職者の情報を集める*2 |
| 内定先(募集を行う会社) | 本人から直接か同意の下で集めるのが原則*3 |
| 前の会社 | 個人データの在籍状況は同意などが無い限り答えられない*1 |
| 本人 | 退職証明書を請求して自分で示せる*4 |
表のとおり、在籍確認は、内定先が勝手に電話をかけ、前の会社が自由に答えるという仕組みにはなっていません。どちらの側にも、本人の同意が関わる決まりがあります*1*3。
職業安定法第5条の5の決まりは、求人を出す会社だけでなく、職業紹介事業者なども対象にしています*2。集めた情報は、集めた目的の範囲で保管して使うこと、適正に管理するための措置をとることも求められています*2。
ただし、確認に応じるよう求められた場合に、必ず受けなければならないという決まりもありません。受けるかどうかは本人が決められるので、次の見出しで、そのときの考え方を見ていきます。
3. 在籍確認への同意を求められたときの分かれ道
内定先から在籍確認をしたいと言われたときは、何を聞きたいのかと、連絡先がどこかで、とれる方法が変わります。
同意してよいと考えるなら、どの会社の誰に連絡するのか、何を聞くのかを先に内定先と決めておきます。在籍していた期間だけなのか、仕事の中身まで聞くのかで、前の会社の答え方も変わります。
電話を避けたいなら、前の会社に退職証明書を出してもらい、それを内定先に見せる方法があります*4。退職証明書の中身と請求の仕方は、このあとの見出しで説明します。
まだ在職中で、いまの会社に連絡されると困る場合は、そのことを内定先にはっきり伝えましょう。在職中の会社への確認だけを扱った公的な資料は今回見つかりませんでしたが、内定先が本人の同意の下で情報を集めるという原則は変わりません*3。
いまの会社に知られたくない理由を、内定先に細かく説明する必要はありません。退職の手続きが終わるまでは連絡を控えてほしい、と時期を区切って伝えるだけでも、内定先は事情を受け止めやすくなります。
源泉徴収票や給与明細、雇用契約書など、勤めていたことが分かる書類を代わりに見せる方法を内定先と相談するのも1つの手です。どの書類なら受け付けるかは内定先によって違うので、内定の連絡を受けたら早めに聞いておきましょう。
4. 内定先に在籍確認を頼まれたときに聞いておくこと
在籍確認の話が出たら、まず内定先に、何のために、どこへ、何を聞くのかを教えてもらいましょう。職業安定法第5条の5は、求職者の情報を集めるときに目的を明らかにするよう求めています*2。目的が分かれば、同意するかどうかも決めやすくなります。
聞く相手が前の会社の人事部なのか、元の上司なのかでも、答えられる中身は変わります。前の会社が答えられるのは、本人が同意した範囲に限られるので、在籍期間だけを知りたいのか、仕事ぶりまで聞きたいのかを内定先と決めておきましょう*1。
同意するなら、前の会社にも、内定先から問い合わせがあることを事前に伝えておくと話が早く進みます。前の会社の窓口が、同意の有無を知らないまま問い合わせを受けると、答えを控えることがあるためです。
確認への同意を、書面で求められることもあります。署名する前に、問い合わせる先の会社名と、聞く項目が書かれているかを読みましょう。項目が書かれていない書面に署名すると、どこまで答えてよいかを前の会社が判断しにくくなります。
内定先とのやり取りは、電話だけで済ませずに、メールでも残しておくと安心です。誰に何を聞くことに同意したのかが後から分かれば、思っていた以上のことを聞かれたときにも説明しやすくなります。
5. 前の会社に在籍確認の電話がかかったときの扱い
前の会社に電話がかかってきた場合、答えられるかどうかは、その情報の扱いで変わります。在籍の記録が個人データとして整理されているなら、答えることは第三者提供に当たります*1。
個人データとは、名簿のように検索できる形で整理された個人情報のことです。社員の在籍の記録を人事のデータとして管理している会社なら、問い合わせに答えるには、本人の同意か、法律で決められた例外に当たることが要ります*1。
前の会社の担当者が、本人の同意を確認できないとして答えを控えることもあります。その場合でも、本人にとって不利になる話ではありません。内定先には、同意の取り方や代わりの書類について、改めて内定先と相談するとよいでしょう。
反対に、本人が知らないうちに前の会社が問い合わせに答えていた場合は、前の会社の個人情報の扱いが問題になることがあります。気になるときは、前の会社の人事の担当者にどのような問い合わせがあったかを聞いてみてください。
6. 在籍確認の代わりに使える退職証明書
退職証明書は、在籍確認の電話の代わりとして使いやすい書面です。退職した人が請求すれば、前の会社は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法第22条)*4。
請求できるのは、使用期間、業務の種類、その事業での地位、賃金、退職の事由の5つです*4。退職の事由が解雇のときは、その理由も含まれます*4。
解雇を予告された人は、予告された日から退職の日までの間にも、解雇の理由を書いた証明書を請求できます*4。この場合も、会社はすぐに交付する決まりです*4。
退職証明書には、本人が請求していない事項を書いてはならないと定められています*4。たとえば、使用期間と業務の種類だけを書いてほしいと頼めば、退職の事由や賃金は書かれません。内定先に見せたい中身だけを選んで請求できます。
また、会社がほかの会社とあらかじめ相談して、労働者の就業を妨げる目的で連絡をすることは禁じられています*4。国籍や信条、社会的身分、労働組合の活動についての連絡や、証明書に秘密の記号を書くことがこれに当たります*4。
退職証明書の請求は、退職したあとでもできます。いつ、どの中身で請求したかを残しておくために、メールや書面で頼んでおくと、あとで手続きを振り返りやすくなります。
あわせて読みたい | 退職証明書の書き方|厚生労働省のモデル様式と退職の事由
7. よくある質問
Q1. 在籍確認の電話は勝手にされるものですか?
A. 指針は、求職者の情報は本人から集めるか、本人が同意したうえで集めるのを原則としています*3。
Q2. 前の会社は在籍していたことを答えてしまいますか?
A. 人事のデータとして管理されている記録なら、同意などが無い限り答えられません*1。
Q3. 在籍確認を断ることはできますか?
A. 断ることもできます。その場合は、退職証明書などで経歴を示す方法を内定先と話し合いましょう*4。
Q4. 退職証明書には何が書かれますか?
A. 5つの項目のうち、本人が請求したものだけが書かれます*4。
Q5. 在職中の会社に電話されることはありますか?
A. 今回の公的資料には直接の記述がありませんが、本人の同意の下で集める原則は同じです*3。困るなら内定先にその旨を伝えます。
Q6. 転職エージェントを通した応募でも同じ決まりですか?
A. 同じです。職業安定法第5条の5は、職業紹介事業者も対象にしています*2。
8. まとめ:在籍確認の電話は本人の同意が前提
この記事のまとめ
- 内定先は、求職者の情報を本人の同意を得て集めるのが原則*3
- 前の会社は、在籍状況が個人データなら同意などが無ければ答えられない*1
- 募集する会社は、必要な範囲で目的を明らかにして情報を集める*2
- 電話の代わりに退職証明書を請求して示せる*4
- 退職証明書には、本人が請求していない事項は書かれない*4
在籍確認の電話を求められたら、連絡先と聞く中身を先に聞き、電話が困るなら退職証明書などの書面で代えられないかを内定先に相談してください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 Q&A A7-12 退職した従業者に関する在籍確認や勤務状況等についての問合せ(個人情報保護委員会)
*2 職業安定法 第5条の5(厚生労働省 法令等データベース)
*3 求職者等の個人情報の取扱いについて(職業安定法に基づく指針の抜粋・群馬労働局)
*4 労働基準法 第22条(厚生労働省 法令等データベース)
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