昇給はいつから給与に反映される?昇給月と支給月の違い

4月から給与が上がると言われたのに、4月の給与明細を見ても金額が変わっていない。取り消されたのか、反映が遅れているだけなのか分からず、人事に聞きにくいまま次の給与日を待っている人もいます。
昇給はいつから給与に反映されるかは、就業規則に書かれた引き上げの時期と、賃金の締め日・支払日で決まります*1*3。締め日の翌月に支払う会社では、新しい額で計算した給与が翌月に振り込まれるので、上がった額が明細に出るのは昇給月の翌月です*3。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 労働基準法第89条は、賃金の締切りと支払の時期、昇給に関する事項を、就業規則に必ず書く事項としています*1。
- 労働条件を書面で示す決まりのうち、昇給に関する事項は、書面の交付が求められる事項から除かれています*2。
- 令和7年に1人平均賃金を引き上げた・引き上げる企業は91.5%で、賃金の改定を1〜8月のみに行った企業は78.2%でした*4。
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1. 昇給がいつから給与に反映されるかは締め日と支払日で決まる
明細に新しい額が出る月は、上げる時期と給与の支払の仕方の組み合わせで決まります。翌月払いの会社なら、引き上げた月の次の月に受け取る給与から上がって見えます*1*3。
給与を上げる時期は、会社ごとに就業規則で決めます。労働基準法第89条は、賃金の決定や計算、支払の時期とあわせて、昇給に関する事項を就業規則に必ず書く事項としています*1。厚生労働省のモデル就業規則も、時期などの条件を定める必要があると説明しています*3。
モデル就業規則の条文例は、毎年何月何日をもって給与を上げる、という書き方です*3。ここに書かれた日付が、会社として新しい額に切り替える日になります。
ただし、切り替える日と、上がった額が振り込まれる日は同じとは限りません。モデル就業規則の賃金の条文例は、毎月何日に締め切って計算し、翌月の何日に支払う、という形です*3。
支払日にも法律の決まりがあります。モデル就業規則の解説によると、賃金は毎月1回以上、一定の支払日を定めて支払う必要があります(労働基準法第24条第2項)*3。そのため、どの会社にも決まった締め日と支払日があり、就業規則を読めば分かるようになっています。
このように翌月に支払う会社では、4月から新しい額になっても、4月に働いた分の給与は5月に支払われます。切り替えた月の明細ではなく、その次の月の明細で上がった額が見えるのはこのためです。
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2. 給与を上げる時期が書かれる書類と決まり
給与を上げる時期がどの書類に書かれているかを、法律の決まりと合わせて並べました。
引き上げの時期に関わる決まり
| 書類 | 決まり |
|---|---|
| 就業規則 | 昇給に関する事項は必ず書く事項*1 |
| 就業規則 | 賃金の締切りと支払の時期も必ず書く事項*1 |
| 労働条件通知書 | 昇給に関する事項は示すが、書面の交付は求められない*2 |
入社のときに受け取る労働条件通知書には、賃金や労働時間などの労働条件が書かれます。ただし、労働基準法施行規則第5条は、書面の交付で示さなければならない事項から、昇給に関する事項を除いています*2。
モデル就業規則の解説も、労働条件の明示のうち、この事項を除く項目は原則として書面の交付で示す必要がある、と書いています*3。そのため、労働条件通知書に引き上げの時期が書かれていないこともあります。
時期を正しく知りたいときは、労働条件通知書だけでなく、就業規則の条文を読むほうが確実です。就業規則にはこの事項を必ず書くことになっているからです*1。
入社したら、就業規則の賃金の章をひと通り読んでおきましょう。給与が上がる時期や締め日、支払日が1か所にまとまっているので、明細を見て迷ったときに読み返す場所が分かっていると安心です。
3. 昇給月と支給月の違いを例で見る
引き上げの時期が4月か10月かと、給与を当月に払うか翌月に払うかで、新しい額が見える月がどう変わるかを例で並べました。実際の日付は会社の就業規則で決まります。
図は、引き上げの時期と支払の仕方を組み合わせた例です。月の途中で締める会社では、締め日の前と後で計算が分かれることもあるので、実際の月は自分の会社の決まりで読み替えてください。
厚生労働省の賃金引上げ等の実態に関する調査は、改定の実施時期を、改定後の賃金が給与計算に適用される時期と定めています*4。つまり、給与を上げる時期とは、新しい額で計算し始める時期のことです。
4月から新しい額で計算するなら、翌月払いの会社では、その額で計算した給与が5月の支払日に振り込まれます。5月に受け取る明細の基本給の欄が、上がった額になっているはずです。
月の途中で入社したり退職したりした場合は、その計算期間の給与を日割りで計算する決まりを置く会社もあります。モデル就業規則の条文例は、計算期間の途中で採用された人や退職した人の月給を、所定労働日数を基準に日割りで払う形です*3。
その月を過ぎても明細の額が変わらないときは、就業規則の賃金の支払日の条文を読み、自分の会社が当月払いか翌月払いかを知っておきましょう。それでも変わっていなければ、人事の担当者に、どの月の分から上がるのかを聞いてください。
4. 賃金の改定は1月から8月に行う会社が多い
多くの会社が、毎年のどこかで賃金を引き上げています。厚生労働省の調査によると、令和7年に1人平均賃金を引き上げた・引き上げる企業の割合は91.5%でした*4。
改定の時期をみると、1月から8月だけに改定した企業が78.2%でした*4。9月から12月だけに改定する企業は9.6%、両方の時期に改定する企業は5.9%です*4。年の前半から夏までに賃金を改定する会社が多いことが分かります。
ただし、この調査は月ごとの内訳までは示していません。4月に改定する会社が何割かは分からないので、自分の会社の月は、就業規則で読むことになります。
転職したばかりの人は、入社した月によっては、最初の引き上げが翌年になることもあります。対象になる人の条件が就業規則に書かれているかも、あわせて読んでおきましょう。
5. 時期が過ぎても給与が上がらないとき
時期が過ぎても給与が上がらない場合は、まず就業規則の条文の書き方を読みます。モデル就業規則の条文例は、勤務成績などが良好な労働者について給与を上げる、としています*3。
さらに、会社の業績が大きく下がったなど、やむを得ない事由があるときは行わないことがある、と書く形になっています*3。上げる額も、勤務成績などを考えて一人ひとり決めるという書き方です*3。
つまり、時期が決まっていても、全員が同じ額だけ上がるとは限りません。自分の給与が上がったのか、額はいくらなのかは、人事の担当者に聞くか、会社から届いた通知の書面を見て判断します。
通知を受け取ったのに、反映されるはずの月の明細で額が変わっていないなら、計算の誤りの可能性もあります。通知の書面と明細を並べて、どの欄がいくら変わる予定だったのかを人事に示すと、話が早く進みます。
額の変わり方を見るときは、基本給の欄だけでなく、手当の欄も見ておきましょう。基本給は変わらずに、手当の額が変わる形で給与が上がる会社もあるので、支給額の合計がいくら変わったかで判断すると見落としが減ります。
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6. 転職先の昇給月を入社前に読むところ
転職先を選ぶときは、年収の額だけでなく、給与がいつ、どんな条件で上がるのかも見ておくと、入社後の見通しが立ちます。その時期は、就業規則の条文に書かれています*1。
求人票や労働条件通知書にこの欄があれば、年1回なのか、何月なのかを読みます。労働条件通知書では書面の交付が求められない事項なので*2、書かれていなければ、内定後に就業規則を見せてもらうか、人事の担当者に聞いておきましょう。
入社の月と引き上げの月が近い場合は、入社したばかりの年に対象になるかも聞いておくと安心です。対象の条件は会社ごとに違い、就業規則で決められています*3。
支払日もあわせて聞いておけば、上がった額がいつの給与から振り込まれるかまで分かります。締め日と支払日も就業規則に必ず書かれる事項なので*1、入社前に答えてもらえるはずです。
内定の段階で提示された年収が、入社後の最初の引き上げを含んだ額なのか、含まない額なのかも聞いておきましょう。複数の内定先の年収の見込みを比べるときに、前提をそろえやすくなります。
ITエンジニアの転職では、年俸制の会社もあります。年俸を12か月で割って毎月払う会社でも、新しい年俸が何月の給与から適用されるかは同じように就業規則や賃金規程で決まるので、入社前に読んでおくと安心です。
7. よくある質問
Q1. 4月に上がるはずが4月の明細が変わっていないのはなぜですか?
A. 翌月払いの会社では、4月分の給与が5月に支払われるので、上がった額は5月に受け取る明細に出ます*3。
Q2. 昇給の時期はどこに書かれていますか?
A. 就業規則です。この事項は就業規則に必ず書くことになっています*1。
Q3. 労働条件通知書に時期が書かれていないのは問題ですか?
A. この事項は、書面の交付で示す事項から除かれています*2。
Q4. 賃金の改定は何月が多いですか?
A. 月ごとの内訳は公表されていませんが、令和7年は1〜8月のみに改定した企業が8割近くでした*4。
Q5. 時期が来ても上がらないことはありますか?
A. モデル就業規則の条文例は、やむを得ない事由があれば行わないことがある、という書き方です*3。
Q6. 給与の支払日は会社が自由に決められますか?
A. 日付は会社が決めますが、月に1回以上、決まった日に払う必要があります*3。
Q7. 月の途中で入社すると最初の給与はどうなりますか?
A. 日割りで計算する例が、モデル就業規則に載っています*3。入社日がその月の何日目かで額が変わるので、最初の明細だけ金額が少なくても驚かなくて大丈夫です。
8. まとめ:昇給がいつから反映されるかは締め日と支払日しだい
この記事のまとめ
- 給与を上げる時期と、賃金の締切り・支払の時期は就業規則に必ず書く*1
- 翌月払いの会社では、引き上げた月の次の月に受け取る明細で額が上がる*3
- 改定の実施時期は、新しい額で給与を計算し始める時期のこと*4
- 労働条件通知書では、この事項の書面の交付は求められない*2
- 令和7年は、1〜8月のみに賃金を改定した企業が78.2%*4
上がった額がいつの給与に出るかを知りたいときは、就業規則の該当の条文と、給与の支払日を定めた条文を読みましょう。分からないときは、新しい額での計算がいつ始まるかを人事の担当者に聞いてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 労働基準法 第89条(e-Gov法令検索)
*2 労働基準法施行規則 第5条(e-Gov法令検索)
*3 モデル就業規則(厚生労働省労働基準局監督課・令和7年12月版)
*4 令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況(厚生労働省・2025年10月14日)
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