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  3. SIerとSESの違いは?契約の種類と指揮命令

SIerとSESの違いは?契約の種類と指揮命令

会議室の机の中央の契約書の束と、左右に置いた紺と灰色のファイル

SIerとSESは法律上の言葉ではなく、違いは会社がどの契約で仕事を受けるか(請負か準委任か)と、作業の指示を誰が出すかにあります。SIerやSESの意味を定めた公的な定義はありません。そのため、求人票でこの2語を見たら、語ではなく契約の中身を読みます。

民法では、請負が仕事の完成に報酬を払う契約、準委任が事務の委託と定められています*4。どちらの契約でも、発注者が受注者側の労働者に直接指示を出せば、労働者派遣事業になります*2。応募先の契約の形と指示を出す人は、面接で聞けます。

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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事のポイント

  • SIerとSESは法律上の言葉ではなく、違いは受ける契約と、作業の指示(指揮命令)を出す人で見ます。契約は、仕事の完成に報酬を払う請負と、事務の委託である準委任に分かれます*4。
  • 請負と準委任では、働く人に発注者が指示を出す関係は生じません*2。契約の名前ではなく、実態として誰が作業のやり方や時間を指示しているかで判断されます*2。
  • 応募先には、契約の形、作業の指示を出す人、労働条件の書面の就業場所と変更の範囲を聞きます。求人票の語だけでは、この3つは分かりません。

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1. SIerとSESの違いは契約の種類と作業の指示を出す人

SIerとSESの違いは、受ける契約の種類と、実際に作業の指示を出す人の2点で見ます。請負は完成した仕事の結果に報酬を払う契約で、準委任は法律行為でない事務を委託する契約です*4。請負でも準委任でも、発注者が受注者側の労働者に作業のやり方や時間を指示する関係(指揮命令関係)は生じません*2。発注者が直接指示を出していれば、労働者派遣事業として扱われます*2。

請負と派遣のどちらに当たるかは、契約書の名前ではなく、実態に即して判断されます*2。判断には、昭和61年労働省告示第37号が使われます*2。この告示の条件には、作業のやり方の指示と、始業・終業の時刻や休憩・休日などの管理を、請け負った側が自ら行うことが入っています*1。

求人票に「SIer」や「SES」と書かれていても、その語だけでは、請負か準委任かも、誰が指示を出すかも分かりません。入社後の働き方に関わるのは語の名前ではなく、契約の種類と指示の出し方です。ここからは、その2点を契約ごとに並べて見ていきます。

2. 請負・準委任と派遣は指揮命令を受ける相手が違う

客先の会議室で、資料をペンで指す担当者の手とノートを開いた手前の手

契約の名前が請負や準委任でも、実際に作業を指示するのが発注者なら、その働き方は労働者派遣事業に当たります*2。次の図は、3つの契約を指揮命令の有無で並べたものです。

請負・準委任は指揮命令関係を生じず、労働者派遣は他人の指揮命令を受ける 請負・準委任 請負は仕事の完成に報酬 準委任は事務の委託 発注者との指揮命令関係なし 労働者派遣 他人の指揮命令を受ける その他人のために働く 契約の形式は問わない 契約が請負や準委任でも、発注者が指示を出せば派遣になる

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です*4。報酬が払われる対象は、完成した仕事の結果です*4。

準委任は、法律行為でない事務を委託する契約です*4。民法656条は、法律行為を委託する委任(643条)の規定を、この事務の委託に準用すると定めています*4。

労働者派遣は、自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、その他人のために労働に従事させることです*5。働く人を雇っているのは派遣する会社で、作業を指示するのは労働者の働き先の会社になります。

請負・準委任と派遣の分かれ目は、報酬の対象よりも、受注者側の労働者に発注者の指揮命令が及ぶかどうかです*2。請負も、委任も、準委任も、指揮命令が及ばない点では同じです*2。

3. 契約の種類ごとの根拠と指示の関係

請負・準委任・労働者派遣の根拠と、発注者と受注者側の労働者の関係

契約の種類根拠内容発注者と受注者側の労働者の関係
請負民法632条*4仕事の完成を約し、その結果に報酬を払う指揮命令関係を生じない*2
準委任民法656条(643条を準用)*4法律行為でない事務の委託指揮命令関係を生じない*2
労働者派遣労働者派遣法2条1号*5自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受けて、その他人のために働かせる他人の指揮命令を受ける*5
請負等の形式で発注者が直接指示37号告示の疑義応答集*2偽装請負といい、労働者派遣法に違反する発注者が直接具体的な指揮命令をする*2

表の4行目の偽装請負は、請負契約等の形をとりながら、発注者が受注者の雇用する労働者に直接具体的な指揮命令をして作業をさせている場合をいいます*2。偽装請負は、労働者派遣法に違反します*2。

請負の形式で業務を行う事業主は、業務の処理に関する条件のすべてに当たる場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とされます*1。条件には、業務の遂行方法の指示を自ら行うことと、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇などの管理を自ら行うことが含まれます*1。

この判断は契約形式ではなく実態に基づくので、契約書が準委任と書かれていても、発注者が具体的に指示を出していれば派遣の扱いになります*2。同じ理由で、契約書が請負でも、請け負った側が指示と時間の管理を自ら行っていなければ、請負とは認められません*1*2。

民法の請負・準委任は、会社どうしの契約の種類です。労働者派遣は、働く人を雇う会社と、その人を働かせる会社の関係を定めた制度です*5。表の右端の列は、同じ働き方を契約の側から見るか、働く人の側から見るかの違いを示しています。

4. システム開発の契約は請負と準委任の両方がある

日本標準産業分類の受託開発ソフトウェア業(細分類3911)は、顧客の委託によるプログラムの作成を行う事業所です*6。作成に関する調査・分析・助言など、およびこれらの一括も含まれます*6。内容例示には、プログラム作成業、情報システム開発業、システム開発コンサルタント業、システムインテグレーションサービス業が並びます*6。SIerという語に近い公的な語は、この例示にあるシステムインテグレーションサービス業です*6。

この分類は、どの事業所がどんな仕事をするかの区分です*6。契約が請負か準委任かは、分類の説明に含まれていません*6。そのため、会社がSIerと呼ばれるかどうかと、個々の契約が請負か準委任かは、別々に見ます。

システム開発を請負業務とする場合にも、請負では指揮命令関係を生じないという考え方は当てはまります*3。アジャイル型開発以外の開発でも同じです*2。令和3年5月13日の事務連絡で、この扱いが示されています*3。

一方、準委任を前提とするシステム開発の契約もあります。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のアジャイル開発版のモデル契約書は、準委任契約を前提としています*7。成果物の完成に対価を払う請負契約ではありません*7。準委任では、ベンダ企業が専門家として業務を遂行すること自体に対価が払われます*7。システム開発には、請負の契約と準委任の契約の両方があります*3*7。

準委任で行われるアジャイル型開発でも、実態として指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たります*2。この場合は労働者派遣法の適用を受けます*2。準委任という名前の契約でも、日々の作業を発注者が直接指示していれば、派遣の扱いです*2。

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5. 応募先に聞く3点は契約の形と指示を出す人と就業場所の書き方

夜の机で、ノートパソコンの手前のメモ帳に貼った3色の付箋

1つ目は、応募先が仕事を受ける契約の形です。請負なら完成した仕事に、準委任なら委託した事務に、報酬を払う形です*4。入社後に就く仕事がどちらの契約に当たるのかは、面接で担当者に聞けます。

2つ目は、作業の指示を出す人です。応募先の会社が、作業の指示と勤務時間の管理を自社の人で行っているかどうかを聞きます*1。請負や準委任の契約でありながら、発注者が直接具体的に指示して作業をさせているなら、偽装請負に当たります*2。

3つ目は、労働条件を書いた書面(労働条件通知書など)の就業場所と、その変更の範囲です。契約の種類が分かっても、入社後に自分が働く場所が書面にどう書かれるかは別の話です。書面に就業場所が具体的に書かれるのか、変更の範囲まで書かれるのかを、面接で聞きます。

面接では、たとえば次のように聞きます。「このポジションの仕事は、請負、準委任、派遣のどの契約に当たりますか」「日々の作業の指示は、自社の誰が出しますか」。もう1つは「労働条件の書面には、就業場所と変更の範囲がどう書かれますか」です。

求人票の「SIer」「SES」という語からは、この3点は分かりません。語が同じでも、契約の種類や指示の出し方は会社ごとに違うので、応募先ごとに聞きます。

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6. よくある質問

Q1. 請負と準委任は何が違いますか

A. 請負は、仕事の完成を約し、その結果に対して報酬を払う契約です*4。準委任は、事務の委託のうち法律行為でないものです*4。

Q2. 準委任の契約なら発注者が作業を指示してもよいですか

A. 指示できません。準委任では指揮命令関係を生じません*2。実態として指揮命令があれば、労働者派遣事業に当たります*2。

Q3. 偽装請負とは何ですか

A. 請負契約等の形をとりながら、発注者が受注者の雇用する労働者に直接具体的な指揮命令をして作業をさせている場合をいいます*2。労働者派遣法に違反します*2。

Q4. 請負か派遣かは契約書の名前で決まりますか

A. 契約書の名前では決まりません。告示に基づいて、実際の働かせ方を見て判断されます*2。

Q5. アジャイル開発の契約は請負ですか

A. IPAのアジャイル開発版のモデル契約書は、請負ではなく準委任契約を前提としています*7。成果物の完成に対価を払う契約ではありません*7。

Q6. SIerは請負でSESは準委任ですか

A. 語から契約は決まりません。請負か準委任かは、民法の条文に照らして、個々の契約の内容で見ます*4。

Q7. 応募先には何を聞けばよいですか

A. 契約が請負・準委任・派遣のどれか、日々の作業を誰が指示するか、書面の就業場所と変更の範囲の3つです。

7. まとめ:SIerとSESの違いは契約と指示を出す人で見る

SIerとSESの違いのまとめ

  • SIerとSESは法律上の言葉ではなく、違いは受ける契約と、作業の指示を出す人で見ます。
  • 請負は仕事の結果に報酬を払い、準委任は事務を委託します*4。
  • 請負でも準委任でも、発注者の指揮命令は生じません*2。
  • 発注者が直接指示を出していれば、労働者派遣事業に当たります*2。
  • 面接で聞くのは、契約の形、指示を出す人、就業場所の書き方です。

SIerとSESの語の違いを探すより、応募先の契約の種類を聞くほうが、入社後の働き方に近い情報が得られます。作業の指示を出す人と就業場所の書き方も、同じ面接で聞いておきます。

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出典・参考情報

*1 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)(厚生労働省)
*2 37号告示に関する疑義応答集(第3集)(厚生労働省)
*3 システム開発を請負業務とする場合の疑義応答集の取扱いについて(事務連絡)(厚生労働省職業安定局需給調整事業課)
*4 民法(明治29年法律第89号)632条・643条・656条(e-Gov法令検索)
*5 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第2条(e-Gov法令検索)
*6 日本標準産業分類 分類項目名、説明及び内容例示(総務省)
*7 情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)(独立行政法人情報処理推進機構 IPA)

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