C++の経験を転職で示す|長く動くものを保つ話
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

C++でシステムを開発してきたエンジニアが転職の面接に臨むとき、処理の速さや効率のよさを強みとして語ろうとする場面があります。しかし面接官が知りたいのは、そのシステムがどれだけ長く動き続け、どう保たれてきたかという経緯です。伝える対象を変える必要があります。
C++の経験を転職で伝えるには、長く動いてきた実装をどう保ったかを、引き継ぎや移植の場面から言葉にすることが手がかりになります。
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この記事のポイント
- C++の経験は、処理の速さの説明ではなく、長く動いてきた実装をどう保ったかという観点に言い換えると伝わりやすくなります
- 棚卸しでは、担当した場面を『引き継ぎ』『移植』などの型に分けて言葉にすることが手がかりになります
- 転職で賃金が増加した人は40.5%、減少した人は29.4%、変わらなかった人は28.4%です*1。言語の経験と結びつけず、分布として押さえます
1. C++の経験は、速さの説明では伝わりません
C++の経験を転職の場面で伝えるとき、処理の速さや効率のよさを説明しても、面接官には技術解説として聞こえるだけで伝わりにくくなります。伝わるのは、長く動いてきた実装をどう保ったかという経緯です。
C++で書かれたシステムは、新しく作られるよりも、既にあるものを長く動かし続ける場面のほうが多くなります。エンジニア自身がその実装に向き合う時間も、新しく書く時間より、動いているものを保つ時間のほうが長くなりがちです。
この状態を面接で説明しようとすると、処理の速さや効率のよさといった技術的な特徴を語ってしまう場面があります。しかし面接官が確かめたいのは、その技術をどう使ったかではなく、長く動いてきたものをどう保ってきたかという経緯です。
保ってきた経緯には、互換性を保ちながら直した場面、別の環境へ移した場面、担当を引き継いだ場面などが含まれます。これらは技術解説ではなく、判断の経緯として言葉にできます。
この言い換えは、面接だけでなく職務経歴書にも当てはまります。担当した技術要素を並べて書くよりも、保ってきた経緯を場面ごとに書くほうが、読み手には具体的な仕事として伝わります。
言葉にする対象を変えれば、C++で長く働いてきた時間そのものが、転職の場面で伝える材料になります。次に、保ってきた場面をどう型に分けるかを見ていきます。
2. 棚卸しは、保った実装の型から始めます
保ってきた実装を棚卸しするときは、やっていたことをそのまま並べるのではなく、型に分けておくと言葉にしやすくなります。
やっていたこと・伝わる言い方・面接で聞かれること
| やっていたこと | 伝わる言い方 | 面接で聞かれること |
|---|---|---|
| 動いている実装をそのまま引き継いだ | 止めずに引き継いだ経緯として話します | 引き継ぎの際に何を確認したか |
| 実装を別の環境へ移した | 動きを変えずに移した工夫として話します | 移す前後で何を確認したか |
| 古い書き方のまま残っていた部分に手を入れた | 動いているものを壊さずに直した判断として話します | 直す範囲をどう区切ったか |
| 仕様が変わった箇所だけを更新した | 変えた範囲と変えなかった範囲を分けて話します | 変えなかった理由を聞かれます |
表の4行は、C++の経験でよく出てくる場面を型として並べたものです。共通しているのは、やっていたことをそのまま話すのではなく、保つためにした判断を経由して話す点です。
「引き継いだ」だけを話すと、担当が変わった事実の説明にしかなりません。止めずに引き継ぐために何を確認したかまで話すと、判断が加わった場面として伝わります。
「別の環境へ移した」も同様です。移した結果だけでなく、動きを変えないために何を確認したかまで話すと、移植を任された理由が伝わります。
4つの型に共通するのは、やっていたことの説明を、保つためにした判断を通じて言い換える型です。型が分かれば、ほかの場面にもそのまま当てはめられます。
「仕様が変わった箇所だけを更新した」という対応も、全体を作り直すのではなく、変える範囲を見極めた判断として話せます。変えなかった範囲について聞かれた際に、なぜ変えなかったかを答えられるようにしておくと安心です。
1つの担当が複数の型にまたがることもあります。その場合は、面接で聞かれた内容に応じて、当てはまる行から話す型を選べば十分です。すべての型を無理に一度に話す必要はありません。
開発環境がどう整っていたかという観点も、聞かれ方を変えると伝わりやすくなります。別の記事で扱っています。
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3. 新しく書く時間と保つ時間、いまの位置を示します
C++の経験を振り返るとき、新しく書いていた時間と、動いているものを保っていた時間のどちらが長かったかを、まず大まかに位置づけておきます。
多くのC++エンジニアは、キャリアの中で新しく書く時間より、動いているものを保つ時間のほうが長くなっていきます。保つ時間が長いことは、経験の浅さを示すものではありません。
位置が保つ側に近いなら、次の棚卸しで話せる場面が多くあるということです。位置が新しく書く側に近い場合も、保った場面自体がなかったわけではなく、まだ言葉にしていないだけということもあります。
キャリアの初期では新しく書く時間が長く、担当する範囲が広がるほど保つ時間の割合が増えていく傾向があります。位置がどちらに近いかは、経験年数そのものよりも、担当してきた実装の性質によって変わります。
自分の位置を大まかにでも把握しておくと、棚卸しで探す場面の見当がつきやすくなります。
4. 判断の基準は、言語ではなく記録に残るものです
長く動いてきた実装をどう保ったかを言葉にするとき、基準になるのは使った言語ではありません。基準になるのは、何を選び、なぜそれを選んだかという判断が、記録として残っているかどうかです。
互換性を保ちながら直した場面では、直す範囲をどう区切ったかという判断があります。別の環境へ移した場面では、動きを変えないために何を確認したかという判断があります。どちらも、結果だけでなく判断の経緯が残っていれば、あとから言葉にできます。
判断の記録は、特別な形式である必要はありません。簡単なメモ書きであっても、何を選び、なぜそれを選んだかという経緯が追える形になっていれば、棚卸しの材料になります。
記録を残す場所は、担当していた環境によって変わります。変更の履歴として残すこともあれば、引き継ぎ資料の形で残すこともあります。どちらの形であっても、判断の理由まで追えることが要点です。
保ってきた実装を一人で担当していた場合と、複数人で担当していた場合とでは、記録の残し方も変わります。一人で担当していた場合は、判断の理由を自分の言葉で残しておくことがそのまま棚卸しの材料になります。
業務知識をどう持ち運ぶかという観点も、記録の残し方によって変わります。別の記事で扱っています。
あわせて読みたい | 業務知識は持ち運べるか|分けて語ると伝わる
5. 棚卸しは、担当を書き出す順に進めます
棚卸しは、思いついた場面から話し始めるのではなく、順を決めて進めると整理しやすくなります。
最初の段階では、担当していた実装をすべて書き出します。この段階では、保った場面かどうかを判断せず、関わったものを並べることに絞ります。
次の段階で、保つために判断した場面を選び出します。書き出した担当の中から、互換性を保ちながら直した場面や、環境を移した場面を見つけていきます。
選んだ場面は、製品名や規格の名称に頼らず、一般的な言葉に直しておきます。言い直した場面が、面接でそのまま使える形になります。
面接で使う段階では、選んだ場面をすべて一度に話す必要はありません。聞かれた質問に応じて、表2の型に沿った場面を1つずつ選んで話すほうが、聞き手には伝わりやすくなります。
6. 書き出す型は、3つに揃えます
棚卸しで選んだ場面を書き出すときは、型を揃えておくと読み返しやすくなります。
書き出すときの3つの型
- やっていたこと:担当した場面を、製品名を出さずに一般的な言葉で書きます
- 保つための判断:直す範囲や移す範囲を、どう区切ったかを書きます
- 残った結果:判断のあと、実装がどう動き続けたかを書きます
3つの型を揃えて書き出しておくと、面接の場でどの場面を話すか選びやすくなります。型がばらばらだと、場面ごとに話の長さや詳しさが変わってしまいます。
「やっていたこと」は、担当した範囲を一般的な言葉で書く段階です。製品名や規格の名称を出す必要はありません。
「保つための判断」は、直す範囲や移す範囲をどう区切ったかを書く段階です。この段階が、棚卸しの中でもっとも言葉にしにくい部分になります。
「残った結果」を書くときは、直したあとにどれだけ長く動き続けたかを、分かる範囲で書きます。正確な期間が分からない場合は、次に大きな変更が入るまで動き続けたという書き方でも構いません。
技術的な負債が多く残る環境から離れたいと考える場面も、保つための判断と関わりがあります。別の記事で扱っています。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. C++の経験はあっても、ほかの言語を使った場面が少ないと転職で不利になりますか。
A. 使ってきた言語の種類よりも、長く動いてきた実装をどう保ったかという経緯のほうが、転職の場面では重視されます。ほかの言語を使った場面が少ないこと自体が、不利に直結するわけではありません。
Q2. 棚卸しをしても、話せる場面が見つからない場合はどうすればよいですか。
A. 見つからない場合は、担当していた期間の中で、仕様が変わった対応や、環境を移した対応がなかったかを見直します。小さな対応であっても、判断が残っていれば棚卸しの材料になります。
Q3. 保った実装の話は、面接で技術的な説明が長くなりませんか。
A. 技術的な仕組みを説明する必要はありません。何を選び、なぜそれを選んだかという判断の経緯を話せば、技術解説にはなりません。
Q4. 棚卸しは、転職を考え始めてすぐに終わりますか。
A. 担当していた期間が長いほど書き出す量も増えるため、一度で終わらせず、時間を分けて進めるほうが整理しやすくなります。
面接に進む前に、棚卸しでまとめた場面を読み返しておくと、当日の言葉選びに迷いにくくなります。
8. まとめ:判断は記録に残るものに置きます
この記事の要点
- C++の経験は、処理の速さの説明ではなく、長く動いてきた実装をどう保ったかという観点に言い換えると伝わりやすくなります
- 棚卸しは、担当を書き出す→判断した場面を選ぶ→一般的な言葉に直す→面接で使う、の順に進めます
- 面接では、やっていたことをそのまま話すのではなく、保つためにした判断を経由して話すと伝わります
- 書き出すときは、やっていたこと・保つための判断・残った結果の3つの型を揃えます
- 転職で賃金が増加した人は40.5%、減少した人は29.4%、変わらなかった人は28.4%です*1。言語の経験と結びつけず、分布として押さえます
C++で長く働いてきた時間は、保ってきた実装の棚卸しをすれば、転職の場面で言葉にできます。書き出す型を揃え、判断が残っている場面から面接での言い方を整えていくことができます。棚卸しの進め方について気になる点は、専任エージェントに相談しながら整理することもできます。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省 雇用動向調査
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