フルリモートに有利な資格は?ITエンジニア向けの試験

フルリモートの求人で有利になると言い切れる資格は、公的な資料からは見つかっていません。そのためITエンジニアが受ける試験は、各試験が何を証明するかを基準に選びます。取り上げる試験は、ITパスポート、基本情報技術者、応用情報技術者、情報処理安全確保支援士の4つです。
試験を実施する独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の区分ページには、各試験の対象者像が書かれています*2。テレワーク勤務者に求められる知識と行動が示されているのが、総務省のテレワークセキュリティガイドラインです*4。この2つを突き合わせて読むと、試験の対象者像と、テレワーク勤務者に必要な知識が重なる部分が見えてきます。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 有利になると示した公的な資料は見つかっていません。各試験が何を証明するかは、IPAの区分ページに対象者像として書かれています*2。
- 令和7年度の合格率は、ITパスポートが48.6%、基本情報技術者が38.3%、応用情報技術者が23.4%、情報処理安全確保支援士が20.7%です*1。この4つでは、区分が上がるほど合格率が低くなっています。
- テレワーク勤務者には、情報セキュリティ関連規程の遵守や認証情報の適切な管理などが求められます*4。求められるのは知識と規程の遵守で、資格の取得は含まれていません*4。
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1. 有利と言い切れる資格はなく試験ごとに対象者像が違う
公的な資料を探しても、フルリモートの採用で有利になる資格は示されていません。IPAの区分ページと概要ページが示すのは、各試験の対象者像と、下位区分の合格を足掛かりに上位区分を目指す試験体系です*2*3。この体系の中で、4つの試験は対象者像がそれぞれ異なります*2。そのため、資格は有利かどうかではなく、何を証明する試験かで選ぶことになります。
テレワークと情報セキュリティの知識を結ぶ根拠は、総務省のテレワークセキュリティガイドラインです*4。ガイドラインによると、勤務者がセキュリティの必要な知識を習得していれば、フィッシングや標的型攻撃などの被害を受けにくくなります*4。標的型攻撃とは、特定の組織を狙った攻撃です。またルールや対策が適切に整備されても、そのルールが遵守されなければ対策が有効に働かないとも書かれています*4。
ガイドラインがテレワーク勤務者に求める実施事項は7つあります*4。前半の3つは、情報セキュリティ関連規程の遵守、テレワーク端末の適切な管理、認証情報の適切な管理です*4。適切なテレワーク環境の確保、セキュリティ研修への積極的な参加、連絡方法の確認の3つが続き、最後がインシデント(セキュリティ事故)発生時の速やかな報告です*4。どれも、資格の取得ではなく知識と日々の行動を求めています*4。
2. 令和7年度の合格率は区分が上がるほど低い
IPAが公表した令和7年度の統計で、4つの試験の合格率を並べました*1。ITパスポートは48.6%、基本情報技術者は38.3%、応用情報技術者は23.4%、情報処理安全確保支援士は20.7%です*1。合格率は合格者数を受験者数で割った値で、申し込んでも受験しなかった人は分母に入りません*1。
合格率の差と並べて見たいのが、試験が想定する役割の重さです。区分が上がるほど、求められる役割は、指導を受けて担う作業から独力で担う仕事へ移ります*2。合格率の高さだけで選ばず、次の節の対象者像と自分の今の仕事を並べて選びます。
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3. 4つの試験が対象にしている人物像

各試験の対象者像(IPAの区分ページ)と令和7年度の合格率
| 試験 | 対象者像 | 令和7年度の合格率 |
|---|---|---|
| ITパスポート | ITに関する共通的な基礎知識をもち、ITに携わる業務に就くか、担当業務にITを活用していこうとする職業人(これから職業人となる人を含む) | 48.6% |
| 基本情報技術者 | ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者。上位者の指導の下で役割を果たす | 38.3% |
| 応用情報技術者 | ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者。独力で役割を果たす | 23.4% |
| 情報処理安全確保支援士 | サイバーセキュリティに関する専門的な知識・技能を活用し、企業や組織の安全な情報システムの企画・設計・開発・運用を支援する者。対策の調査・分析・評価と、その結果に基づく指導・助言も行う | 20.7% |
基本情報技術者と応用情報技術者は、どちらもITを活用したサービスや製品、システム、ソフトウェアを作る人材が対象です*2。基本情報技術者は基本的知識・技能をもつ者が上位者の指導の下で、応用情報技術者は応用的知識・技能をもつ者が独力で役割を果たす区分です*2。応用情報技術者の対象者像には、高度IT人材としての方向性を確立した者という記述もあります*2。
情報処理安全確保支援士は、高度試験9区分のうち、サイバーセキュリティを扱う区分です*3。2016年10月に「情報処理の促進に関する法律」が改正され、新たな国家資格が誕生しました*6。対象者像は、安全な情報システムの企画・設計・開発・運用の支援と、対策の調査・分析・評価、その結果に基づく指導・助言を行う者です*2。
IPAのITスキル標準(ITSS)はIT人材の能力をレベルで示した指標で、7段階あります*5。レベル2は上位者の指導の下で要求された作業を担当し、レベル3は要求された作業を全て独力で遂行します*5。「上位者の指導の下」と「独力で」は、基本情報技術者と応用情報技術者の対象者像にも出てくる語です*2。
IPAは試験の体系を、対象者別、レベル別、専門別の3つの見方で組んでいます*3。対象者別はIT利活用者とITエンジニア、レベル別はエントリ・基本・応用・高度の4段階で、高度試験は専門別に9区分です*3。試験は、入門の区分から高度の区分へ順に受けていけるように組まれています*3。
ITSSのレベル1は、情報技術に携わる者に最低限必要な基礎知識を持つ段階です*5。レベル4は、自らのスキルを活用して、独力で業務上の課題の発見と解決をリードする段階とされています*5。試験区分とITSSのレベルの対応は現行の区分ページに示されていないため、ここでは定義の言葉の重なりだけを手がかりにします。
4. テレワークで求められる知識と試験の対象者像が重なる点
ガイドラインが7つの実施事項で求めているのは、特定の資格ではなく、規程を守り、端末と認証情報を管理し、事故を報告する日々の行動です*4。ITパスポートの対象者像は、職業人が備えておくべきITに関する共通的な基礎知識をもつ者です*2。テレワーク勤務者の7つの実施事項は職種を問わない内容なので、この共通的な基礎知識の範囲に近いと読めます。
情報処理安全確保支援士は、ガイドラインの言う「整備されたルールや対策」を作る側の仕事と重なると読めます*2*4。規程を守る勤務者の知識と、規程を整える側の専門知識は、同じセキュリティの領域でつながっています。
ガイドラインは令和3年5月の公表で、総務省のページでは現在も第5版が最新版として案内されています*4。ただし公表から2年を超えた資料なので、実施事項の7つは、応募先の会社が定めた現在の規程と照らして読みます。
応募先ごとに、使う端末や認証の方法、研修の有無が違うため、入社後は会社の規程を読んで従います。資格の勉強で学んだ内容は、規程の項目がなぜ置かれているかを読むときに役立ちます。
5. 資格は今の経験と進みたい仕事から選ぶ

ITの実務経験がなく、ITに携わる業務に就こうとしている段階なら、ITパスポートの対象者像に当てはまります*2。令和7年度の合格率は48.6%と、4つの中で最も高い値です*1。IT未経験からのリモート転職は、職種の選び方を別の記事で読めます。
すでに開発や運用の実務にあり、上位者の指導の下で作業している段階なら、基本情報技術者の対象者像に近くなります*2。独力で役割を果たしている段階なら、応用情報技術者です*2。どちらを受ける場合も、下位の試験区分の合格を足掛かりに、より上位の試験区分を目指す体系になっています*3。
セキュリティの設計や運用に進みたい場合は、情報処理安全確保支援士の対象者像に当てはまります*2。合格率は4つの中で最も低い20.7%です*1。国家資格で、高度試験9区分の1つでもあります*3*6。
応募する求人の求人票では、資格が必須要件か歓迎要件かを先に読みます。試験の合格を応募の条件にしている求人もあれば、実務経験だけを条件にしている求人もあります。セキュリティの知識を学ぶ時期は、応募の前でも並行でも構いません。
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6. よくある質問
Q1. フルリモートの求人で有利になる資格はありますか
A. 有利と断定できる資格はありません。選ぶ基準は、自分の経験や進みたい仕事に合う対象者像の試験かどうかです。各試験の対象者像はIPAの区分ページで読めます*2。
Q2. ITパスポートはITの経験がなくても受けられますか
A. 受けられます。対象者像には、担当業務でITを活用していこうとする人も含まれます*2。
Q3. 基本情報技術者と応用情報技術者はどちらを受ければよいですか
A. 上位者の指導の下で役割を果たす段階なら基本情報技術者、独力で役割を果たす段階なら応用情報技術者です*2。令和7年度の合格率は、基本情報技術者が38.3%、応用情報技術者が23.4%でした*1。
Q4. 資格がなければテレワークで働けませんか
A. ガイドラインがテレワーク勤務者に求めているのは、セキュリティに関する必要な知識と、規程の遵守です*4。資格の取得は実施事項に含まれていません*4。
7. まとめ:資格は有利さではなく対象者像で選ぶ
試験選びで押さえる3点
- 有利と断定できる資格はなく、選ぶ基準は各試験の対象者像です。
- 4つの試験の合格率は、48.6%から20.7%まで開いています*1。
- テレワークで求められるのは、規程の遵守や端末・認証情報の管理といった知識と行動です*4。
資格の勉強と並行して、応募する求人の求人票で、資格名が必須か歓迎かを読んでおきます。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 情報処理技術者試験 統計情報(令和7年度)推移表(IPA)
*2 基本情報技術者試験/応用情報技術者試験/情報処理安全確保支援士試験/ITパスポート試験 各区分ページ(IPA)
*3 試験の概要「自己のスキルアップ、能力レベルの確認」(IPA)
*4 テレワークセキュリティガイドライン 第5版(総務省・令和3年5月)
*5 ITスキル標準の概要「レベルの概念」(IPA)
*6 情報処理安全確保支援士制度(IPA)
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