ノーコードだけの経験が転職で何として読まれるかを解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

ノーコードの道具でフォームや自動化の仕組みを作ってきた人は、選考の場で「コードが書けない」という見方をされることを心配します。ただし、道具を使って業務の仕組みを作ってきた過程には、コードの代わりに残っているものがあります。どの業務をどの順番で自動にしたか、動かなくなったときに何を直したかという記録です。
IPAの調査では、DX推進人材が「不足」と回答した企業は85.5%です*1。ノーコードで自動化の仕組みを作ってきた経験は、この人材像に近い仕事をしてきたことを示す材料になります。
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この記事のポイント
- IPAの調査では、DX推進人材が「不足」と回答した企業は85.5%です。仕組みを整理し、自動化を進められる人材へのニーズの高さを示す数字です*1。
- 厚生労働省の調査では、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.65倍です*2。東京都と全国計の賃金差は月額77.7千円です*3。
- 「コードが書けない」という前提だけでは、これまで決めてきた仕組みの記録は評価されません。決めた順番と直した記録を書き出すことが、選考で使える材料をつくる土台になります。
1. ノーコードでの自動化には、決めた順番と直した記録が残ります。
ノーコードの道具を使って業務の仕組みを作ってきた経験には、コードの代わりに設計と運用の記録が残っています。IPAの調査では、DX推進人材が「不足」と回答した企業は85.5%です*1。仕組みを整理し、自動化を進められる人材へのニーズの高さを示す数字です。ノーコードで自動化の仕組みを作ってきた経験は、この数字が指す人材像に近い仕事をしてきたことを示す材料になります。
ノーコードの道具で業務のフォームや自動化の仕組みを作ってきた人は、選考の場で「コードが書けない」という見方をされることを気にします。実際にはコードの代わりに、設計と運用の記録が手元に残っています。
残っているのは、大きく3つです。どの業務を、どの順番で自動にしたか。動かなくなったときに何を見て、どう直したか。使う人が増えたときに何が詰まって、どう作り直したか。これは設計と運用の記録そのものであり、書き出せばそのまま応募の材料になります。
一方で、使ってきた道具の名前を並べるだけでは、この記録は伝わりません。名前ではなく、決めた順番と直した記録のほうを書き出す必要があります。そのうえで、次の一歩は2つに分かれます。作る側に回ってコードを覚える方向と、仕組みを決める側に回って要件と運用を引き受ける方向です。
2. 残っている記録は、3種類に分けられます。
3つの記録を、内訳として整理します。
ノーコードの道具で仕組みを作ってきた経験には、決めた順番の記録・直した記録・作り直した記録という3種類の材料が残っています。図の配分は目安であり、実際の作業時間を計測した数字ではありません。
決めた順番の記録とは、どの業務を先に自動にし、どの業務を後回しにしたかという判断です。優先順位を決めた理由まで書き出せると、選考で伝わる材料になります。
直した記録とは、動かなくなったときに何を見て、どこを直したかという経緯です。原因を特定した手順そのものが、運用の記録になります。
作り直した記録とは、使う人が増えたときに何が詰まり、どう作り直したかという経緯です。仕組みを最初から見直した判断は、設計の記録として書き出せます。
3. 道具の名前だけでは、経験は伝わりません。
選考で使う道具の名前を並べるだけでは、何をしてきたかが伝わりません。ノーコードの製品名を挙げても、それだけでは判断の内容が見えないためです。
伝わるのは、決めた順番・直した記録・作り直した記録という3つの材料のほうです。どの業務を先に自動にしたか、その判断基準まで書き出すと、設計の考え方が伝わります。
動かなくなったときにログや設定を確認し、どこを直したかという手順も、運用の記録として書き出せます。原因の特定から復旧までの流れは、道具が変わっても使える経験です。
使う人が増えて仕組みが詰まったとき、どこを作り直したかという判断も重要な記録です。最初の設計をどう見直したかを書き出すことで、設計と運用の両方に関わってきたことが伝わります。
個人で作ってきた仕組みを転職の材料に変える書き方は、開発の実績を経歴として整理する場合と共通する部分があります。
書類に書く順番は、道具の説明を先に置かないことが要点です。最初に業務の課題と優先順位、次に動かなくなったときの対処、最後に作り直した判断という順に並べると、読み手は仕組みの全体像を先に把握できます。道具の名前は、必要であれば末尾に補足として添える程度で十分です。
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4. 求人の動向と地域の賃金差を、表で確認します。
実際にどれだけの需要があるかを、求人倍率と地域の賃金差の数字で確認します。
【表1】情報処理・通信技術者の求人動向と地域の賃金差
| 指標 | 値 | 比較対象 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者の有効求人倍率 | 1.65倍 | 全国計・常用(除パート) | *2 |
| 東京都と全国計の賃金差 | 77.7千円 | 月額・一般労働者 | *3 |
厚生労働省の一般職業紹介状況によると、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.65倍です*2。求人の件数が応募者の数を上回っている状態で、経験の内容を書き出せれば選考に進める余地があります。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、東京都と全国計の賃金差は月額77.7千円です*3。勤務地を問わないリモートワーク対応の求人であれば、住んでいる場所を変えずに、この差を踏まえた年収の交渉ができます。
求人倍率も賃金差も、ノーコードの経験だけで自動的に有利になる数字ではありません。書き出した記録と組み合わせて初めて、選考で使える材料になります。
求人票のなかには、使用する言語やフレームワークが書かれていないものもあります。その場合は、求人票に書かれた業務内容から、どの範囲の判断を任されるかを読み取り、自分の記録と照らし合わせる進め方が有効です。
あわせて読みたい | 使用技術が書かれていない求人票の読み方と3つの事情
5. 問われる内容は、作った直後と後から変わります。
同じ経験でも、聞かれる内容は時点によって変わります。3つの時点に分けて整理します。
ノーコードで作った仕組みについて聞かれる内容は、作った直後・使う人が増えたとき・引き継いだときで変わります。同じ経験でも、答える材料を時点ごとに整理しておく必要があります。
作った直後に問われるのは、どの業務をどの順番で自動にしたかという判断です。優先順位を決めた理由まで答えられると、設計の考え方が伝わります。
使う人が増えたときに問われるのは、何が詰まり、どこを作り直したかという経緯です。最初の設計をどう見直したかという判断が、選考で確認される部分です。
引き継いだときに問われるのは、動かなくなったときに何を見て、どう直したかという手順です。原因の特定から復旧までの流れが、運用の記録として評価されます。
3つの時点をあらかじめ分けて準備しておくと、面接の場でどの時点の話をしているかを自分でも整理しながら答えられます。段階を混ぜたまま話すと、判断の理由と結果が入れ替わって伝わり、面接官には筋の通らない説明として受け取られてしまいます。
6. 次の一歩は、2つの方向から選べます。
決めた順番と直した記録を書き出したうえで、次の一歩をどちらに置くかを整理します。
次の一歩を選ぶための確認点
- 作る側に回る場合:コードを覚えて、これまで決めてきた仕組みを自分の手で実装する方向です。
- 決める側に回る場合:要件と運用を引き受けて、仕組みを作る人に何を作ってほしいかを伝える方向です。
- 見せる材料の違い:作る側は実装した記録、決める側は要件を整理した記録が、それぞれ選考で見られます。
- 選ぶ基準:どちらの記録をより多く積んできたかで、次に伸ばす方向を決められます。
ノーコードで仕組みを作ってきた経験は、どちらの方向にも使えます。作る側に回るなら、これまで決めてきた仕組みをコードで実装する経験として積み直せます。
決める側に回るなら、要件と運用を引き受けて、実装する人に何を作ってほしいかを伝える役割に近づきます。これまで自分で決めてきた判断の経験は、この役割でも評価される記録です。
求人票に書かれた職種名だけでは、どちらの方向の仕事かが判断しにくい場合があります。面談で確認しておくと、選んだ方向と実際の仕事内容のずれを防げます。
どちらの方向を選ぶ場合も、途中で選び直すことはできます。作る側に回ってから要件を決める側に移る人もいれば、逆の順で進む人もいます。最初に決めた方向に縛られる必要はなく、積んできた記録の重心が変わったタイミングで見直せば十分です。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. ノーコードの経験だけで、エンジニアの求人に応募できるか。
A. 応募できる求人はあります。選考で見られるのは道具の名前ではなく、どの業務をどの順番で自動にしたか、動かなくなったときに何を直したかという記録です。書き出して伝えられるかが判断の分かれ目になります。
Q2. コードを覚えていないことは、選考でどう説明すればよいか。
A. コードを書いた経験がまだない場合も、決めた順番と直した記録を先に伝える方法があります。設計と運用の判断をしてきたことが分かれば、評価の対象になります。
Q3. 作る側に回る場合、何から書き出せばよいか。
A. まず、これまで決めてきた仕組みの中でどの業務を先に自動にしたかを書き出します。判断の理由まで書けると、実装を学び直す土台になります。
Q4. 決める側に回る場合、何を準備すればよいか。
A. 要件と運用を引き受けてきた経験を、判断の記録として整理します。動かなくなったときに何を見て、誰に何を頼んだかまで書き出すと、要件を決める役割の材料になります。
Q5. 使ってきた道具の名前を、職務経歴書にどう書けばよいか。
A. 名前だけを並べるのではなく、その道具でどの業務をどう自動にしたか、動かなくなったときにどう直したかを添えます。名前は補足であり、記録のほうが判断材料になります。
8. まとめ:ノーコードの経験は、記録として書き出せます。
この記事の要点
- ノーコードの道具で業務を自動にしてきた経験には、決めた順番の記録・直した記録・作り直した記録という3種類の材料が残っています。
- IPAの調査では、DX推進人材が「不足」と回答した企業は85.5%です。仕組みを整理し自動化を進められる人材へのニーズの高さを示す数字です*1。
- 情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.65倍*2、東京都と全国計の賃金差は77.7千円です*3。記録を書き出せれば、この需要と賃金差を選考の材料に変えられます。
- 次の一歩は、作る側に回ってコードを覚えるか、決める側に回って要件と運用を引き受けるかの2つに分かれます。どちらを選ぶかで、書き出す材料の重心が変わります。
道具の名前を並べるだけでは、この経験は伝わりません。決めた順番と直した記録を先に書き出し、次にどちらの方向に進むかを選んでいきましょう。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 IPA「DX動向2026」
*2 厚生労働省「一般職業紹介状況」令和7年12月分(2026年2月公表)
*3 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
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