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入社前研修は無給でもいい?給料が出る研修と出ない研修

入社前研修は無給でもいい?給料が出る研修と出ない研修のイメージ写真

入社前研修が無給でよいかは、参加が義務づけられているかで決まります。参加が業務上義務づけられた研修は労働時間なので、賃金が要ります*1。自由参加の研修なら、労働時間には当たりません*2。

参加しないと内定を取り消すと言われる、課題の提出を求められるなど、事実上参加を強制されているなら、名前が研修でも労働時間に当たります*2。内定中の研修で業務命令に従えば、賃金が払われるとされています*3。

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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事のポイント

  • 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の時間は、労働時間として扱う必要があります*1。
  • 自由参加の研修は労働時間に当たりませんが、不参加が減給の対象になるなど事実上強制されていれば、労働時間に当たります*2。
  • 労働時間に当たる研修の賃金は、最低賃金額を下回ってはいけません*4。

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1. 入社前研修が無給でよいかは参加の義務で決まる

入社前研修が無給でよいのは、参加が自由で、参加しなくても不利益がない研修だけです*2。会社の指示で参加させる研修なら、その時間には賃金が払われます*1。

労働時間かどうかの考え方は、厚生労働省の労働時間の適正な把握のためのガイドラインに書かれています。労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことで、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります*1。

ガイドラインは、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講を、労働時間として扱わなければならない時間の例に挙げています*1。研修という名前でも、義務として参加させているなら労働時間です。

転職で入社する人は、前の会社に在籍しているうちに、入社前研修の案内を受けることがあります。その場合も、労働時間かどうかは参加が義務かどうかで決まります*1。

反対に、業務上義務づけられていない自由参加の研修は、労働時間に含まれません*2。参加するかどうかを本人が選べて、参加しなくても何も不利益がない研修です。参加を断っても、評価や配属、内定に何も響かないことが、自由参加といえる条件です*2。

労働時間に当たるかどうかは、労働契約や就業規則にどう書かれているかでは決まりません。ガイドラインは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたと評価できるかで、客観的に決まるとしています*1。「研修は無給」と書面に書かれていても、実態が義務なら労働時間です。

2. 給料が出る研修と出ない研修の例

厚生労働省の資料に載っている例をもとに、労働時間に当たる研修と当たらない研修を並べました*2。

研修が労働時間に当たるかの例

研修の例労働時間か
参加が業務上義務づけられた研修当たる*1
休日の社外研修を指示され、後日レポートの提出も課される当たる*2
不参加が就業規則で減給の対象になっている研修当たる*2
参加は自由で、不参加でも不利益がない勉強会当たらない*2

資料は、会社が指定する社外研修について、休日の参加を指示され、後日レポートの提出も課される研修を、労働時間に当たる例に挙げています*2。

反対に、終業後の夜間に行う勉強会で、弁当は出しているが参加の強制はせず、参加しないことに不利益な取扱いもしない場合は、労働時間に当たらない例です*2。

不参加が就業規則で減給の対象だったり、参加しないと業務ができなかったりする場合も、研修であっても労働時間です*2。

入社前研修に当てはめると、参加を前提に日程を組まれ、欠席するなら理由を出すよう求められる研修は、義務に近い扱いです。課題や試験があり、その結果が配属に関わると言われるなら、なおさら自由参加とはいえません。研修の後に感想文や確認テストを出すよう求められる場合も、提出までにかかる時間を含めて、会社の指示で動いている時間かどうかで考えます。

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3. 自由参加の研修と義務の研修の違い

入社前研修が自由参加か義務かで、扱いがどう変わるかを並べました。

自由参加なら労働時間に当たらず義務や事実上の強制なら賃金と労災保険の対象になる 自由参加の研修 参加するかを本人が選べる 不参加でも不利益がない 労働時間に当たらない*2 無給でもよい 義務の研修 会社の指示で参加する 不参加に不利益がある 労働時間に当たる*1 賃金を払う対象になる 内定中に研修で業務命令に従った場合は賃金が払われ、ケガには労災保険が適用される*3

東京都の就職前に知りたい労働法は、内定中に研修やアルバイトで業務命令に従った場合、賃金が払われると説明しています*3。その間のケガには、労災保険が適用されるとしています*3。

同じ資料は、内定者が自由意思で同意した場合に限り、業務命令に応じて研修などに参加する義務が生じるとも書いています*3。ただし、この資料は学業に専念すべき学生を念頭に置いた、新卒の内定者向けの説明です*3。

資料は、宣伝会議事件の判決(東京地方裁判所・平成17年1月28日)を紹介しています*3。判決は、入社日前の研修に同意しなかった内定者に、内定取消しも不利益な取扱いも許されないとしました*3。この事件は大学院生の内定者の事案です*3。

転職で入社する人には、学業との両立という事情はありません。それでも、会社の指示で参加し、業務に関わる内容を学ぶ研修なら、労働時間に当たるという考え方は同じです*1。

4. 入社前研修に払われる賃金の額

研修の時間が労働時間に当たるなら、払われる賃金は最低賃金を下回ってはいけません。最低賃金法第4条は、使用者は最低賃金の適用を受ける労働者に、最低賃金額以上の賃金を払わなければならないと定めています*4。

最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約は、その部分が無効になり、最低賃金と同じ定めをしたものとみなされます*4。研修期間だけ時給を極端に低くしても、最低賃金を下回る部分は通りません。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を払わなければなりません(労働基準法第24条)*5。研修の受講料を賃金から差し引くような扱いは、この全額払いの決まりに関わります。

入社前研修の賃金をいくらにするかを定めた公的な基準は見つかっていません。入社後の給与と同じ額か、研修のための時給かは会社によって違うので、研修の案内を受けたら、賃金の有無と額を書面で聞いておきましょう。労働時間に当たる研修なら、何時から何時まで受けたかを自分でも記録しておくと、賃金の計算の根拠になります。遠方の会場まで行く研修なら、交通費が出るかも聞いておきたい項目です。賃金を入社後の最初の給与と一緒に払うのか、別に払うのかも聞いておくと、受け取りの見通しが立ちます。

5. 入社前研修の案内が来たら聞いておくこと

内定先から入社前研修の案内が来たら、まず参加が必須かどうかを聞きます。必須なら、その時間の賃金がどう払われるかもあわせて聞いておきましょう。

研修の日程が今の会社の勤務日と重なるなら、今の会社の勤務を優先してかまいません。転職者はまだ前の会社に在籍していることが多いので、退職日より前の研修に参加できない場合は、早めに内定先に伝えておきます。

参加しない場合に内定や配属に影響があるかも、書面で聞いておくと安心です。不参加を理由に不利益を受けるような研修なら、事実上の強制として労働時間に当たる可能性が高くなります*2。

研修の内容が、入社後に使うツールの操作や社内の決まりの説明なら、業務に必要な学習に近い内容です。会社の指示でそうした学習をする時間は、労働時間に当たります*1。オンラインで行う入社前研修でも、考え方は同じです。会社が時間を指定し、参加を求めているなら、自宅から参加した分も労働時間です*1。

研修中にケガをする心配がある内容なら、労災保険の扱いも聞いておきましょう*3。

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6. 無給の入社前研修に参加を求められたときの対応

参加が実質的に義務なのに賃金が出ないと言われたら、まず内定先の人事の担当者に、研修の扱いを書面で示してほしいと伝えます。参加が自由なのか、義務なのかが書面ではっきりすれば、次に何をするかが決まります。

義務なのに賃金が出ない扱いが変わらない場合は、会社の住所を受け持つ労働基準監督署に相談できます。研修の案内のメール、日程表、課題の指示などを残しておくと、事実を説明しやすくなります。相談の前に、研修の日時と内容、参加を求められた経緯を時系列に書き出しておくと、窓口で話が早く進みます。

入社前のことなので、内定先との関係を気にして、言い出しにくいこともあります。それでも、入社前の扱いは、入社後の働き方を知る手がかりになります。研修の扱いをあいまいにする会社かどうかは、入社を決める前に知っておきたいところです。

研修の扱いについて会社と話すときは、責める言い方ではなく、参加の条件を知りたいという形で聞くと、話がこじれにくくなります。内定先を選び直すことも、選択肢の1つです。複数の内定がある場合は、入社前研修の扱いも含めて、条件を並べて比べておきましょう。

7. よくある質問

Q1. 入社前研修が無給なのは問題ありませんか?

A. 自由参加なら問題ありません*2。義務なら労働時間なので、賃金が払われます*1。

Q2. 入社前研修に参加しないと内定取消しになりますか?

A. 新卒の内定者について、研修に同意しない人を不利に扱ってはならないとした判決があります*3。

Q3. オンラインの入社前研修も労働時間ですか?

A. 会社が日時を決めて参加させるなら、オンラインでも労働時間です*1。

Q4. 研修中の賃金は最低賃金より低くてもよいですか?

A. 労働時間に当たるなら、最低賃金を下回ることはできません*4。

Q5. 入社前研修でケガをしたら労災保険は使えますか?

A. 使えます。業務命令に従った研修中のケガは労災保険の対象です*3。

Q6. 研修の課題に取り組む時間も労働時間ですか?

A. 使用者の指示で業務に必要な学習をしていた時間は、労働時間に当たります*1。

Q7. 前の会社に在籍中でも入社前研修に参加できますか?

A. 日程が勤務と重ならなければ参加はできますが、2つの会社で働く形になるので、今の会社の就業規則の兼業の決まりも読んでおきましょう。

Q8. 研修の案内に任意参加とあれば無給でよいですか?

A. 書き方ではなく実際の扱いで決まります。参加しないと不利益があるなら、労働時間に当たります*1*2。

8. まとめ:入社前研修が無給でよいのは自由参加の研修だけ

この記事のまとめ

  • 参加が業務上義務づけられた研修の時間は労働時間*1
  • 自由参加で不利益がない研修は労働時間に当たらない*2
  • 不参加が減給や不利益につながるなら、事実上の強制として労働時間*2
  • 労働時間に当たるなら、最低賃金額以上の賃金を払う*4
  • 業務命令に従った研修中のケガには労災保険が適用される*3

研修の知らせを受けたら、参加が必須か、賃金が出るか、参加しない場合に不利益があるかの3点を、書面で答えてもらいましょう。答えが分かれば、無給でよい研修かどうかを自分で判断できます。

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出典・参考情報

*1 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)
*2 労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署・令和8年6月)
*3 就職前に知りたい労働法 内定中の研修(東京都)
*4 最低賃金法 第4条(e-Gov法令検索)
*5 労働基準法 第24条(e-Gov法令検索)

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