異動の可能性ありとは何か|求人票の一文で読めること
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

求人票によくある「異動の可能性あり」という一文は、転勤(勤務地が変わること)とは別の話です。ここで扱うのは、勤務地を変えずに部署が変わる異動です。一文だけからは「起こりうる」ということしか読み取れず、実際にどれくらい動くのかまでは書かれていません。分かれ目を先に知っておくことで、入社後の見立てのずれを防げます。
厚生労働省の調査では、転職による入職率は9.7%です*1。会社を変える動きは公的な統計で規模が分かりますが、会社を変えずに部署が変わる異動は、求人票の一文だけでは頻度を測れません。
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この記事のポイント
- 厚生労働省の調査では、転職による入職率は9.7%です*1。会社の外への動きの規模はここから分かりますが、社内の部署の動きは求人票の一文だけでは分かりません。
- テレワークを行う正社員は22.5%です*2。働く場所の柔らかさと、担う仕事の範囲が変わるかどうかは別の軸です。
- 50〜54歳の一般労働者の賃金は月388.8千円です*3。ここに至る積み方は、幅を広げてきたか、同じ領域を深めてきたかで変わります。
1. 求人票の「異動の可能性あり」は、可能性を示すだけの一文です。
求人票に「異動の可能性あり」と書かれていても、そこから読み取れるのは起こりうるという可能性だけです。会社を変える転職は、厚生労働省の調査で入職率9.7%という規模が分かります*1。一方、会社を変えずに部署が変わる異動は、公的な統計に頻度が出てこないため、実際にどれくらい動くのかは求人票の外側で確かめる必要があります。
ここで扱う異動は、勤務地を変えずに部署が変わる形です。勤務地が変わる転勤とは別の話として、ここでは切り分けて考えます。
「異動の可能性あり」という一文は、求人票の多くに入っています。そこから読み取れるのは、起こりうるという可能性だけで、実際の頻度までは書かれていません。
分かれ目は3つあります。部署の数と近さ、人を育てる考え方、直近で実際に動いた人がいるかです。ここから順に、求人票の外側にある材料を確認していきます。
求人票に書かれていない部分を「起こらない」と決めつけるのではなく、「面談で確認する対象」として扱うと、判断の抜け漏れを防げます。書かれている一文と、書かれていない運用の両方を、別の材料として見ていきます。
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2. 動きやすい形と動きにくい形は、3つの軸で分かれます。
異動が実際にどれくらい起こるかは、3つの軸の組み合わせで見えてきます。
似た仕事をする部署が近くに複数あると、業務の引き継ぎがしやすく、部署をまたぐ配置がしやすくなります。逆に部署の数が少なく、仕事の内容も離れていると、同じ部署に長くとどまる形になりやすくなります。
人を育てる方針が、幅を持たせる考え方か、深さを求める考え方かによっても変わります。幅を持たせる方針では、複数の部署を経験させる形が選ばれやすくなります。
制度として異動の仕組みがあるかどうかより、直近で実際に動いた人がいるかどうかのほうが確かな材料になります。面談では、「この3年で、このチームから他の部署へ移った人は何人いましたか」と聞くと、制度ではなく実際に起きたことを確認できます。
3つの軸は独立していません。部署の数が多い職場でも、育成の方針が深さを求める形であれば、配置の話は出にくくなります。3つを組み合わせて見ることで、求人票の一文よりも具体的な見立てに近づきます。
3. テレワークが広がっても、部署が変わる仕組みは残ります。
パーソル総合研究所の調査では、テレワークを行っている正社員は22.5%です*2。働く場所の選び方が柔らかくなっても、担う仕事の範囲が変わるかどうかは別の軸として残ります。
リモートワーク対応の求人であっても、部署をまたいで配置される仕組み自体がなくなるわけではありません。勤務場所が変わらないことと、担当する仕事の範囲が変わらないことは、同じではありません。
オフィスに毎日出社する働き方と比べると、テレワーク中心の職場では引き継ぎの手段がオンラインの資料共有や打ち合わせに置き換わります。対面での引き継ぎに慣れた職場では、配置の判断そのものに時間がかかることもあります。
求人票に書かれた勤務形態の条件と、部署の配置に関する運用は、別々の項目として確認したほうが判断を誤りにくくなります。両方を同じ一文から読み取ろうとすると、どちらも中途半端な理解になります。
希望を出す仕組みがある職場では、動く場合も動かない場合も、本人の意思が関わります。希望を出せる制度があるかどうかも、面談で確認できる材料のひとつです。
4. 3つの軸を、表で並べて確認します。
部署が変わる頻度は、求人票の一文だけでは分かりません。3つの軸を表に整理し、それぞれどこを見ればよいかをまとめます。
【表1】部署が変わる頻度を見極める3つの軸
| 軸 | 見るポイント | 動きやすい状態 |
|---|---|---|
| 部署の数と近さ | 似た仕事をする部署が近くに複数あるか | 複数ある |
| 人を育てる考え方 | 幅を持たせる方針か、深さを求める方針か | 幅を持たせる方針 |
| 直近の実例 | この3年で他部署へ移った人がいるか | 実例がある |
表の3つの軸は、どれか1つだけで判断できるものではありません。部署の数が多くても、育成の方針が深さを求める形であれば、同じ部署にとどまる期間が長くなることもあります。
面談で聞くとよいのは、制度の有無ではなく実例です。「この3年で、このチームから他の部署へ移った人は何人いましたか」という聞き方は、実際に起きたことを確認する質問になります。
表の「動きやすい状態」欄は、あくまで傾向を示すものです。3つの軸がすべて動きやすい状態にそろっている場合でも、実際に配置が行われるかどうかは、そのときの人員の状況によって変わります。傾向として捉え、断定の材料にはしないほうが安全です。
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5. 入社後、いつ話が来るかを段階で見ておきます。
部署の話がいつ出やすいかは、入社からの年数によっても変わります。3つの段階に分けて見ておきます。
入社1年目は、今の部署の仕事を覚える段階です。他部署への言及は少なく、まずは目の前の仕事に集中する時期になります。
入社3年目になると、一人で仕事を進められるようになり、他部署から声がかかる機会も増えてきます。幅を持たせる方針の職場では、この時期に部署をまたぐ配置の話が出やすくなります。
入社5年目は、幅を広げてきたか、深さを求めてきたかという方向性がはっきりしてくる時期です。ここまでの積み方によって、その後のキャリアの選び方も変わってきます。
面談で聞くタイミングとしては、入社3年目以降の運用を聞くほうが、実際に近い答えが得られやすくなります。入社直後の担当者よりも、その部署に長くいる担当者に聞くほうが、判断材料の精度が上がります。
6. 面談で確認しておきたい4つの視点を整理します。
ここまでの3つの軸を、面談で聞く形に整理します。制度の説明だけでなく、実例を聞くことが要点です。
面談で確認したい4つの視点
- 部署の数と近さ:似た仕事をする部署が近くに複数あるかを確認します。
- 育成の方針:幅を持たせる方針か、深さを求める方針かを確認します。
- 直近の実例:「この3年で、このチームから他の部署へ移った人は何人いましたか」と聞き、制度ではなく実際に起きたことを確認します。
- 希望を出す仕組み:希望を出せる制度があるかどうかを確認します。動く場合も動かない場合も、本人の意思が関わる部分です。
厚生労働省の調査では、50〜54歳の一般労働者の賃金は月388.8千円です*3。ここに至るまでの積み方は、幅を広げてきたか、同じ領域を深めてきたかによって変わります。この数字自体は、部署が変わったかどうかを示すものではありません。
4つの視点は、どれも単独では判断材料として不十分です。部署の数、育成の方針、直近の実例、希望を出す仕組みをあわせて確認することで、入社後の見立てのずれを防げます。
面談で聞いた内容は、複数の求人を比較する際にもメモしておくと、後から条件を思い出しやすくなります。特に実例の人数と時期は、記憶だけに頼ると条件が混ざりやすい部分です。
求人ごとに面談の担当者が異なる場合、同じ質問でも答え方の粒度が変わることがあります。数字で答えが返ってきた場合と、雰囲気だけで答えが返ってきた場合とで、材料としての確かさが違うことも覚えておくとよいでしょう。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 求人票に「異動の可能性あり」と書かれていたら、必ず部署が変わるのか。
A. 必ず変わるとは限りません。この一文からは、起こりうるという可能性しか読み取れません。実際の頻度は、部署の数、育成の方針、直近の実例を確認して判断します。
Q2. 面談では何を聞けばよいか。
A. 「この3年で、このチームから他の部署へ移った人は何人いましたか」と聞くと、制度ではなく実際に起きたことを確認できます。
Q3. 希望を出す仕組みがある場合、必ず希望どおりになるか。
A. 希望どおりになるとは限りません。希望を出す仕組みがある職場では、動く場合も動かない場合も、本人の意思に加えて職場側の状況が関わります。
Q4. 勤務地が変わる転勤と、部署が変わる異動は同じ扱いか。
A. 別の話として扱います。転勤は勤務地が変わることを指し、ここで扱う異動は勤務地を変えずに部署が変わることを指します。
Q5. リモートワーク対応の求人でも、部署が変わることはあるか。
A. あります。勤務場所が変わらないことと、担当する仕事の範囲が変わらないことは別の話です。リモートワーク対応の求人でも、部署をまたぐ配置の実例があるかどうかを面談で確認できます。
Q6. 部署の配置に関する実例は、誰に確認するのが適切か。
A. 配属先の候補となる部署の担当者や、採用担当者への確認が適切です。人事だけでなく、現場の管理者にも聞くと、制度の説明ではなく実際の運用に近い回答が得られやすくなります。
8. まとめ:異動は求人票の外側で確かめられます。
この記事の要点
- 厚生労働省の調査では、転職による入職率は9.7%です*1。会社を変える動きの規模はここから分かりますが、社内の部署の動きは求人票の一文だけでは分かりません。
- テレワークを行う正社員は22.5%です*2。働く場所の柔らかさと、担う仕事の範囲が変わるかどうかは別の軸です。
- 50〜54歳の一般労働者の賃金は月388.8千円です*3。ここに至る積み方は、幅を広げてきたか、深さを求めてきたかで変わります。
- 分かれ目は、部署の数と近さ、育成の方針、直近の実例の3つです。面談では、「この3年で、このチームから他の部署へ移った人は何人いましたか」と聞き、実際に起きたことを確認します。
求人票の「異動の可能性あり」という一文は、出発点にすぎません。3つの軸を面談で確かめたうえで、入社後の見立てを組み立てていきましょう。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(2025年公表)
*2 パーソル総合研究所「第十回 テレワークに関する調査」(2025年公表)
*3 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
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