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有給休暇の買い取りは退職時ならできる?残った日数と会社の決まり

有給休暇の買い取りは退職時ならできる?残った日数と会社の決まりのイメージ写真

退職が近づいて、年次有給休暇が使い切れずに残りそうなとき、会社に買い取ってもらえないかと考える人がいます。引き継ぎで休めそうにない、早く次の会社に入りたいといった事情があるときです。

有給休暇の買い取りは、法律で決まった制度ではありません。使う前に会社が年休をお金で引き取って休ませない扱いは、法違反とされています*1。退職時に残った日数をお金で精算する扱いには公的な決まりがなく、会社に頼んでも応じてもらえるとは限りません。残りの日数は休暇として使い切るのがいちばん手堅く、退職前にまとめて請求された年休を会社は断れないとされています*2。

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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事のポイント

  • 前もって年次有給休暇を買い上げて休暇を与えないことは、法違反とされています*1。
  • 退職時に残った日数を買い取る扱いを定めた公的な決まりは見当たりません。買い取るかどうかは会社の判断になります。
  • 退職前に残りの年休をまとめて請求された場合、会社は時季変更権を使えず、取得を認めるしかないとされています*2。

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1. 有給休暇の買い取りは法律で決まった制度ではない

有給休暇の買い取りを会社に求める権利は、法律には定められていません。退職時の買い取りに応じるかどうかは会社しだいで、確かなのは退職日までに休暇として使うことです*2。

年次有給休暇(年休)は、毎年一定の日数を、賃金を払ったまま休ませることで、働く人が休養をとり心身の疲れを回復できるようにする制度です*2。休むこと自体が目的なので、休む代わりにお金で済ませる形は、制度の考え方とは合いません。

厚生労働省のモデル就業規則の解説では、事前に年休を買い上げて労働者に休暇を与えないことは法違反になるとされています*1。まだ使っていない年休を会社が先にお金で引き取り、その分を休ませないといった扱いがこれに当たります。

退職のときに使い切れずに残った日数を、会社がお金で精算する扱いについては、それを認めるとも禁じるとも書いた現行の公的な資料は見当たりません。就業規則に定めがあればそれに従い、定めがなければ会社と話し合うことになります。買い取ってもらえる前提で退職の日程を組むのは避けたほうが安全です。

転職先の入社日が先に決まっていて、休暇を使い切る日数がとれないときは、入社日を後ろにずらせないかを転職先に相談する方法もあります。休暇が残っていることを伝え、何日あれば使い切れるかを数字で示せば、日程の相談に乗ってもらいやすくなります。

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2. 年次有給休暇の付与日数と時効

買い取りを考える前に、自分に何日残っているかを数えます。通常の労働者に与えられる年休の日数は、勤続の年数で決まっています*2。

通常の労働者の年次有給休暇の付与日数(全労働日の8割以上出勤した場合)

継続勤務の期間付与される日数
6か月10日*2
1年6か月11日*2
2年6か月12日*2
3年6か月14日*2
4年6か月16日*2
5年6か月18日*2
6年6か月以上20日(上限)*2

雇入れの日から6か月続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤すると、10日の年休が与えられます*2。その後は、2年6か月までは1年ごとに1日、3年6か月以後は1年ごとに2日が加わり、20日が上限です*2。週の所定労働日数が少ない人には、これより少ない日数が比例して与えられます*2。

年休の請求権には、2年の消滅時効があります*1*2。与えられた日から2年は使えるので、前の年に使い切れなかった分は翌年に繰り越されます*1。就業規則で繰り越しを認めないと定めていても、年度が変わっただけで権利は消えません*2。退職のときには、今年の分と前年からの繰り越しを合わせた日数が手元にあることになります。

会社には、年10日以上の年休が与えられる人に、与えた日から1年以内に5日以上を取らせる義務もあります*2。本人が自分で5日取っていれば、会社が時季を指定する必要はなくなります*2。この義務は、残った年休を退職前に使い切ることとは別の決まりです。

たとえば勤続5年6か月の人なら、直近に18日が与えられ、その前の年の16日のうち使わなかった分も残っています。思っていたより多くの日数が残っていることもあるので、退職を決めたら最初に日数を出してもらいます。

3. 残った有給休暇を退職日までに使い切る段取り

買い取りに頼らずに残りの日数を生かすには、退職日までに使い切るのが手堅い方法です。次の順で進めます。

残りの日数を数えて退職日から逆に最終出社日を決める 日数を数える 繰り越し分も含める 退職日を置く 次の入社日の前日まで 出社日を決める 勤務日をさかのぼる まとめて請求 書面で日付を出す 退職前にまとめて請求された年休は会社が断れない*2

まず、給与明細や勤怠のシステムの数字だけに頼らず、人事担当者に残りの日数を書面で出してもらいます。次に退職日を決め、その日から勤務日を残りの日数だけさかのぼった日を休暇の初日にします。その前の勤務日が最終出社日です。

退職の間際に、残りの年休をすべて使い切ってから辞めたいと申し出る人もいます*2。この場合、退職で年休の権利が消えるため、会社は時季変更権を使えず、取得を認めるしかないとされています*2。時季変更権とは、請求された日に休まれると事業の正常な運営を妨げる場合に、会社がほかの日に変えてもらう権利のことです*1。

請求は、退職届と一緒に、休暇を使う日付を書いた書面で出しておくと、あとで食い違いが起きません。引き継ぎの日程は、最終出社日までに終わるよう先に組んでおきます。

リモートワークで働いている人は、最終出社日がそのまま最後のオンライン勤務の日になることが多いでしょう。休暇の期間に入る前に、貸与されたパソコンの返却方法と、業務用アカウントが止まる日を聞いておくと、休暇中に会社とのやり取りが残りません。

あわせて読みたい | 最終出社日と退職日の違いは?有給消化と社会保険の資格喪失日

4. 会社から退職日を遅らせてほしいと言われたとき

引き継ぎが終わらないことを理由に、会社から退職日を遅らせてほしいと打診されることもあります*2。この打診に応じるかどうかは、労働者に委ねられているとされています*2。

退職日を遅らせれば、そのぶん休暇を使える日が増え、残りの日数を使い切りやすくなります。一方で、次の会社の入社日が決まっていると、遅らせた分だけ在籍が重なる心配が出てきます。打診を受けたら、次の会社の入社日と残りの日数を並べて判断してください。

どうしても退職日までに使い切れない日数が出るときに、会社のほうから買い取りを提案されることもあります。その場合は、何日分を、いくらで、いつ払うのかを書面で出してもらい、給与明細でどう扱われるかも聞いておきます。

反対に、引き継ぎを早く終わらせて最終出社日を前に動かせれば、退職日はそのままで、休暇として使える日数を増やせます。引き継ぎの資料を早めにまとめ、後任に渡す日を会社と決めておくと、最終出社日を前に動かす相談がしやすくなります。

5. 就業規則で上乗せの休暇があるとき

会社によっては、法律で決まった日数より多い有給休暇や、夏季休暇・リフレッシュ休暇のような独自の休暇を設けていることがあります。こうした休暇の扱いは、会社の就業規則で決まります。

退職のときに独自の休暇をどう扱うかも、就業規則や会社の約束によります。就業規則の休暇の章を読み、退職時の扱いが書かれていれば、その内容どおりかを人事担当者に聞いてみてください。書かれていなければ、法律で決まった年休と同じように、退職日までに使えるかを相談します。

年休を取った日に払われる賃金も、就業規則で決まります。平均賃金、所定労働時間働いた場合の通常の賃金、標準報酬日額のどれで払うかを、就業規則などであらかじめ定めておくことになっています*2。

就業規則は、働く人がいつでも見られるようにしておくことが会社に求められています。社内のイントラネットや共有フォルダにないときは、人事担当者に見せてもらうよう頼みます。退職を申し出る前に読んでおくと、話し合いで迷いません。

6. 有給休暇の請求を断られたときの相談先

退職前に残りの年休をまとめて請求したのに、会社に認められないこともあります。退職の間際の請求は会社が時季変更権を使えないとされているので*2、断られたときは、いつ、誰に、何日分を請求したかの記録を残しておきます。

断られた理由が「人手が回らない」「繁忙期だから」といったものでも、退職日を超えて休暇の日を変えることはできません。退職日を過ぎれば休暇の権利そのものが消えるためで*2、会社にはこの点を落ち着いて伝えます。

社内で話がまとまらないときは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。休暇を請求した書面や、会社から断られたメールを持っていけば、状況をそのまま伝えられます。

相談の前に、就業規則の年休の章も読んでおきます。請求の手続きや期限が書かれていれば、それに沿って請求していたかどうかで、話の進め方が変わることがあります。

7. よくある質問

Q1. 退職時に残った有給休暇は買い取ってもらえますか?

A. 会社に買い取りを求める権利は法律にないので、応じてもらえないこともあります。残りは休暇として使い切る計画を立てるのが先です*2。

Q2. 有給休暇の買い取りは法律で禁じられていますか?

A. 使う前に会社がお金で引き取って休ませない扱いは、法違反とされています*1。辞めるときの精算の可否は、今の公的な資料でははっきりしません。

Q3. 退職前に年休をまとめて使えますか?

A. 使えます。退職の間際の請求には会社は時季変更権を使えず、取得を認めるしかないとされています*2。退職届と一緒に、休む日付を書いた書面で請求しておきます。

Q4. 有給休暇はいつまで繰り越せますか?

A. 請求権は2年で時効になるので、与えられた日から2年の間は使えます*1*2。

Q5. 退職日を遅らせてほしいと言われたら応じないといけませんか?

A. 応じるかどうかは労働者に委ねられています*2。次の入社日と残りの日数を見て判断します。

Q6. 休暇を使っている間の給料はどう計算されますか?

A. 就業規則で選んだ方法で計算されます。支払う額の基準は3つのうちから会社が選び、あらかじめ定めておくことになっています*2。

Q7. 有給休暇の残りの日数はどこで分かりますか?

A. 給与明細や勤怠のシステムに載っていることがあります。分からないときは人事担当者に聞き、繰り越し分も含めて何日あるかを紙かメールで残してもらいましょう。

8. まとめ:有給休暇は買い取りを頼むより退職日までに使い切る

この記事のまとめ

  • 有給休暇の買い取りは法律で決まった制度ではない
  • 前もって年休を買い上げて休暇を与えないことは法違反*1
  • 退職時に残った分の精算を定めた公的な決まりは見当たらない
  • 退職前のまとめての請求は、会社が時季変更権を使えない*2
  • 請求権の時効は2年。繰り越し分も含めて数える*1*2

退職を決めたら、まず前年からの繰り越しも含めた日数を人事担当者に書面で出してもらい、退職日から勤務日をさかのぼって休暇の初日を決めてください。

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出典・参考情報

*1 モデル就業規則 令和7年12月版(厚生労働省労働基準局監督課)
*2 年次有給休暇(確かめよう労働条件・厚生労働省)

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