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IR資料の読み方|開発投資から求人が続く会社を見る

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

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エンジニアが転職先を選ぶとき、開発の仕事がこの先も続くかどうかは、面談で聞くだけでは判断しにくい情報です。応募先が上場している企業であれば、決算説明資料や有価証券報告書、中期経営計画といった公開資料に、開発にどれだけ資金を配っているかが書かれています。見るべきは売上や利益ではなく、もっと具体的な数字です。

転職等希望者数は1,023万人で、前年から23万人増えました*1。応募先を選ぶ基準を自分で持たないまま数を追うと、入社後に開発の仕事が縮んでいたと気づくことになります。IR資料を読む習慣は、その基準のひとつになります。

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数字で見る、転職と開発投資の環境 この記事の要約 転職等希望者数 *1 1,023万人 前年から23万人増加 労働力調査(2025年平均) 希望者は増えている 情報処理・通信技術者の新規求人 倍率 *2 3.92倍 応募者1人に求人が複数 一般職業紹介状況(2025年12月) 選べる立場にある 50〜54歳の賃金(一般労働者) *3 388.8千円 月額 賃金構造基本統計調査(2025年) キャリアは長く続く 数字が示すのは環境そのもの。会社ごとの投資配分は、公開されている資料で確認します *数値の出典は記事末尾「出典・参考情報」参照

この記事のポイント

  • 情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍です*2。求人の数が応募者より多い状態が続いているため、応募先を1社に絞らず、比較する基準を持つ余裕があります。
  • 一般労働者の賃金は50〜54歳で月388.8千円です*3。キャリアは10年単位で続くため、いまの開発投資だけでなく、数年先も投資が続く会社かどうかを見ておく必要があります。
  • 開発にどれだけ配っているかは、決算説明資料や有価証券報告書、中期経営計画といったIR資料に書かれています。売上や利益ではなく、研究開発費・従業員数・中期経営計画の3か所を確認します。

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1. IR資料に書かれた開発投資が、エンジニアの判断材料になります。

研究開発費が売上に対してどれくらいか、そして伸びているかを、公開されている資料で確認できます。決算説明資料・有価証券報告書・中期経営計画といった、上場企業が開示する資料を、まとめてIR資料と呼びます。転職等希望者数は1,023万人で、前年から23万人増えました*1。応募先を選ぶための基準を自分で持たないまま応募数を増やすと、入社後に開発予算が縮んでいる会社に当たる可能性が残ります。IR資料を読む習慣は、その基準になります。

エンジニアが確認すべき数字は、売上や利益ではありません。研究開発費、またはシステム投資額が売上に対してどれくらいの比率か、そして前年より伸びているかどうかです。比率が一定でも、売上そのものが伸びていれば投資額は増えます。比率と金額の両方を、複数年分並べて確認します。

従業員数の推移も、研究開発費と合わせて見る対象です。投資額だけが伸びていて従業員数が増えていない場合、開発の一部を外部に出している可能性があります。中期経営計画に書かれた「作る」の主語が、自社なのかパートナー企業なのかを確認すると、投資額の伸びが何を意味しているかがはっきりします。

研究開発費が伸び、従業員数も増え、中期経営計画で自社が作ると書かれていれば、3つが噛み合っています。この状態であれば、募集は続きやすいと読めます。噛み合っていないときは、面談で「その投資は誰が手を動かすのか」を確かめる質問を用意しておきます。

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2. 投資が伸びる会社と、投資だけが目立つ会社を比べます。

投資が伸びている会社は、大きく2つの型に分かれます。どちらも研究開発費の伸びという同じ数字から始まりますが、意味は変わります。

研究開発費と従業員数、伸び方の比較 投資と人がどちらも増えている場合 研究開発費が前年より伸びています 従業員数も合わせて増えています 中期経営計画に、自社で作ると書かれています 投資だけが目立って増えている場合 研究開発費だけが前年より伸びています 従業員数はほとんど変わっていません 中期経営計画に、パートナー企業と進めると書かれています 研究開発費が伸びているかだけでなく、人が増えているかを合わせて見ます

研究開発費が伸び、従業員数も増えている会社では、増えた予算の分だけ人を採っていると読めます。中期経営計画に「自社で作る」と書かれていれば、開発の仕事は社内に残り続けます。IR資料でこの組み合わせを確認できれば、募集の背景に無理がないと判断できます。

一方、研究開発費だけが伸びて従業員数が変わらない会社では、増えた予算が外部への発注に回っている可能性があります。中期経営計画で「パートナー企業と進める」と書かれていれば、社内で採用されたエンジニアの仕事は、実装そのものより調整や管理に近づく場合があります。

どちらが良い・悪いという話ではありません。実装を担いたいのか、外部と連携する立場を担いたいのかによって、選ぶべき会社は変わります。IR資料を読む目的は、入社後の仕事の中身を、応募する前に見積もることにあります。

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3. 非上場の会社では、採用ページと技術発表を見ます。

IR資料を確認できるのは、上場している企業に限られます。非上場の会社を検討するときは、代わりに採用ページの職種の増え方を見ます。開発職の募集の種類が、半年前と比べて広がっているかを確認します。

職種が広がっている場合、事業の拡大に合わせて開発体制を整えている途中にあると読めます。逆に、同じ職種の募集が長期間出たままになっている場合は、採用がうまく進んでいないか、入れ替わりが多いことが考えられます。募集開始日や更新日を確認すると、状況がつかみやすくなります。

技術ブログや発表資料といった、公開されている技術の情報も確認の対象になります。使っている技術や取り組んでいる内容が具体的に書かれているほど、開発の仕事が実際に動いていると判断できます。逆に更新が長く止まっている場合は、情報を公開する体制自体が整っていない可能性があります。

上場している会社のIR資料と、非上場の会社の採用ページ・技術発表は、見る対象が違うだけで、確認していることは同じです。開発の仕事が、この先も続くかどうかという1点です。

採用ページと技術発表は、どちらか一方だけでは判断材料が薄くなります。募集している職種が広がっていても、技術発表が数年前で止まっている会社では、公開する体制そのものが後退している可能性があります。両方を合わせて確認すると、募集の勢いが一時的なものか、続いているものかが見えてきます。

4. IR資料の3か所を、表で整理します。

エンジニアが公開資料で確認する3か所を、見る数字とその意味に分けて整理します。決算説明資料・有価証券報告書・中期経営計画のいずれにも、該当する記載があります。

【表1】投資を確認する3か所

確認する場所見る数字・記載何が分かるか
研究開発費(またはシステム投資額)売上に対する比率と、前年からの伸び開発にどれだけ資金を配っているか
従業員数の推移研究開発費の伸びと合わせた増減人を増やしているか、外部に出しているか
中期経営計画の記載「作る」の主語が自社かパートナーか実装を誰が担う計画か

表に整理した3か所は、それぞれ単独では判断材料になりません。研究開発費が伸びていても従業員数が変わらなければ外部への発注が増えている可能性がありますし、従業員数が増えていても研究開発費の比率が下がっていれば、1人あたりの投資は薄くなっています。

決算説明資料は経営陣の説明が加わっている分読みやすく、有価証券報告書は数字がそのまま並んでいる分、比率の計算に向いています。中期経営計画は、数字ではなく「作る」の主語という記載を確認する対象です。

5. 資料を探し、3か所を読み、面談で確かめます。

投資を確認する3つの手順 1 公開資料を探す 上場企業なら決算説明資料・有価証券報告書・中期経営計画を、企業のサイトかEDINETから見つけます 2 3か所を読む 研究開発費の比率と伸び、従業員数の推移、中期経営計画の「作る」の主語を確認します 3 面談で確かめる 数字が噛み合っていない場合は、その投資を誰が手を動かすのかを質問します 3つの手順を、応募前に一度たどっておきます

3つの手順は、応募する前に1度たどっておくものです。公開資料を探す、3か所を読む、面談で確かめるという順番を守ると、判断の材料が揃った状態で応募できます。

非上場の会社では、公開資料の代わりに採用ページと技術発表を確認します。手順そのものは変わりません。読む対象が違うだけです。

公開資料を読み終えた段階で結論を出す必要はありません。数字が噛み合っているように見えても、面談で直接確かめる手順を省かないことが、入社後の食い違いを減らします。3つの手順を1度たどっておけば、次に別の会社を検討するときも同じ順番で確認できます。

6. 応募前に確認する4点をチェックリストにします。

非上場の会社を含め、応募前に確認しておきたい4点を整理します。

応募前に確認する4点

  • 研究開発費の比率と伸び:売上に対する比率が、前年より伸びているかを確認します。
  • 従業員数の推移:研究開発費の伸びに対して、人数が増えているかを確認します。
  • 中期経営計画の主語:「作る」が自社なのか、パートナー企業なのかを確認します。
  • 非上場の場合の代替:採用ページの職種の増え方と、公開されている技術発表を確認します。

4点はどれも、単独では結論になりません。研究開発費が伸びていても、従業員数と中期経営計画の記載を合わせて見なければ、外部への発注が増えているだけという可能性を見落とします。

情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍です*2。求人の数に余裕がある状況だからこそ、4点を確認する時間を確保してから応募先を決める選び方が現実的になります。

IR資料を確認したうえで応募しても、面談での質問を省くことはできません。数字の意味を確認する最後の手順として、面談を組み込んでおきます。

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7. よくある質問(Q&A)

Q1. 非上場の会社では、開発投資の状況を確認する方法がないか。

A. IR資料は上場企業に限られますが、非上場の会社でも採用ページの職種の増え方や、公開されている技術発表から、開発体制の広がりを確認できます。

Q2. 研究開発費が伸びていれば、募集は必ず続くか。

A. 研究開発費の伸びだけでは判断できません。従業員数が伸びていない場合や、中期経営計画で「パートナー企業と進める」と書かれている場合は、投資の一部が外部への発注に回っている可能性があります。

Q3. IR資料はどこで確認できるか。

A. 決算説明資料や有価証券報告書は、企業の公式サイトのIR情報のページや、金融庁のEDINETで確認できます。中期経営計画も同じページに掲載されている場合があります。

Q4. 面談で投資について質問すると、印象が悪くならないか。

A. 数字を根拠にした質問であれば、印象を悪くする心配は不要です。「研究開発費の伸びに対して、開発の人数はどう変化していますか」のように、公開されている数字を起点にした聞き方であれば、準備をしてきたことが伝わります。

Q5. 研究開発費とシステム投資額は、同じ数字として見てよいか。

A. 開示している項目が企業によって異なるため、決算説明資料でどちらの名称を使っているかを先に確認します。名称が違っても、売上に対する比率と前年からの伸びを見る点は同じです。

8. まとめ:開発投資が続くかどうかは、公開資料に書かれています。

この記事の要点

  • 研究開発費(またはシステム投資額)が売上に対してどれくらいか、そして伸びているかを、公開資料で確認します。
  • 従業員数の推移を合わせて見ます。人が増えていないのに投資額だけ伸びていれば、外部への発注が増えている可能性があります。
  • 中期経営計画に書かれた「作る」の主語が、自社かパートナー企業かを確認します。3つが噛み合っていれば、募集は続きやすいと読めます。
  • 非上場の会社では、採用ページの職種の増え方と、公開されている技術発表を代わりに確認します。

開発の仕事がこの先も続くかどうかは、面談だけでは見えにくい情報です。IR資料に書かれた数字を読んでから応募先を選ぶことで、入社後に感じる食い違いを減らせます。転職等希望者数は1,023万人にのぼります*1。数のなかで応募先を選ぶときこそ、公開されている資料を読む手順を省かないことが、判断の質を分けます。

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出典・参考情報

*1 総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年(令和7年)平均結果」(2026年公表)
*2 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年12月分)について」(2026年公表)
*3 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)

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