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エンジニアの子育て両立、鍵は時短ではありません

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

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子育てをしながらエンジニアとして働き続けたい。両立を考えるとき、時短勤務や休みやすさにばかり目が向きがちです。しかし、見直すべきなのは本当にそこだけでしょうか。

この記事で軸に置くのは通勤時間そのものをなくすという発想です。時短ではなく、時間そのものの使い方をどう変えるかを、順を追って確認していきます。

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数字で見る「子育てとエンジニアの両立」 この記事の要約 情報通信業のテレワーク実施率 *2 56.3% 全業種で最高水準 正社員全体は22.5% 通勤前提ではない働き方を選びやす 雇用型就業者のテレワーク実施率 *3 15.6% 全国計 国土交通省・令和6年度調査 業種による差が大きい 賃金(月額・全年齢計)*1 340.6 単位:千円(2025年) 女性は305.7がピーク(45〜49・ 55〜59歳) 水準を保ったまま両立を選べるか 時短ではなく、通勤時間をなくすことが両立の起点になります *数値の出典は記事末尾「出典・参考情報」参照

この記事のポイント

  • 情報通信業のテレワーク実施率は56.3%で全業種のなかで最も高い水準です。通勤を前提としない働き方は職種として選びやすい状況にあります*2
  • 雇用型就業者のテレワーク実施率は全国で15.6%です。業種による差は大きく、勤務先の業種が働き方の選択肢を左右します*3
  • 一般労働者の賃金(月額・全年齢計)は340.6千円。女性は45〜49歳と55〜59歳の305.7千円が最も高い水準です*1

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1. 子育てとエンジニアの両立、鍵は「通勤時間をなくす」という発想です

子育てとエンジニアの両立を考えるうえで効くのは、時短勤務よりも通勤時間そのものをなくすという発想です。パーソル総合研究所の調査では、情報通信業のテレワーク実施率は56.3%で全業種のなかでもっとも高い水準にあります*2。通勤という固定の時間を減らせるかどうかが、両立の設計を左右します。

子育てとの両立というと、時短勤務や休みやすさに関心が向きがちです。しかし時短勤務は、勤務時間を削る分だけ賃金や評価に影響が及ぶ場合があります。

一方で通勤時間をなくすという発想は、勤務時間そのものを削らずに、1日のなかで使える時間を増やす方法です。ITエンジニアは、この発想が選びやすい職種のひとつです*2。

「両立=勤務条件を軽くすること」という思い込みを外すことが、この記事の出発点です。条件を軽くせずに時間を作る方法があるなら、まずそちらを検討する価値があります。両立を「我慢して続けるもの」にしないためにも、条件そのものを見直す視点を持っておきましょう。

両立の相談では「休みを取りやすいか」がまず話題にのぼりますが、休みの取りやすさと、日々の時間の使い方は別の問題です。通勤時間という固定費のような時間をなくせるかどうかを、休みやすさと並べて検討する価値があります。

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2. 通勤時間が消えると、1日の使い方の何が変わるか

通勤にかかっていた時間は、往復のどちらも「移動のためだけの時間」です。この時間がなくなれば、その分を子どもの送り迎えや朝の準備、体調が悪いときの対応にあてることができます。往復の移動時間は、積み重なると1日のなかで決して小さくない割合を占めています。

重要なのは、これは勤務時間を減らして生まれる時間ではないという点です。時短勤務であれば勤務時間そのものが減り、評価や賃金に影響が及ぶ可能性があります。通勤をなくす発想は、勤務時間を保ったまま、1日に使える時間の総量を増やす方法です。同じ8時間勤務でも、通勤の有無によって1日の可処分時間には差が生まれます。

「両立のために働き方を軽くする」という前提を外し、「両立のために不要な時間を削る」という前提に置き換えることで、選ぶべき求人の条件も変わってきます。

この発想の転換は、勤務時間を交渉する必要がないという点でも扱いやすいものです。勤務時間そのものは変えず、移動という不要な時間だけを削るため、評価の基準を変えずに両立を組み立てられます。

通勤をなくすことは、子どもと過ごす時間を直接増やすだけでなく、体力や気力の余力を残すことにもつながります。移動そのものが負担になっていた場合、その負担がなくなること自体が、日々の両立を続けやすくします。余力を残せるかどうかは、両立を長く続けられるかどうかにも関わってきます。

3. 子どもの急な体調不良、働き方によって対応が変わります

子育て中に起こりやすいのが、保育園や学校からの急な連絡です。働き方によって、対応できるまでの早さが変わります。

急な呼び出しがあったときの対応の違い 出社を前提とした勤務 勤務先までの移動時間の分だけ対応が遅れる 早退の許可を先に得る必要がある 対応中は業務から完全に離れる リモート主体の勤務 移動を挟まずその場から対応できる 対応しながら業務を続けやすい 呼び出しの連絡にすぐ動ける 通勤の有無が、対応できるまでの早さを左右します

出社を前提とした勤務では、連絡を受けてから実際に動けるまでに、勤務先までの移動という物理的な制約が挟まります。

リモート主体の勤務であれば、この移動の制約がなくなる分、連絡を受けてから対応を始めるまでの時間を短くできます。制度としての休みやすさとは別に、通勤の有無そのものが対応の早さに関わってきます。

どちらの働き方にも良い面はありますが、急な対応が必要になる場面を具体的に想像したとき、通勤の有無がそのまま対応できるまでの時間差になるという点は、選ぶ前に確認しておく価値があります。

面接の場でこうした場面を想定しているかどうかを質問できると、求人票だけではわからない働き方の実態を確認する材料になります。実際に子育て中の社員がどのように働いているかを尋ねてみるのも、判断材料のひとつになります。答えにくそうにされた場合は、制度はあっても運用が伴っていない可能性も考えられます。

面接で質問しづらいと感じる場合は、まず求人票に書かれた条件を読み込み、疑問点を整理してから臨むと聞きやすくなります。制度の有無だけでなく、実際の運用がどうなっているかまで確認できると、入社後のずれを防ぎやすくなります。気になる点は遠慮せず、選考の早い段階で確認しておきましょう。

4. 賃金水準を確認したうえで両立の条件を考える

両立を考えるときに見落とされがちなのが、賃金水準の確認です。厚生労働省の調査から、全年齢計と女性のピーク時を並べます。両立の条件を考える前に、まず自分の年代の水準がどのあたりにあるかを押さえておきましょう。

【表1】一般労働者の賃金(月額・2025年)

区分賃金(月額)
全年齢計340.6千円
女性・45〜49歳/55〜59歳(ピーク)305.7千円

厚生労働省の統計では、一般労働者の賃金(月額・全年齢計)は340.6千円、女性のピーク時(45〜49歳/55〜59歳)は305.7千円です*1。これは年齢・性別ごとの平均であり、時短勤務をとった場合の賃金を示す数字ではありません。

ただし、勤務時間そのものを減らす選択と、通勤時間だけを減らす選択とでは、賃金や評価への影響の出方が異なります。通勤をなくす発想は勤務時間を保ったまま時間を生み出すため、時短勤務を選ぶ前に比較して検討する価値があります。

応募先を比較する際は、提示される賃金の額面だけでなく、勤務時間の条件もあわせて確認してください。数字を先に押さえておけば、条件を確認する場でも根拠を持って話せます。

この2つの数字は、両立の条件を考えるうえでの前提として押さえておくものであり、どちらの働き方を選ぶべきかを直接示すものではありません。数字と、自分が優先したい時間の使い方を、あわせて考えてみてください。応募先を決める前に、条件を並べて比べる材料として使うのがこの表の役割です。

5. 求人票と面接で確かめておきたい4点

出社頻度から評価基準まで、確かめる4手順 1 出社頻度を求人票で確認する 「リモート可」だけでなく、頻度が明記されているか見ます 2 評価の基準を求人票で確認する 成果ベースか勤務時間ベースかを、先に確認します 3 コアタイムと中抜けを面接で確認する 送り迎えの時間に業務が固定されないかを尋ねます 4 実際に働いている社員を面接で確認する 子育てをしながら働く社員が、実際にいるか尋ねます 求人票で分かることと、面接で確かめることを分けて進めます

求人票に「リモート可」と書かれていても、出社頻度や評価の基準までは読み取れません。制度があることと、実際に使われていることは別の話です。

子育てをしながら働いている社員が実際にいるかどうかは、求人票だけでは判断できないため、面接の場で確かめておく価値があります。評価の基準についても、成果か勤務時間かを事前に確認しておくと、入社後の働き方のずれを防げます。

出社頻度やコアタイムの扱いは、面接で質問しなければ求人票だけではわからない場合がほとんどです。気になる点はあらかじめ質問リストにしておくと、面接の場での聞き逃しを防げます。4点をすべて一度に聞く必要はなく、優先順位の高いものから確認していけば十分です。

求人票で確認できることを先に済ませておくと、面接の限られた時間を、運用の実態や実際に働く社員の様子を尋ねることに使えます。出社頻度と評価の基準は応募前に、コアタイムと実際に働く社員の有無は面接で、というように確認する場面を分けておくと、聞き漏らしを防ぎながら効率よく進められます。

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6. よくある質問(Q&A)

Q1. 時短勤務とリモートワーク、どちらを優先すべきですか?

A. 一律の答えはありません。時短勤務は勤務時間そのものを減らすため賃金や評価に影響が及ぶ場合があります。リモートワークは勤務時間を保ったまま通勤時間を減らせるため、まずこちらを検討する価値があります。

Q2. 子育て中でも、リモートワーク対応の正社員求人に応募できますか?

A. 応募できます。「全国どこからでも勤務可」と明記された求人であれば、居住地や家庭の状況は選考の直接の障害にはなりません。

Q3. 通勤がなくなると、本当に子育ての時間は増えますか?

A. 通勤にかかっていた時間がそのまま可処分時間になります。ただし、その時間を業務の延長に使わないよう、あらかじめ使い道を決めておくことが必要です。

Q4. 情報通信業以外の業種でも、テレワークは選びやすいですか?

A. 業種によって差があります。パーソル総合研究所の調査では情報通信業が56.3%と突出しており、業種選びも両立の条件に関わってきます*2。

Q5. 面接で子育てとの両立について聞かれたら、どう答えればよいですか?

A. 制度の有無を尋ねるより、通勤時間の有無や勤務の柔軟性など、日々の時間の使い方に直結する条件を具体的に確認することをおすすめします。

Q6. リモートワーク中心の働き方だと、評価で不利になりませんか?

A. 出社の有無ではなく成果や進め方で評価する求人であれば、不利にはなりません。「全国どこからでも勤務可」といった条件とあわせて、評価の基準を選考段階で確認しておくと安心です。

Q7. 子どもが小さいうちだけリモートワークを選び、将来は出社に戻すこともできますか?

A. 求人によって条件は異なります。将来的な働き方の希望がある場合は、応募段階で出社頻度の見直しが可能かどうかをあわせて確認しておくとよいでしょう。

7. まとめ:両立の起点は通勤時間をなくすこと

この記事の要点

  • 情報通信業のテレワーク実施率は56.3%で全業種のなかで最も高い水準です*2
  • 雇用型就業者のテレワーク実施率は全国で15.6%。業種による差が大きい状況です*3
  • 一般労働者の賃金(月額)は全年齢計340.6千円。女性は305.7千円(45〜49・55〜59歳)がピークです*1
  • 時短勤務は勤務時間そのものを減らしますが、通勤をなくす発想は勤務時間を保ったまま時間を生み出します
  • 子どもの急な体調不良への対応も、通勤の有無によって早さが変わります

子育てとの両立は、勤務時間を軽くすることだけが答えではありません。通勤時間をなくすという発想を先に検討することで、賃金水準を保ったまま、時間の使い方を変えられます。制度を探す前に、まず時間の使い方そのものを見直してみてください。両立は、勤務条件を削ることではなく、不要な時間を削ることから始められます。

通勤時間をなくした分の時間を、暮らしの設計に組み込む

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出典・参考情報

*1 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
*2 パーソル総合研究所「第十回・テレワークに関する調査」(2025年7月実施)
*3 国土交通省「令和6年度テレワーク人口実態調査」(令和7年3月公表)
*4 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026 広がるAI導入、DXは変われるか」(2026年7月公表)

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